NAS本体を選び終えて、次はHDD。価格を見て手が止まった人は多いと思います。同じ4TBでも、PC用として売られているHDDのほうが安く見える棚があるからです。「NAS用」と名前が付いているだけで数千円高いなら、PC用でいいのでは——という疑問は自然です。

この記事は、その疑問にメーカーが公開している資料の範囲で答えます。ネットでは「PC用HDDはNASでは長持ちしない」という説明をよく見かけますが、Western Digital自身は「デスクトップ用HDDでもRAID 0/RAID 1なら使用できる」と書いています。問題は、その先にメーカーが引いている線がどこにあるかです。

結論(先に4行)

  • WD公式は「デスクトップ用HDDのRAIDは2台まで」と書き、そのうちWD Blue・Green・Blackについては「多ベイシャーシ・24時間365日のRAID用途には非推奨」と明記している=使えないのではなく、メーカーが想定していない範囲がある
  • PC用とNAS用の実質的な差は、公式が明記しているもの(24×7運転・RVセンサー)の有無と、年間ワークロード・保証年数の水準(BarraCudaは55TB/年・2年、IronWolfは180TB/年・3年)にある
  • 記録方式の注意点もPC用側にある。BarraCuda 3.5は8TB以下が全容量SMR(CMRは12TB以上。IronWolfはデータシート掲載の全型番がCMR)。ただし現行データシート(2025年9月版)のWD BlueでSMRなのは2TBのWD20EZBXだけで、4TB・8TBはCMRです(旧世代のWD20〜60EZAZはSMRなので型番末尾まで確認を。読み方はWD HDDの型番の読み方)
  • そしてWD Blue 4TBは価格比較サイトの掲載が1店だけで、在庫も価格も読めない(9月の確認ではWD Red Plus 4TBより高く、10月の確認では安かった)。価格差でPC用かNAS用かを決めず、想定用途(24×7運転)と保証年数で選ぶ

迷ったときの指針:2ベイでRAID 1・電源を入れっぱなしという家庭で最も多い構成なら、NAS用のCMRを選ぶのがメーカーの想定内に収まる方法です。4TBならWD Red Plusが基準になります(NAS用の型番を実売価格つきで並べた一覧はNAS用HDDのおすすめ比較)。

まず事実:PC用HDDは物理的に入るし、認識もする

NASのツールレストレイに、PC用のWD Blue 4TBを装着したところ
動作確認のために手元のPC用HDD(WD Blue 4TB)をUGREEN NASync DXP2800のトレイに載せたときの写真です。トレイ側面のツメで固定するツールレス構造で、ネジ止めなしで装着できました。この写真は装着したところまでを撮影したもので、当サイトはこのドライブでの長期運用や故障率の検証はしていません。

3.5インチのSATA HDDである以上、PC用でもNAS用でもコネクタは同じで、トレイにも同じように収まります。接続の仕組み上、NAS側からも通常のSATAドライブとして扱われます。「入るかどうか」「認識するかどうか」で悩む必要はありません。

判断が必要なのは、その先で何が保証されていて、何が保証されていないかです。ここから先は、WDとSeagateが自社サイトに書いていることだけを見ていきます。

WD Blueは使えるのか:WD公式の線は「2台まで」「24×7 RAIDは非推奨」

この論点でいちばん強い資料は、WDのサポート記事「Learn About Internal Desktop Drive RAID 0 & RAID 1 Support」です。WDはそこで、こう書いています。

WD公式サポート記事の記述(英語は原文のまま)

"WD Desktop drives (WD Green, Blue, Black, and Red) have been tested and can be used for use with RAID systems when set in RAID 0 or RAID 1."

WDのデスクトップ用ドライブ(Green・Blue・Black・Red)はテスト済みで、RAID 0またはRAID 1で使用できる

"WD advises using a Desktop drive in a RAID array with no more than two drives."

WDは、デスクトップ用ドライブをRAIDで使う場合、2台以下を推奨する

"Critical: WD Blue, Green, or Black hard drives are not advised for use in RAID arrays using:"

WD Blue・Green・Blackについて、推奨されないRAID用途として "Enterprise HBAs"・"Expanders"・"Multi-bay chassis"・"24x7 RAID applications" の4つを挙げ、これらには "WD Gold, Red, or UltraStar drives can be used for these arrays."(WD Gold・Red・UltraStarが使える)と案内している。非推奨として名指しされているのはBlue・Green・Blackで、WD Redはここから外れています

出典:Western Digital「Learn About Internal Desktop Drive RAID 0 & RAID 1 Support」(2026年9月1日確認)

読み方を整理します。

1. 「使えない」とは書かれていない。 WD Blueを含むデスクトップ用ドライブは、RAID 0/RAID 1についてはテスト済みだと明記されています。ネットで見かける「PC用HDDはNASでは動かない」は、少なくともWDの記述とは一致しません。

2. ただし台数は2台まで。 2ベイNASでRAID 1を組むところまでが、WDの言う推奨の範囲です。4ベイ機に4本入れてRAID 5、という構成は「multi-bay chassis」に当たり、推奨の外に出ます。

3. そして「24x7 RAID applications」は非推奨。 NASの一般的な使い方は電源を入れっぱなしにすることなので、2ベイNASでRAID 1・常時電源オンという家庭で最も多い構成は、この非推奨側にかかります。24時間運転をやめてスケジュール起動にするなら話は変わりますが、それは「NASを常時使わない」という別の選択です。

つまりWD公式の線引きは、「2台までのRAID 0/1なら想定内、24時間RAIDは想定外」という位置にあります。この線を知ったうえで超えるかどうかは読者の判断ですが、超えた先で起きたことについてメーカーは想定していません。

PC用とNAS用で、公式が「明記しているもの」の差

では具体的に何が違うのか。カタログの飾り文句ではなく、公式資料に書かれているかどうかで並べると差がはっきりします。以下は各社の公式製品ページ・サポートページ(2026年9月1日確認)と、メーカーのデータシート(2026年9月16日確認)を突き合わせた結果です。

項目 WD Blue(PC用) WD Red Plus(NAS用) BarraCuda 3.5(PC用) IronWolf(NAS用)
公式が挙げる用途 デスクトップPC向け 「RAID最適化されたNAS」向け 「デスクトップ用途全般」 「多ベイNAS向け」
24時間365日運転 明記なし(RAIDは2台まで・24×7は非推奨とサポート記事に明記) NAS常時稼働を前提とした記述 記載なし(データシートが想定する通電時間は2,400時間/年) "Designed for 24×7 operation"
年間ワークロード データシートに行がない 180TB/年(データシート) 55TB/年(データシート。1〜8TB。12TB以上は120TB/年。製品ページには記載なし) 最大180TB/年
回転振動(RV)センサー 記載を確認できず 記載を確認できず 記載なし 搭載(モデル別・サポートの仕様表に列あり)
記録方式 型番により混在(現行型番ではSMRは2TBのWD20EZBXのみ・4TB/8TBはCMR) 全容量CMR 8TB以下は全容量SMR(12TB以上はCMR) データシート掲載の全型番がCMR(2〜16TB)
保証年数(WDは日本を含むAPAC区分の表) 2年(データシートの全12型番。WDの保証期間表は型番コードで2年と3年に分かれる) 3年 2年 3年

出典:Seagate IronWolf 製品ページ/Seagate BarraCuda 製品ページ/Seagate CMR・SMR一覧/保証年数はSeagate BarraCuda 3.5 サポートページ(2-year limited warranty)とSeagate IronWolf サポートページ(3-year limited warranty・RV列)/WD Warranty Policy/WD Red Plus 製品ページ(ここまで2026年9月1日確認)/BarraCudaの55TB/年・2,400時間/年・記録方式はBarraCuda 3.5 データシート DS17.2-2603US(PDF)、WD Blueの記録方式はWD Blue 3.5インチ データシート(2025年9月版・PDF)(この2件は2026年9月16日確認)

表の書き分けについて。「記載なし」は当サイトが公式ページを確認して記載が見当たらなかった項目、「記載を確認できず」は当サイトがページ本文を確認しきれていない項目です。そのうえで大事なのは、「記載なし」は「その機能がない」という意味ではないことです。BarraCudaのページにRVセンサーの記載がないからといって、非搭載だと当サイトが断定することはできません。言えるのは「Seagateが24×7運転とRVセンサーを書いているのはIronWolf側だけで、年間ワークロードは両方に記載があるものの55TB/年と180TB/年で3倍以上の差がある」という事実です。

裏を返すと、これがNAS用HDDの正体でもあります。NAS用HDDは魔法の部品ではなく、メーカーが「この使い方を想定して作りました」と文書で言い切っている製品です。差額で買っているのは、その言い切りと保証年数です。

なお保証年数は型番単位で見てください。WDの保証期間表ではWD Blueのデスクトップ向けの行が型番コードごとに2年と3年に分かれていますが、WD Blue 3.5インチのデータシート(2025年9月版)では掲載12型番すべての「Limited warranty (years)」が2で、WD40EZAX・WD80EAAZもここに含まれます。一方のWD Red Plusは、保証期間表のAPACの行でEFZX・EFAX・EFGXなどが揃って3年(WD Red Proは5年)。この記事が挙げている実売4TBのWD40EFZZについては、WD公式のWD Red Plusデータシート(2025年9月版・英語)にWD40EFZZを含む全型番の「Limited warranty (years)」が3と記載されています。地域ごとの詳細はWDの保証ページで確認するよう同データシートが案内しているので、手元の型番は上の保証期間表とあわせて見てください。

出典:WD Red Plus データシート(2025年9月版・英語・PDF)(2026年9月1日確認)

RAIDで起きること:ドライブが「粘る」と配列から外れる

PC用HDDをRAIDで使ったときに、機構として説明できる現象がひとつあります。エラー処理の時間切れです。

HDDは読み取りに失敗すると、内部で読み直しを繰り返します。この粘り強さは単体のPCでは長所です。多少時間がかかってもデータが読めるほうがいいからです。ところがRAIDでは事情が逆になります。Linux RAIDの標準的な解説(kernel.orgのアーカイブwiki)によれば、LinuxのSCSIコマンドタイムアウトは既定で30秒です。一方、デスクトップ用HDDは2分以上リトライを続けることがあり、その間は上位に返事を返しません。切り離しの閾値は30秒のほうなので、カーネルが先に諦め、RAID側は「このドライブは死んだ」と判断して配列から外します。冗長性を保つはずのRAIDが、生きているドライブを切り離してしまうわけです。

これを防ぐための機能が、SCT Error Recovery Control(ERC)です。呼び名はメーカーで違い、WDはTLER、SeagateはERC、Samsung・HGSTはCCTLと呼びます。対応ドライブは「7秒で諦めて上位に報告する」といった時間制限を設定でき、RAID側のタイムアウトより先に返事を返せます。

自分の手元のHDDが対応しているかどうかは、SSHでシェルが使える環境なら次のコマンドで確認してください。

smartctl -l scterc /dev/sda

対応していれば読み取り・書き込みの時間制限(デシ秒単位、RAID用途では一般に 70=7.0秒)が表示され、非対応なら「SCT Error Recovery Control command not supported」に相当するメッセージが返ります。

この確認方法の限界

  • 当サイトはNAS実機(Synology DSM/QNAP/UGOS)でこのコマンドの可否を検証していません。SSHを有効化できるNASやPCで確認する手順として紹介しています
  • 各NAS OSがLinux既定の30秒タイムアウトをそのまま使っているか、独自に調整しているかも当サイトでは確認できていません
  • 上記の「30秒=カーネルが諦めるまで」「2分=ドライブがリトライを続ける時間」という値はLinux RAIDの一般的な解説に基づくもので、特定のNAS製品の動作を保証するものではありません
  • NASでSSHを有効にする場合は各機種の案内に従い、確認が終わったら無効に戻すのが安全です

出典:Linux RAID wiki「Timeout Mismatch」(kernel.orgアーカイブ)/smartctl(8) マニュアル

同じwikiには「SMRドライブはRAIDに使うな」とも書かれています。復旧処理で10分以上ストールすることがあるためです。ここが次の論点につながります。

安いPC用HDDの代表格BarraCudaは、記録方式でもRAID向きではない

Seagateのデータシート DS17.2-2603US を見ると、現行のBarraCuda 3.5インチは8TB以下が全容量SMR(家庭用NASで検討されやすい4TB・8TBもここ)、12TB以上がCMRと型番単位で分かれています。IronWolfとIronWolf Proは掲載されている全容量がCMRです。型番単位の仕様差(SMR・年間ワークロード55TB・想定通電2,400時間・保証2年)と価格差の妥当性はBarraCudaとIronWolfの違いで詳しく比較しています。

家庭用NASで検討されやすい容量は、まさに4TBと8TBです。「PC用のほうが安い」と思って手が伸びる棚に、RAIDと相性の悪い記録方式の製品が並んでいることになります。

WD Blueについては事情が違います。WD Blue 3.5インチのデータシート(2025年9月版)には型番ごとの「Recording Technology」の行があり、SMRなのは2TBのWD20EZBXだけです。家庭用NASで検討されやすいWD40EZAX(4TB)・WD80EAAZ(8TB)はCMRと記載されています(SMRの型番はデバイス管理型SMRだと同データシートの脚注にあります)。「PC用HDDだからSMR」という整理は、WD Blueには当てはまりません。WD Blueが多ベイ・24時間運転のRAIDで想定外になる理由は記録方式ではなく、先ほどのサポート記事の非推奨と、データシートに年間ワークロードとMTBFの行そのものがないこと(WD Red Plusには180TB/年・100万時間の行があります)のほうです。手元のHDDが一覧にない型番なら、WDが公式に案内している判別手順(型番から該当データシートを開いて記録方式の欄を見る)で確認してください。

出典:Seagate「CMR and SMR Hard Drives」/WD「Steps to Determine if an Internal Drive uses CMR or SMR Technology」/型番別の記録方式はWD Blue 3.5インチ データシート(2025年9月版・PDF)(2026年9月16日確認)

CMRとSMRの仕組み、なぜRAIDやNASでSMRが問題になるのか、型番から調べる具体的な3ステップはCMRとSMRの違いにまとめてあります。この記事では「安いPC用の代表がSMRに当たる容量帯がある」という事実だけを押さえておけば十分です。

▼ SMRを避けたい・24時間動かしたいという条件を、どちらも公式の記載で確認できる1本。Seagate IronWolf 4TB(ST4000VN006・公式一覧でCMR/24×7運転・最大180TB/年・RVセンサーを公式が明記) 価格・在庫は変動します。下のリンクで現在の実売をご確認ください。

WD Blue 4TBは在庫が不安定で、価格では比べられない

ここまでの話は「PC用のほうが安いが、想定用途が違う」という構図を前提にしていました。ところが容量によっては、価格で比べること自体が成り立ちません。

容量 PC用 NAS用 差額
4TB WD Blue
(価格比較サイトの掲載1店のみ・在庫不安定)
WD Red Plus 31,980円 比べられない
(1店の値は確認のたびに大きく動く)
6TB WD Blue 34,800円 WD Red Plus 42,980円 PC用が8,180円安い
4TB(Seagate) BarraCuda 24,980円(SMR) IronWolf 31,980円 PC用が7,000円安い
8TB(Seagate) BarraCuda 35,800円(SMR) IronWolf 52,280円 PC用が16,480円安い

※価格は変動します。上表は各製品の実勢価格を調べた時点のもので、記事内の価格の確認日は最も古いもので2026年10月13日です。とくにWD Blue 4TBは価格比較サイトの掲載が1店だけで、在庫も価格も不安定です。実勢の幅が見えないため、表には金額を載せていません。最新価格は各ストアでご確認ください。

4TB:WD Blueは1店だけの価格で、比べる土台がない

4TBのWD Blueは、価格比較サイトの掲載が1店だけです。9月の確認ではWD Red Plus 4TBより高く、10月の確認では逆に安くなりました。1店の価格はその店の在庫次第で動くので、この差を根拠にPC用かNAS用かを決めるのはおすすめしません。HDDの相場全体が上がっている局面では、流通量の少ないモデルから掲載店舗が減ります。WD Blue 4TBはまさにその状態です。

仮に安く買えたとしても、違いは価格以外のところに残ります。WD Blue 4TBは現行型番がCMRなので記録方式の差はありませんが、WDはデスクトップ向けのWD Blueを多ベイ・24×7のRAID用途に「非推奨」としており、保証も2年です(WD Red Plusは3年)。2ベイのRAID 1で電源を入れっぱなしにするなら、NAS用を選ぶ理由はこの想定用途と保証年数にあります。

6TB・8TB:まだPC用が安いが、差額にはSMRの分が入っている

一方、6TBでは従来どおりPC用のほうが安く、差は最安店どうしで8,180円です。Seagateでは8TBでBarraCudaが16,480円安い計算になります。ただしBarraCudaの4TB・8TBはSMRなので、この差額は記録方式の差込みです。同じCMR同士で比べているわけではありません。

読み取れるのは、「PC用が安い」は容量と時期で変わる一時的な条件であって、常に成り立つ法則ではないということです。買う直前に、その容量で実際にいくら違うかを見てから決めてください。相場そのものの動きと買い時の考え方はNAS用HDDの価格高騰とHDD価格の待ち戦略で扱っています。

どこまでなら許容範囲か(用途別の線引き)

ここまでの材料を、判断できる形に整理します。

PC用HDDでも現実的な使い方

  • 1ベイNAS・RAIDを組まない単体運用:RAIDの切り離し問題が発生しない。24×7運転はWDの推奨外だが、RAID台数の制約は当たらない
  • バックアップ専用の受け皿(大事なデータの本体は別にある):失っても再取得できるコピーだけを置く
  • 動作確認・一時的な検証:当サイトの写真も、この用途で装着したものです
  • すでに手元にPC用HDDが余っている:新規購入するより、3-2-1バックアップの2つ目のコピー先として使うほうが無駄がありません(3-2-1ルール)。NASに入れずUSB直結で使うなら、外付けケース・DASという受け皿もあります(外付けHDD/SSDの選び方)。ケースの実物は記事末に置いています

メーカーの推奨から外れる使い方

  • 2ベイ以上でRAIDを組み、電源を入れっぱなしにする:WD公式が非推奨として名指ししている「24x7 RAID applications」に当たる
  • 3台以上のRAID:WDの推奨は2台まで
  • BarraCudaの4TB・8TBをRAIDに使う:記録方式がSMR。Linux RAIDの解説でもSMRドライブのRAID使用は避けるよう書かれている
  • オリジナルがそこにしかないデータを置く:どのHDDでも同じですが、想定用途の外で使うなら、なおさら別の場所へのコピーが要ります

「今すでにPC用HDDで運用していて、問題なく動いている」場合に慌てて交換する必要があるかは、構成によります。RAIDを組んでおらず、別の場所にバックアップがあるなら、動いているうちは動かして構いません。逆に、RAIDの冗長性だけを頼りにオリジナルデータを預けているなら、HDDの種類より先にバックアップ先を用意するほうが優先です。故障の予兆の見分け方はNAS用HDDの故障サインにまとめています。

なお、NAS本体のメーカー(Synology・QNAP・UGREEN)が「NAS用でないHDDを使うと本体保証が受けられない」と定めているかどうかは、当サイトでは確認できていません。Synologyの互換ポリシーとDSMでの「未検証」表示の扱いはSynology HDD互換性で扱っています。

買うならどれか

ここまでの条件を満たすのは、NAS用と明記されたCMRのHDDです。2ベイでRAID 1を組み、常時電源を入れる使い方なら、選択肢は次のあたりに絞られます。

  • WD Red Plus 4TB(31,980円):流通が細っているWD Blue 4TB(掲載1店・価格が読めない)と違い、複数店で価格を確認できる。迷ったときの基準になる1本
  • Seagate IronWolf 4TB(31,980円):24×7運転・最大180TB/年・RVセンサーを公式が明記。3年保証+Rescueデータ復旧サービス3年付帯(提供条件は国・地域により異なるとSeagateが注記。復旧を保証するものではなく、バックアップの代わりにもなりません)
  • WD Red Plus 6TB(42,980円):6TB帯ではPC用との差額が最安店どうしで8,180円残るので、用途と予算で判断する容量帯
  • Synology純正HAT3300(42,600円):Synology機で互換リストの心配をしたくない場合

▼ 2ベイRAID 1・電源入れっぱなしでも、メーカーの想定から外れずに済む1本。WD Red Plus 4TB(WD40EFZZ・CMR・WDがNAS用途を明記) 価格・在庫は変動します。下のリンクで現在の実売をご確認ください。

この記事はあくまで「PC用を入れたらどうなるか」の射程です。次に読む記事は、決まっている度合いで選んでください。

次の一歩

  • どの容量を買えばいいか決まっていない → NAS用HDDの選び方:容量の目安・回転数・メーカーごとの性格を整理しています
  • NAS用の中でどれを買うか決めたい → NAS用HDDおすすめ比較:定番9モデルを実売価格つきの一覧表で比較しています

なお、本記事の比較と推奨は、広告報酬の多寡ではなく、各社の公表資料と技術的根拠にもとづいて選んでいます。

よくある質問(FAQ)

Q. WD BlueとWD Red Plusは、結局どこが違うのですか?
A. 公式の記述の差です。WD Red PlusはWD自身が「RAID最適化されたNAS向け」と用途を明記しており、WDの保証期間表でもRed Plus 3.5インチの行は3年になっています。WD Blueはデスクトップ向けで、サポート記事では「RAIDは2台まで」「多ベイ・24×7のRAID用途には非推奨」と案内され、データシート掲載12型番の保証はすべて2年。記録方式もRed Plusは全容量CMRですが、WD Blueは型番により混在します(2025年9月版データシートの現行型番ではSMRは2TBのWD20EZBXのみ)。
Q. WD BlueはCMRですか、SMRですか?
A. 型番によります。WD Blue 3.5インチのデータシート(2025年9月版)には型番ごとの「Recording Technology」の行があり、SMRなのは2TBのWD20EZBXだけです。WD40EZAX(4TB)・WD80EAAZ(8TB)を含む他の型番はCMRと記載されています。一覧にない型番は、WDが公式に案内している判別手順(ドライブの型番から該当データシートを開き、記録方式の欄を見る)で確認してください。CMRとSMRの違いに調べ方の手順をまとめています。
Q. Seagate BarraCudaはNASに使えますか?
A. 物理的には装着でき認識もしますが、BarraCudaの公式製品ページには24時間運転・NAS・RAIDのいずれについても記載がなく、デスクトップ用途の製品として説明されています。データシートまで見ると年間ワークロードは55TB/年・想定通電時間は2,400時間/年で、IronWolf(180TB/年・24×7)とは前提が3倍以上違います。記録方式も8TB以下は全容量SMRです。NASでRAIDを組むなら、同じSeagateならIronWolf(公式一覧に載る容量はすべてCMR・24×7明記・3年保証)が想定された製品です。
Q. PC用HDDとNAS用HDDの故障率を比べたデータはありますか?
A. 家庭のNASという同じ条件で両者を比べた故障率データを、当サイトは持っていません。よく見かける「数ヶ月で壊れる」といった記述も、その根拠を確認できていないため、この記事では採用していません。判断材料にできるのは、メーカーが公表している想定用途・ワークロード・保証年数と、RAIDでのエラー処理の仕組みまでです。
Q. 逆に、NAS用HDDを普通のデスクトップPCで使ってもいいですか?
A. NAS用HDDをPCで使うことを制限する記述は、WD・Seagateの公式ページでは確認できていません。用途としてはNASを想定した製品ですが、SATA接続の3.5インチHDDである点は同じです。なお4TBのWD Blueは価格比較サイトの掲載が1店だけで価格が読めないため、価格を理由にPC用を選ぶ判断はしにくい状態です。
Q. すでにPC用HDDでNASを運用しています。すぐ交換すべきですか?
A. 構成によります。RAIDを組んでおらず、別の場所にバックアップがあるなら、動いている間は使い続けて構いません。RAIDの冗長性だけを頼りにオリジナルデータを預けている場合は、HDDの交換より先にバックアップ先の確保を優先してください。次に容量を増やすタイミングでNAS用CMRに切り替えるのが、費用の面でも無理のない移行です。

まとめ

  • WD公式は、デスクトップ用HDDについて「RAID 0/1・2台までならテスト済み」と書く一方、WD Blue・Green・Blackは「多ベイシャーシ」「24時間365日のRAID用途」には非推奨と明記している。家庭で最も多い「2ベイRAID 1・常時電源オン」は、この非推奨側にかかる
  • PC用とNAS用の差は、24×7運転とRVセンサーを公式が明記しているかどうかと、年間ワークロード・保証年数の水準(BarraCuda 55TB/年・2年/IronWolf 180TB/年・3年、WD Red Plus 180TB/年・3年。WD BlueはデータシートにワークロードとMTBFの行がない)にある
  • 記録方式の注意はPC用側にある。現行BarraCuda 3.5は8TB以下が全容量SMR(12TB以上はCMR・データシートに型番単位の記載)。WD Blueは型番で混在するが、現行データシート(2025年9月版)ではSMRは2TBのWD20EZBXだけで、EZAXの4TB・8TBはCMR(旧世代のEZAZはSMR)
  • 価格は容量と時期で動く。WD Blue 4TBは掲載1店だけで価格が読めず(9月はRed Plusより高く、10月は安かった)、6TBではPC用が8,180円安い(最安店どうし)。PC用かNAS用かは価格差ではなく想定用途と保証年数で決め、価格は買う直前にその容量の実額で確かめる
  • 1ベイ・非RAID・バックアップの受け皿・動作確認までなら現実的な選択肢。2ベイ以上のRAIDを常時稼働させるなら、NAS用CMRを選ぶのがメーカーの想定内に収まる方法

▼ NASに入れないと決めたPC用HDDの行き先:ロジテック 4ベイHDDケース LHR-4BRHEU3(3.5インチ×4・USB 3.0/eSATA接続)— 手持ちのHDDを差して、USB直結のバックアップ用に回す使い方です。対応容量・在庫はリンク先でご確認ください