更新日:2026年7月25日|カテゴリ:HDD・SSD・ストレージ選び
本記事の価格データは AKIBA PC Hotline!の相場調査・価格.com・メーカー公式発表にもとづくもので、容量帯の判断は広告報酬の多寡ではなく、公表データと技術的根拠にもとづいて示しています。
「去年のつもりで見積もったら、HDDだけで2万円以上高くなっていた」——2026年のNAS購入・増設では、これが普通に起きています。数字にすると、WD Red Plus 6TBは1本で+17,600円(2026年1月10日比・秋葉原最安)。RAID1で2本そろえるなら、HDDだけで3万円以上の差です。
NAS本体の価格はここまで動いていません。異常な動きをしているのはHDD側です。しかも、よく言われる「SSD(NANDフラッシュ)の高騰」とは原因がまったく別物です。
この記事では、秋葉原の最安値調査やメーカー公式資料といった一次寄りの情報だけを使って、どれだけ上がったのか/なぜ上がったのか/どの容量を選べば損しにくいのかを整理します。どの製品を買うかという選定はNAS用HDDのおすすめ比較にまとめてあるので、この記事は「いつ・いくらで買うか」に絞ります。
この記事の結論(2026年7月時点)
- WD Red Plus 6TBは秋葉原最安で 24,200円(1月10日)→41,800円(7月18日)=+72.7%、8TBは+52.1%
- 原因はSSDの高騰とは別。AIデータセンター向けの大容量HDDに生産枠が移り、家庭向けの安い在庫から消えた
- HDD全体の出荷台数はほぼ横ばいなのに、データセンター向けだけが増えている(総量が増えないまま配分が動いた)
- 2026年内に大きく下がる材料は、調査した範囲では見当たらない。ただし「必ず上がり続ける」とも断定できない
- 買うなら8TB以上が容量あたり単価で有利。2TB・4TBは今いちばん割高(予算優先なら4TB×2も選択肢)
- 安いBarraCuda 4TB/8TBはSMRなのでNAS常用は非推奨(Seagate公式一覧で確認)
2026年7月時点の価格スナップショット
価格調査日:2026年7月25日/この節の数値は月1回を目安に見直しています。以降の節(値上がりの構造・容量の選び方)は時期を問わず読める内容です。
いま買うといくらか(執筆時点の実勢)
まず、NAS用HDDとして定番の3シリーズの実勢価格です。いずれも1本あたり・税込・執筆時点の代表値で、在庫状況によって上下します。
| 製品 | 4TB | 6TB | 8TB |
|---|---|---|---|
| WD Red Plus | 30,000円 | 43,000円 | 48,000円 |
| Seagate IronWolf | 30,000円 | 40,000円 | 47,000円 |
| 東芝N300 | 30,000円 | – | – |
4TBは3シリーズとも3万円前後で横並びです。同じ4TBでも、後述の秋葉原ショップ最安値では26,980〜29,980円。店とタイミングで3,000円程度は動くため、上表は「在庫がある店で買える価格帯の代表値」として見てください。
価格.com・ドスパラ・ツクモ等での確認にもとづく代表値(最終確認:2026年7月25日)。上表の価格は当サイトの価格データベースと連動しているため、更新のたびに数値が変わります。店舗間の価格差が大きく、最安表示の店が在庫切れというケースが多発しています。表中の「–」は当サイトが現在価格を追えていない容量帯という意味で、未発売ではありません。
半年でどれだけ上がったのか
次が本題です。秋葉原のショップ最安値を定期的に追っている AKIBA PC Hotline!「HDD価格の月次動向レポート」から、WD Red Plusの推移を並べます。過去の日付つきの数値なので、以下は記録としてそのまま固定しています。
| 調査日 | 2TB | 4TB | 6TB | 8TB | 12TB |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年1月10日 | – | – | 24,200円 | 31,350円 | 54,780円 |
| 2026年5月23日 | – | 23,980円 | 33,980円 | 38,000円 | 59,500円 |
| 2026年6月20日 | – | – | 33,480円 | 43,980円 | 66,980円 |
| 2026年7月18日 | 22,580円 | 29,980円 | 41,800円 | 47,690円 | 69,000円 |
上昇率にすると、こうなります。
| 容量 | 起点 | 2026年7月18日 | 上昇率 |
|---|---|---|---|
| 6TB(WD60EFPX) | 24,200円(1月10日) | 41,800円 | +72.7% |
| 8TB(WD80EFPX) | 31,350円(1月10日) | 47,690円 | +52.1% |
| 12TB(WD120EFGX) | 54,780円(1月10日) | 69,000円 | +26.0% |
| 4TB(WD40EFZZ) | 23,980円(5月23日) | 29,980円 | +25.0%(約2か月) |
出典:AKIBA PC Hotline! 相場調査 2026年1月14日公開/同 5月27日公開/同 6月24日公開/同 7月22日公開(調査期間 7月11日〜18日)。4TBは1月号に掲載がないため5月23日を起点としています。
他社も同じ方向です。Seagate IronWolf 8TB(ST8000VN002)は33,779円(1月10日)から48,736円(7月18日)へ+44.3%。ただしこちらは月ごとに±8,000〜9,000円の上下動を繰り返しており、「毎月じわじわ」ではなく在庫が切れると跳ね、入荷すると戻るという動き方をしています。
東芝N300はさらに急で、18TBが79,800円(7月4日調査)→94,800円(7月18日調査)と2週間で+18.8%。同レポートの7月8日公開号は「一層の品薄化」と表現しており、この号では24TBが品切れでした。
出典:AKIBA PC Hotline! 2026年7月8日公開号(調査期間 6月27日〜7月4日)
「値札が上がった」のではなく「安い店から在庫が消えた」
体感に近いのは、この言い方だと思います。
当サイトで各ショップの通販ページを1件ずつ確認したところ、WD Red Plus 4TBは価格.comの掲載が2店のみで、そのどちらも在庫なしでした。表示価格は20,080円と38,500円で、1万円以上の開きがあります。IronWolf 4TBも同様に、確認したショップの在庫が両方とも切れていました。
つまり「最安値」として表示されている数字が、もう買えない店の売り切れ表示であるケースが増えています。価格.comの最安値だけを見て予算を組むと、実際にカートに入れられる価格との差でつまずきかねません。購入前に、その店舗ページで在庫表示まで確認するのが2026年の必須動作です。
なぜ上がっているのか(SSDの高騰とは原因が違う)
ここが記事の核心です。「AIのせい」で終わらせず、何がどう動いたのかを順番に見ます。急ぐ方向けに、先に3行でまとめます。
- AIデータセンターの需要で、ニアラインHDDの納期が52週超まで延びた
- メーカーは工場を増やしておらず、台数ベースの生産能力を増やしていない
- HDD全体の出荷台数は横ばいのまま、配分だけがデータセンター向けへ動いた
なお、SSD(NANDフラッシュ)の高騰とHDDの高騰は、原因も供給構造も別物です。今回の調査ではNAND価格がHDD価格を押し上げたという一次情報は確認できませんでした。SSD側の事情はNAS用HDDとSSDの比較で別途扱っています。
AI向け「ニアラインHDD」の待ち時間が52週超になった
引き金はデータセンターです。調査会社TrendForceは2025年9月15日の発表で、データセンター向けニアラインHDDのリードタイム(納期の待ち時間)について「数週間から52週超に膨れ上がった」と説明しました。あわせて「HDDメーカーはここ数年、生産能力を拡大していない」とも指摘しています。
出典:TrendForce プレスリリース(2025年9月15日)。同リリースにHDDの価格数値は含まれていません(掲載されている価格予測はエンタープライズSSDのものです)。
AIの学習・推論で生まれた大量のデータを安く保存する先として、HDDの需要が跳ね上がった——というのが出発点です。
メーカーは「台数」を増やしていない
重要なのは、メーカーが減産したわけではないという点です。実態は「増やしていない」です。
Western Digitalのアービング・タンCEOは2025年10月31日の四半期決算説明で「we are not adding any unit capacity to our portfolio right now(現時点でポートフォリオに台数ベースの生産能力を追加していない)」と述べたと報じられています。同四半期の出荷容量は204EB(1EB=100万TB)で、前年同期比+23%でした。
出典:Blocks & Files(2025年10月31日)。発言は決算説明会でのもので、当サイトが確認できたのは専門メディア経由の引用です(原典のトランスクリプトは未確認)。
新しい工場を建てるのではなく、1台あたりの容量を上げて需要に応える——というのが業界の基本戦略です。その結果、台数は増えないまま、限られた枠の取り合いになります。
総量は横ばいなのに、配分だけがデータセンターへ動いた
この記事でいちばんお伝えしたい数字です。PC Watchの連載「福田昭のセミコン業界最前線」(2026年4月28日公開)が、テクノ・システム・リサーチと日本HDD協会の資料をもとに次のデータを紹介しています。
| 指標 | 2024年(実績) | 2025年(実績) |
|---|---|---|
| HDD全体の出荷台数 | 1億2,390万台 | 1億2,375万台(ほぼ横ばい) |
| ニアライン(データセンター向け) | 5,846万台 | 6,762万台(+916万台) |
| 3.5型ATA(コンシューマ系) | 3,573万台 | 3,094万台(-479万台) |
| 出荷金額に占めるニアライン比率 | 79.8% | 85.6% |
出典:PC Watch「福田昭のセミコン業界最前線」(2026年4月28日公開)。出典元はテクノ・システム・リサーチ/日本HDD協会の2026年4月セミナー資料。なお、NAS用HDDがこの統計分類のどこに含まれるかは資料からは特定できないため、断定は避けています。
パイ全体は増えていません。増えたのはデータセンター向けの取り分だけで、その分コンシューマ系が減っています。「AIがHDDを食べている」のではなく、「同じ量のHDDの配り先が変わった」というのが数字で見える形です。
では、NAS用HDDはこの配分変化の外側にいられるのか。 WD Red Plus・IronWolf・東芝N300は、ニアラインHDDと同じメーカーの同じ3.5型の製造ラインで、同じプラッタとヘッドを分け合って作られる製品です。だからこそ、前節のWD CEOの「台数ベースの生産能力は追加していない」という発言が効いてきます。統計上どの分類に計上されるかは特定できませんが、枠を奪い合う相手が同じであることは、メーカー自身の説明から言えます。家庭用NASの棚に並ぶHDDが減り、値札が上がるのは、この配分変化の下流で起きている出来事だと考えられます。
生産枠は長期契約で先まで押さえられている
Seagateは2026年1月時点で「ニアラインの生産能力は2026年分がすべて割り当て済みで、2027年上半期分の受注が今後数か月で始まる」と説明しています。大手クラウド事業者との長期契約により2027年までの需要見通しを確保しており、2028年の増加計画についても複数顧客と協議中、としています。
生産枠の説明はTrendForce(2026年1月28日)、売上高は各社の公式リリースによります。出典:TrendForce(2026年1月28日)/Seagate FY26 Q3 決算リリース(2026年4月28日発表)/Western Digital FY26 Q3 決算リリース(2026年4月30日発表)
両社とも2026年4月発表の四半期決算(FY26 Q3)で、売上が前年同期比40%超の増加でした。作れば売れる状態で、なおかつ売り先が先まで決まっている——この状況で、家庭向けの安いモデルに枠が回る理由はありません。
AIだけが理由ではない
「全部AIのせい」と片づけると見落とします。日本経済新聞は2026年6月12日、HDDの大口取引価格が4〜6月期に前四半期比で10%高くなったと報じ、その背景として「中国のPC向けの需要が好調」であることと、「HDDメーカーがデータセンター向けの生産を優先し汎用的な製品が品薄になっている」ことを挙げています。
出典:日本経済新聞(2026年6月12日)(会員限定記事のため、当サイトが確認できたのはリード部分のみです)
加えて、HDDはドル建てで調達される輸入品です。2026年7月下旬の円相場は1ドル160円台で推移しており、円建て価格には逆風になります。ただし「円安が何%押し上げた」と定量的に言える根拠は持っていないため、要因のひとつとして挙げるにとどめます。
で、いつ買えばいいのか
ここからは見通しの話になります。確定していることとあくまで予測であることを分けて読んでください。
確定していること:バッファローが8月3日に希望小売価格を改定(対象は同社製品)
バッファローは2026年7月23日、105型番の希望小売価格を改定すると発表しました。対象は外付HDD・ポータブルHDD・内蔵/交換用HDD・NAS・Wi-Fiルーターなど。改定日は2026年8月3日、改定率は5.8%〜42.5%です。同社は2026年6月1日にも改定を実施しており、今回が2回目になります。
出典:バッファロー 価格改定のお知らせ(2026年7月23日発表)。改定率は同社の公式表記に合わせています。なお同社は改定理由を明記していません。
I-O DATAも2026年1月14日付で165型番(改定率2.8%〜54.8%)、7月1日付で98型番の価格を改定しました。1月の改定について同社は「原材料価格、エネルギー、物流などの関連費用の高騰が長期に継続している」ことを理由に挙げ、現価格の維持が困難になったと説明しています。
出典:I-O DATA 価格改定のお知らせ(2025年12月10日発表・2026年1月14日実施)/同社2026年の価格改定一覧
まず、この改定が効くのは「バッファロー製品を買う人」だけです
改定対象はバッファローの105型番です。この記事で扱っているWD・Seagate・東芝の内蔵HDD単体の店頭価格が、8月3日に連動して動くわけではありません(内蔵HDDは為替と流通在庫で日々動きます)。LinkStation・TeraStationや外付HDDを検討中の方にだけ効く日付として扱ってください。
そのうえで、希望小売価格の改定=実売価格が必ず同じだけ上がる、でもありません
改定されるのはメーカー希望小売価格です。店頭の実売価格は在庫や競合状況で決まるため、8月3日に一斉に上がるとは限りません。「締切があるから今すぐ買え」ではなく、すでに買うと決めている人にとっては、日付が判明している数少ない材料として扱うのが妥当です。
予測であること:不足は2027〜2028年まで続くという見立て
米モルガン・スタンレーは2026年6月15日付のレポートで、HDDの需給逼迫が「少なくとも2028年まで」拡大すると予測しています。ニアラインHDDの供給不足が2026年に約300EB、2027〜2028年には約400EBへ拡大する、という内容です。
この予測の読み違いに注意
これは証券会社が投資家向けに出した、データセンター向けHDDの需給見通しです。家庭用NAS向けHDDの店頭価格が2028年まで下がらない、という予測ではありません。当サイトも「2028年まで高いままです」とは書けません。
出典:報道経由(Yahoo Finance / Investing.com 2026年6月16日)。原レポートは非公開で、当サイトは直接確認していません。
供給側の増強も動いてはいます。TrendForceが2026年7月22日に報じた内容は、次の3点です。
- レゾナック:磁気記録メディアの年産を1.6億枚から2.1億枚へ増強中
- HOYA:ベトナムに約500億円を投じてガラス基板の新工場を建設予定(2028年稼働予定)
- TDK:HDDヘッドの生産能力の拡大を表明
出典:TrendForce(2026年7月22日)。各社の一次リリースは未確認です。
読み方はシンプルです。部材の増強は始まっているが、効いてくるのは数年先。2026年内に供給が緩む材料にはなりません。
結論:状況で答えが変わります
| あなたの状況 | 判断の目安 | 次にやること |
|---|---|---|
| 今すぐ容量が必要(空き容量が逼迫・NAS導入予定が決まっている) | 待つ根拠が弱いので、買うなら容量帯を間違えないことに集中する | 下の買うなら、いまは8TB以上が合理的で容量帯を決め、型番はNAS用HDDのおすすめ比較で確認 |
| 既存NASが問題なく動いていて、増設は「そろそろ」程度 | 急ぐ必要はない。まず棚卸しと空きベイの確認で時間を稼ぐ | 買わずに時間を稼ぐ3つの手を実行し、この記事をブックマークして次の相場更新(月1回)で再判断 |
| 故障したHDDの交換 | 選択の余地なし。RAIDが縮退している(1本壊れて予備がない)状態は放置しない | 同容量帯・CMRの1本を最短で確保。在庫のある型番はNAS用HDDのおすすめ比較、記録方式の確認はCMRとSMRの違いへ |
RAIDが縮退したまま運用を続けると、リビルド(再構築)前にもう1本が壊れた時点でデータを失います。値上がりを理由に交換を先延ばしにする判断だけは、金額に見合いません。
正直に書くと、「今が底ではない可能性が高い」ところまでは事実の積み上げで言えますが、「必ず上がり続ける」とは誰にも断言できません。上の分岐で判断するのが現実的です。
買うなら、いまは8TB以上が合理的
値上がりを前提にすると、「どの容量を買うか」の答えが変わります。
容量あたり単価で見ると、8TB以上でプラトーに入る
2026年7月18日時点の秋葉原最安値から、当サイトで容量あたり単価(円/TB)を算出しました(1円未満四捨五入)。
| 容量 | WD Red Plus | Seagate IronWolf | 東芝N300 |
|---|---|---|---|
| 2TB | 11,290円/TB | – | – |
| 4TB | 7,495円/TB | 6,745円/TB | – |
| 6TB | 6,967円/TB | 6,467円/TB | – |
| 8TB | 5,961円/TB | 6,092円/TB | 5,475円/TB |
| 12TB | 5,750円/TB | – | 5,415円/TB |
| 18TB | – | – | 5,267円/TB |
上表はAKIBA PC Hotline! 2026年7月22日公開号(調査期間 7月11日〜18日)の最安値をもとに当サイトが計算した値で、出典記事に掲載されている数値ではありません。銘柄どうしの単価の優劣は調査時点で入れ替わります(前掲の実勢表とは調査日も出所も違います)。ここで判断していただきたいのは銘柄ではなく容量帯です。
読み取れることは3つです。
1. 2TB・4TBが極端に割高になった。 2TBは8TBの約1.9倍の単価です。「とりあえず小さく買う」が、今もっとも損をしやすい選択になっています。
2. 8TB以上で、おおむね5,000〜6,000円台/TBのプラトーに入る。 8TB→12TB→18TBの単価改善はゆるやかです。つまり8TBまで上げれば、そこから先の「もっと大きく買う」お得感は薄いといえます。
3. 6TBが中途半端な位置に落ちた。 かつては4TBとの価格差が小さくお買い得でしたが、7月18日時点では6TB(6,967円/TB)と8TB(5,961円/TB)の差が開いています。予算が届くなら8TBです。
参考までに、2026年1月10日のWD Red Plus 8TBは31,350円=3,919円/TBでした。半年で単価が5割増しです。「HDDの容量単価は毎年下がる」という前提は、少なくとも今は成り立っていません。
在庫の動きが速い時期です。価格を見るときは、最安表示だけでなくその店舗の在庫表示までご確認ください(前述のとおり、最安表示が売り切れというケースが増えています)。
8TBを選ぶと何が変わるか
数字の話を生活の話に戻します。8TBを選ぶ実利は、次の増設までの年数を稼げることです。
家族の写真・動画を貯める用途なら、年間の増加ペースは数百GB〜1TB程度が一般的です。今1TB使っている2ベイNAS(RAID1)で試算すると、こうなります。
| 構成 | 実効容量 | 空き | 年+500GBなら | 年+1TBなら |
|---|---|---|---|---|
| 4TB×2(RAID1) | 約4TB | 約3TB | 約6年 | 約3年 |
| 8TB×2(RAID1) | 約8TB | 約7TB | 約14年 | 約7年 |
現在の使用量1TB・RAID1・実効容量から単純計算した当サイトの試算です。実際はスナップショットやゴミ箱、空き容量の余裕(8割で運用するのが安全)で前後します。
差額36,000円で、次にHDDを買う日を4年前後うしろにずらせる——これが8TBを選ぶ実利です。4TBで組んで2〜3年後に足りなくなると、その時点の相場でもう一度HDDを買うことになります。今の相場が続いた場合、その買い直しは今回より高くつく可能性があります。
一方で、8TB×2本は初期費用が96,000円前後になります。ここは正直にトレードオフです。これから本体ごと新調するなら、2ベイのエントリー機(Synology DS225+で64,000円前後)と合わせて約16万円が目安になります。容量の見積もり方はNASのHDD容量の選び方にまとめてあります。
なお、東芝N300は容量あたり単価が最も良い一方、7月18日調査で最も値動きが激しかった銘柄でもあります(18TB・22TBはいずれも2週間で+15,000円)。単価の良さと値動きの大きさはセットで考えてください。
予算優先なら4TB×2という選択も残る
「8TBは予算的に無理」という場合、4TB×2という構成は今も現実的です。円/TBでは割高ですが、初期費用の絶対額は8TB×2より約36,000円低くなります。現在の使用量が1TB前後で、増え方が年0.5TB程度なら、上の試算どおり約6年もつ計算です。4TBで組んで次の値動きを見るのは、十分に合理的な判断といえます。
ただし4TBは在庫が薄く、店舗間の価格差がとくに大きい容量帯です(当サイトの調査時点では、価格.comの掲載2店がどちらも在庫なしでした)。在庫表示のある店の価格でご判断ください。
容量帯が決まったら、次は型番です。同じ「8TB」でも記録方式(CMR/SMR)・保証年数・想定ワークロードが違い、NAS常用に向かない型番が混ざっています。当サイトで条件ごとに整理したNAS用HDDのおすすめ比較と、判断基準そのものを解説したNAS用HDDの選び方をご覧ください。この記事では「いくらで、どの容量帯を」に絞りました。
やってはいけない節約
高いときほど、危ない近道が魅力的に見えます。3つだけ止めておきます。
安いBarraCudaは、NASに入れてはいけない
2026年7月8日公開のアキバ相場調査では、Seagate BarraCuda 8TBが25,980円で特売されていました。同じ時期のWD Red Plus 8TBは47,690円ですから、ほぼ半額です。
出典:AKIBA PC Hotline! 2026年7月8日公開号(調査期間 6月27日〜7月4日)
しかしSeagate公式のCMR/SMR一覧によれば、BarraCudaの4TBと8TBはSMRです(12TB以上はCMR)。SMRはデータを瓦のように重ねて書き込む方式で、大量書き込みやRAIDの再構築時に速度が大きく落ちることがあります。
出典:Seagate 公式「CMR/SMR一覧」。同一覧ではIronWolfの3.5型は全容量がCMRと記載されています。
RAIDのリビルド中に想定外の時間がかかると、その間にもう1本が壊れるリスクに晒され続けます。2万円の節約と引き換えにするものとしては割に合いません。詳しくはCMRとSMRの違いをご覧ください。
中古・リファービッシュ品は「別の商品」だと理解して買う
Seagateは公式にリファービッシュ品(Recertified Drives)を扱っています。ただし公式ページには次のように書かれています。
- 保証は6か月(NAS用HDDの新品は3年保証が一般的)
- 製品は「used, reconditioned, or repurposed(使用済み・再調整・再利用)」されたもの
- 新品向けの仕様書と保証はリファービッシュ品には適用されない
出典:Seagate 公式 Recertified Drives(米国サイト)。日本国内で正規流通しているかは当サイトでは確認できていません。
メーカー認定品でこの条件です。フリマやオークションの個人出品品は、通電時間も使用環境も分かりません。RAIDを組むためにまとめ買いした中古が同時期に壊れるという事態は、バックアップ設計ごと崩します。
参考値として、Backblazeの2026年第1四半期のドライブ統計(2026年7月9日公開・対象341,263台)を挙げます。四半期の年換算故障率は1.24%、生涯故障率は1.39%と報告されています。これは新品を含むデータセンター運用の数値で、中古の故障率を示すものではありません。
出典:Backblaze Drive Stats for Q1 2026(2026年7月9日公開)
外付けHDDの分解(殻割り)は当サイトでは推奨しません
外付けHDDを分解して中身のHDDを取り出す方法がネットで紹介されていますが、当サイトでは勧めません。メーカー保証を失いますし、中身の型番・記録方式が保証されないためです。加えて外付け製品に入るドライブは、NASのような24時間連続稼働を前提にした仕様とは限りません。高騰時ほど「安く見える外付け」に手が伸びますが、NASの中身は数年動き続ける部品ですから、ここは節約しどころではありません。
現実的に効く節約と、買わずに時間を稼ぐ方法
止める話ばかりでは片手落ちなので、実際に効く手を挙げます。
Synologyの2025年モデルは、サードパーティHDDが使えるようになった
Synologyは2025年、Plusシリーズに厳しいドライブ互換性ポリシーを導入しましたが、2025年10月8日公開のDSM 7.3で方針を変更しました。公式のニュースには次のように記載されています。
"25 model year DiskStation Plus, Value, and J series running DSM 7.3 will support the installation and storage pool creation of non-validated third-party drives."
(2025年モデルの DiskStation Plus・Value・J シリーズは、DSM 7.3上で未検証のサードパーティ製ドライブの取り付けとストレージプール作成をサポートする)
対象は限定されています。DSM 7.3を導入した「2025年モデル」の DiskStation Plus / Value / J シリーズ(DS925+・DS725+・DS425+ など)が対象で、2024年以前のモデルや他シリーズ、DSM 7.2以前のままの機種は含まれません。また記載は「インストールとストレージプールの作成ができる」という内容であり、Synologyが個々のサードパーティ製ドライブの動作を検証・保証したという意味ではありません。
出典:Synology 公式ニュース「DSM 7.3」(2025年10月8日公開)。同ページの脚注には「Creation of M.2 based storage pool and cache still requires drives on the HCL.」とあり、M.2 SSDについては引き続き互換性リスト掲載品が必要です。導入前に、お使いの機種の対応状況を公式の互換性情報でご確認ください。
金額のインパクトは小さくありません。執筆時点でSynology純正 HAT3300 4TBが42,000円前後なのに対し、WD Red Plus 4TBは30,000円前後です。1本あたり約12,000円、2ベイなら約24,000円の差になります。かつて「純正のほうが割安」と言われた時期もありましたが、2026年7月時点では逆転しています。
買わずに時間を稼ぐ3つの手
既存NASが動いていて、増設が「そろそろ」程度なら、次の手で数か月〜1年は稼げることがあります。
- 容量の棚卸し:重複した写真・見返さない動画・古いISOを整理する。数百GB単位で戻ることが珍しくありません
- 空きベイを先に使う:4ベイ機で2本しか使っていないなら、増設は1本で足ります。全交換より費用を抑えられます
- 一時的にクラウドへ退避:ただし月額が発生し続けます。仮に月1,000円なら年1万2,000円で、数年続けばHDD 1本ぶんに届きます。総コストの比較はNASとクラウドの比較を参考にしてください
RAID構成の組み替え(RAID1→RAID5など)は、データを預けたまま構成を変える操作になるため、節約目的で安易に手を出さないでください。実行する場合は、必ず事前に別媒体へバックアップを取り、自己責任で行ってください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
- WD Red Plus 6TBは秋葉原最安で1月から7月で+72.7%、8TBは+52.1%(2026年7月18日調査時点)
- 原因はSSDの高騰とは別。HDD全体の出荷台数は横ばいのまま、データセンター向けに配分が移ったことが統計で確認できる
- 実感としては「値札が上がった」より「安い店から在庫が消えた」。最安表示が在庫切れというケースが多いので、在庫まで確認する
- 2026年内に下がる材料は見当たらないが、「必ず上がり続ける」とも断定できない。需給予測は投資家向けの見通しであり、家庭向け小売価格の保証ではない
- 買うなら8TB以上が容量あたり単価で有利。2TB・4TBは今いちばん割高(予算優先なら4TB×2も選択肢)
- 安いBarraCuda 4TB/8TBはSMR。半額の誘惑には乗らない
- Synologyの2025年モデル(DSM 7.3稼働のPlus・Value・Jシリーズ)はサードパーティHDDに対応。純正との差額は1本あたり約12,000円
次の一手
- 買うと決めた方:NAS用HDDのおすすめ比較で型番・CMR・保証を確認し、NASのHDD容量の選び方で必要本数を確定してください
- まだ待てる方:今日は「容量の棚卸し」と「空きベイの確認」だけで十分です。数か月〜1年は稼げます
- 故障交換の方:CMRとSMRの違いだけ先に確認して、同容量帯のCMR機を手配してください
価格・在庫はいずれも執筆時点(2026年7月25日)に確認したものです。相場の動きが速いため、購入前に必ずご自身で最新価格と在庫をご確認ください。この記事の価格スナップショット節は、月1回を目安に見直します。