NASを購入したはいいけど、「箱を開けてどうすればいい?」と戸惑っていませんか?NASの初期設定は思ったより簡単ですが、手順を間違えると後から修正が大変です。

結論から言うと、NASの初期設定は「HDD取り付け → LANケーブル接続 → DSMインストール → ユーザー・共有フォルダ作成」の4ステップで完了します。慣れれば作業そのものは1時間もかかりません(購入直後のHDD検査=拡張テストは数時間かかるので、届いた日の夜に仕掛けます)。

この記事では Synology 2ベイNAS(DS223j / DS225+など)を例に、初心者がつまずきやすいポイントを丁寧に解説します。

この記事でわかること

  • NASに必要なもの(HDDの選び方・本数)
  • HDDの取り付け方(機種別の2方式を解説)
  • DSMインストールと管理画面へのアクセス方法
  • ファイル共有・ユーザー設定の手順
  • 初期設定後にやるべきセキュリティ対応

主要NAS OSの違い:DSM・QTS・UGOS

NASのOSはメーカーごとに違い、使いやすさ・機能も異なります。代表的な3つは次のとおりです。

OS名 搭載メーカー 特徴
DSM (DiskStation Manager) Synology Web GUIが洗練されており初心者向け。Drive、Photos、Hyper Backupなど自社アプリが豊富
QTS / QuTS hero QNAP 機能が豊富、上位モデル向けにZFS版(QuTS hero)も用意。マニア向けの設定項目が多い
UGOS UGREEN 新興の独自OS。シンプルなUIでDXP2800などに搭載されている

初めての方には、Web GUIの完成度と日本語ヘルプの充実度から、SynologyのDSMが選ばれるケースが多くなっています。

用意するもの

HDDを1本にするか2本にするかは、次の4つの条件で決まります。

答えが変わる4つの条件

  1. 原本はNASだけか:NASにしか無いデータがあるなら、RAIDより先に「別の場所へのコピー」が要ります
  2. 故障した日にどれだけ困るか:復旧に数日かかっても困らないなら「1本運用+バックアップ」でも要件は満たせます(バックアップから戻せることが前提)。止めたくない・当日中に戻したいなら2ベイでRAID 1
  3. 別の媒体へコピーする頻度:週1回でも外付けHDDにコピーしていれば、失う可能性があるのは原則として最後のコピー以降=最長1週間分です(コピーが正常に終わり、復元できることが前提。つなぎっぱなしの外付けHDDはランサムウェアで道連れになるため、コピー後は取り外してください)
  4. そのうえで予算をどこに使うか:1本運用(本体+HDD 1本)→ RAID 1(HDD 2本)→ 上位機(本体を上げる)の順に高くなります。総額は「本体+HDD」と「バックアップ先込み」に分けて考えてください
必要なもの 備考
NAS本体 Synology DS223j(実売:約33,460円※2026年10月時点)など
3.5インチHDD(1〜2本) NAS向け推奨。Seagate IronWolf 4TB 約31,980円〜※2026年10月時点
LANケーブル(Cat5e以上) ルーターとNASをつなぐ。1m〜2mで十分
ルーター(Wi-Fiルーター可) NASはWi-Fiではなく有線接続が基本
PC or スマートフォン 初期設定に使用。同じWi-Fi(LAN)に接続済みであること

HDDについては NAS向けのCMR方式のモデル(WD Red Plus=WD40EFZZ・WD80EFPX など、Seagate IronWolf=ST4000VN006 など)を使いましょう。無印のWD RedはWD公式がSMR方式と記載しているため、RAIDには使いません(型番はCMR方式のHDD型番一覧)。WD公式はWD Blue・Green・Blackを「多ベイシャーシ」「24時間365日のRAID用途」には非推奨と明記しており、デスクトップ用HDDで24時間RAIDを組む使い方はメーカーの想定外に入ります。容量やベイ数で迷う場合はNAS用HDDのおすすめと選び方も参考にしてください。本体+HDDの総額と、バックアップ先(外付けHDD)込みの目安は家庭用NASおすすめランキングにまとめています。

価格はいずれも2026年10月時点の実売価格の目安です。最新価格は各販売ページでご確認ください。

実際にNAS向けとして選ばれているモデルはこちら。まず容量とベイ数だけ決めれば、あとは同じ型番で揃えるのが安全です。


ステップ1:開封してHDDを取り付ける

箱を開けたら、まず付属品が揃っているか確認します。一般的な同梱物は次のとおりです。

  • NAS本体
  • ACアダプター・電源コード
  • LANケーブル(短めのCAT5e/6が多い)
  • HDD固定用ネジ(型番により異なる)
  • クイックインストールガイド(紙)

届いたら最初にやること:交換期限の確認と、プール作成前のHDD検査

  • 交換期限を確かめる:初期不良の受付期間は店ごとに違い、当サイトの確認(2026年8月)では最短が「商品到着から7日」でした。買った店の規約で期限をメモします
  • 控えを残す:本体・HDDの保証書(同梱されていれば)と納品書・伝票、箱は期限まで捨てず、HDDの型番とシリアル番号も撮っておきます
  • プールを作る前にHDDを検査する:ステップ3のDSMインストール後、ステップ4のプール作成の前にHDDの初期不良チェック3つ(外観とラベル・健康状態・拡張テスト)を済ませます。先にプールを作ると、不良の1本を返品するときに作り直しになるためです。拡張テストは数時間かかるので、届いた日の夜に仕掛けます

HDDの取り付け方は機種によって2方式あります。DS225+などの前面トレー式は前面からトレーを引き出してHDDを装着する方式(ホットスワップ対応)で、ケースを開ける必要はありません。一方、DS223jはケース開封+ネジ固定式(プラスドライバーが必要)です。DS223jの手順は次のとおりです(Synology公式ハードウェアインストールガイド準拠)。

  1. 背面のネジを外し、上部ケースをスライドさせて持ち上げ、取り外す
  2. 内部のドライブベイにHDDを挿入(SATAコネクタの位置を奥に合わせ、奥までしっかり差し込む)
  3. 側面の固定ネジでHDDをベイに固定する
  4. 2ベイの場合は2本目も同様に取り付ける
  5. 上部ケースを元に戻し、背面ネジを締める

複数台のHDDを使う場合は「同じ型番・同じ容量」で揃えるとトラブルが起きにくくなります。また、HDDは静電気に弱いので、作業前に金属に触れて静電気を逃がしましょう。

ステップ2:ケーブルを接続して電源を入れる

  1. NAS背面のLANポートとルーターをLANケーブルで接続
  2. 付属の電源アダプターをNASに接続してコンセントへ
  3. 前面の電源ボタンを押す
  4. ランプが点滅しながら起動(初回は2〜3分かかることがある)

LANケーブルが付属の短いものでは足りない場合は、CAT6以上のケーブルを用意しましょう。

ステップ3:DSMをインストールする(初回のみ)

SynologyのNASには「DSM(DiskStation Manager)」というOS(管理システム)を手動インストールする必要があります。

方法A:Webブラウザから(推奨)

  1. PCのブラウザで find.synology.com にアクセス
  2. 同じネットワーク内のNASが自動検出される
  3. 「接続」をクリック → 「今すぐインストール」
  4. DSMが自動的にダウンロード・インストールされる(約10分)
  5. 再起動後にDSM管理画面が開く

方法B:Synology AssistantアプリをPCにインストール

find.synology.com で検出されない場合は、Synology公式サイトから「Synology Assistant」をダウンロードしてインストールすると、ネットワーク内のNASを検索できます。


ステップ4:管理者アカウントと共有フォルダを作成する

管理者アカウントの設定

  1. DSMセットアップウィザードに従い、管理者ユーザー名とパスワードを設定
  2. ユーザー名は「admin」以外を推奨(セキュリティ対策)
  3. パスワードは12文字以上・英数字記号混合で設定

ストレージプールとボリュームの作成

HDDの検査(ステップ1の「届いたら最初にやること」)が終わってから作成します。

  1. 「ストレージマネージャー」を開く
  2. 「ストレージプール」→「作成」→ RAIDタイプを選択
  3. 2本HDDの場合はSHR(Synology Hybrid RAID)推奨
  4. ボリュームを作成してフォーマット(Btrfs推奨)

共有フォルダの作成

  1. コントロールパネル → 共有フォルダ → 作成
  2. フォルダ名(例:「家族写真」「仕事データ」)を入力
  3. アクセス権限を設定(誰が読み書きできるか)

権限設計や複数ユーザーでの使い分けはNASの共有フォルダ設定の手順で詳しく解説しています。


設定完了後:PCやスマホからNASにアクセスする

Windowsからアクセス

エクスプローラーを開いてアドレスバーに \\NASのIPアドレス(例:\\192.168.1.100)を入力。ユーザー名とパスワードでログインすれば共有フォルダが表示されます。うまく表示されない、あるいは毎回の入力が面倒な場合はWindowsでネットワークドライブに割り当てる手順を参考にしてください。

Macからアクセス

Finderの「移動」→「サーバへ接続」→ smb://NASのIPアドレス を入力してログイン。

スマホからアクセス

Synologyの「DS File」アプリ(iOS/Android、無料)を使えばどこからでもNASのファイルにアクセスできます。外出先から安全につなぐ設定はiPhoneからNASへアクセスする方法(QuickConnect・VPN)で解説しています。


初期設定で最低限やっておきたい5項目

セキュリティは初期設定の要です。ここでは要点だけ触れます。各項目の具体的な設定手順はNASのセキュリティ設定まとめで詳しく解説しています。

①管理者パスワードを強固に

管理者アカウントのパスワードは、12文字以上・英大文字・小文字・数字・記号を組み合わせるのが推奨されています。「admin」というユーザー名は無効化または別名に変更しましょう。

②2段階認証を有効化

SynologyのDSM、QNAPのQTSなど主要OSには、2段階認証機能が標準搭載されています。Google Authenticatorなどの認証アプリでログイン時にワンタイムコードを求めるようにすれば、不正アクセスのリスクを下げられます。

③自動アップデートの有効化

NAS OSには、セキュリティパッチや機能改善のアップデートが定期的に提供されます。重要なセキュリティアップデートは自動適用、メジャーバージョンは通知のみという設定にしておくと、利便性とセキュリティのバランスが取れます。

④共有フォルダのアクセス権設定

家族やチームで共有するフォルダと、本人だけが見るフォルダを分け、ユーザーごとに「読み取り/書き込み/拒否」を割り当てます。

⑤バックアップ設定

NASはRAIDで耐障害性を確保していても、それは「バックアップ」ではありません。SynologyならHyper Backup、QNAPならHybrid Backup Syncなど、メーカー純正のバックアップツールで外付けHDDやクラウドへの定期バックアップを設定しておきましょう。具体的な構成はNASバックアップの3-2-1ルールを参照してください。

バックアップ先の外付けHDDをまだ用意していなければ、NASと同容量以上のものを1台用意しておくと安心です。

FAQ(よくある質問)

Q1. HDDは1本でも使えますか?

A. 使えます。ただし1本の場合はRAIDが組めないため、HDD故障時にデータが失われます。重要データは必ず外部バックアップを取りましょう。

Q2. HDDを後から増設できますか?

A. 2ベイNASなら後から2本目を追加できます。SHR構成にしておけば、後から大容量HDDへの交換でストレージを拡張できます。増設・交換の実機手順はDS223jのHDD交換・増設ガイドを参考にしてください。

Q3. find.synology.comでNASが見つからない場合は?

A. PCとNASが同じルーター(同じネットワーク)に接続されているか確認してください。Wi-FiとLANが別セグメントになっている場合に見つからないことがあります。

Q4. NASのIPアドレスはどうやって調べる?

A. Synology Assistantアプリ、またはルーターの管理画面の「接続デバイス一覧」から確認できます。DSMのコントロールパネル → ネットワーク → ネットワークインターフェースでも確認可能です。

Q5. 初期設定でSHRとRAID 1はどちらがいいですか?

A. 初心者にはSHR(Synology Hybrid RAID)をおすすめします。異なる容量のHDDを混在させた場合でも容量を最大限使えるなど、柔軟性がRAID 1より高いです。両者の違いはRAIDとSHRの違いの解説記事で詳しく比較しています。

Q6. NAS初期設定の所要時間は?

A. HDDの取り付けからOSインストール、共有フォルダ作成までで、平均30〜60分程度です(購入直後のHDD拡張テストの待ち時間は別)。HDDの容量が大きい場合や、RAID 5/6を組む場合はバックグラウンドのデータ初期化に数時間〜半日かかることがあります。ただし、その間もNASの基本機能は使えます。

Q7. 設定途中で迷ったらどうすれば?

A. DSMやQTSは画面内にヘルプがあり、各メーカーの公式サイトにも日本語マニュアルがあります。迷ったら公式情報を参照してください。

Q8. RAID構成は後から変更できる?

A. メーカー・機種により異なりますが、SynologyのSHRなど一部のRAID構成では、後から構成変更や容量拡張が可能です。一般的なRAID 0/1/5を一度組むと、データを保ったままの構成変更は難しい場合が多いため、初期設定時に将来を見越した選択をおすすめします。

Q9. 設定ミスで動かなくなりました。リセットできる?

A. 多くのNASには「ソフトリセット(設定のみ初期化)」と「ハードリセット(HDDも初期化)」の2段階のリセット機能があります。間違えるとデータを失うため、必ずメーカー公式マニュアルの手順を確認してから実施しましょう。

Q10. 古いNASからデータを移行できる?

A. 同メーカーであれば、HDDをそのまま新しいNASに移してOSをインストールし直すことでデータを継承できる場合があります。Synology公式によると、対応モデル間ではHDD移行による「マイグレーション」が可能と明記されています(Synology公式KB)。異なるメーカー間では、ネットワーク経由でファイルコピーするのが基本です。

まとめ:初期設定を丁寧にやれば、その後10年が変わる

NASは「最初の設定」が運用品質を大きく左右します。パスワード強度、2段階認証、自動アップデート、バックアップ、共有フォルダの権限設計——この5つを最初に整えておけば、その後の運用が楽になります。