本記事の価格データは AKIBA PC Hotline!の相場調査・価格.com・メーカー公式発表にもとづくもので、容量帯の判断は広告報酬の多寡ではなく、公表データと技術的根拠にもとづいて示しています。
2026年10月のHDD相場は、7〜9月の高値より安い商品が出ましたが、値上がり前の水準には戻っていません。WD Red Plus 6TBは価格.comのピーク(7月23日・48,620円)から-11.6%の42,980円(10月は据え置き)、バッファローの外付けHDD 4TBは9月10日の28,880円から-10.9%の25,740円です(下げの大半は9月17日・当サイト調べ)。
それでも約半年前(4月4日)より約3割高い位置です。同じ秋葉原最安どうし(AKIBA PC Hotline!)で、6TBは31,980円→41,980円(9月19日・+31%)、4TBは23,980円→31,080円、8TBは38,000円→48,780円。通販で在庫のある価格はグラフ右端の◇(10月7日)で、10月21日の再確認でも4TB 31,980円・6TB 42,980円・8TB 49,800円です。ネット通販で買うならこの値段が目安です。
詳しく読む:10月の実勢価格/なぜ上がったか/いつ下がるか/何TBを買うか
一方でWD Red Plus 12TB(9月10日比+3.8%・10月13日に値上げ)や外付けHDDの8TB(9月10日比+7.3%)のように上げた商品もあり、「値下がりに転じた」とはまだ言えません(当サイトの判定基準)。原因はSSDの高騰とは別で、AIデータセンター向けに生産の配分が移ったことです。どの製品を買うかはNAS用HDDのおすすめ比較にまとめたので、この記事は「いつ・いくらで買うか」に絞ります。
この記事の結論(2026年10月21日時点)
- 7〜9月の高値より安い商品も出ましたが、値上がり前の水準には戻っておらず、値下がりに転じたとはまだ言えません。WD Red Plus 6TBは10月も据え置きの42,980円。9月10日以降に下げたのはIronWolf 6TBの-4.6%、8TB帯の-1〜2%、WD Red Plus 4TBの-1.6%で、WD Red Plus 12TBは逆に+3.8%。当サイトの値下がりの判定基準(3つ。1つ目は6TBが40,980円を2週間以上下回ること)は、1つ目から未達です(基準と10月の当てはめ)
- 原因はSSD(NANDフラッシュ)の高騰とは別です。AIデータセンター向けの大容量HDDに生産枠が移り、家庭向けの安い在庫から消えました(HDD全体の出荷台数はほぼ横ばいのまま、配分だけが動いた)
- WD Red Plusで買うなら8TBが容量あたり単価の底です(8TBは6,225円/TB、12TBは6,915円/TB、4TBは7,995円/TB)。安いBarraCuda 4TB/8TBはSMR(書き込み方式の一種で、RAIDの再構築に弱い。CMRとSMRの違い)なのでNAS常用は非推奨。今すぐ必要なら8TBの単価と在庫の見方へ、待てるならHDDが高くて買えないときの選択肢で時間を稼げます
▼ 8TBで買うなら WD Red Plus 8TB(WD80EFPX・CMR)=1本49,800円(6,225円/TB・10月21日確認・執筆時点)。故障交換は同容量帯を優先。楽天・Yahoo!は型番の検索結果へ移動するので型番と在庫を確認
HDD相場の価格推移スナップショット(2026年10月)
価格調査日:2026年10月21日(外付けHDD 4TBは10月16日)/この節の数値は月1回を目安に見直しています。以降の節(値上がりの構造・容量の選び方)は時期を問わず読める内容です。
2026年10月の実勢価格(1本あたり)
まず、NAS用HDDとして定番の3シリーズとSynology純正の実勢価格です。いずれも1本あたり・税込の代表値(2026年10月21日に確認)で、在庫状況によって上下します。
| 製品 | 4TB | 6TB | 8TB | 12TB |
|---|---|---|---|---|
| WD Red Plus | 31,980円 | 42,980円 | 49,800円 | 82,980円 |
| Seagate IronWolf | 31,980円 | 41,480円 | 52,280円 | – |
| 東芝N300 | 39,980円(箱入り) | – | – | – |
| Synology HAT3300 | 42,700円 | – | – | – |
4TBの銘柄差は、ほぼ消えたままです。8月2日はIronWolf 27,000円・WD Red Plus 32,500円で5,500円ひらいていましたが、10月21日もWD Red Plus・IronWolfとも31,980円で同額です。「銘柄を変えれば4TBが5,500円安くなる」という状態は戻っていません。6TBはIronWolfが41,480円に下げ、WD Red Plus(42,980円)より1,500円安くなりました。8TBは逆にWD Red Plus 49,800円・IronWolf 52,280円で2,480円差(9月10日は2,080円差)。上の容量帯ほど銘柄差が大きいという関係は続いています。
価格.comの掲載店・パソコン工房・ドスパラ・TSUKUMO等の在庫を当サイトが1件ずつ確認した代表値です。1店だけの最安値ではなく、複数店で在庫を持っている価格帯を採っています。後の節で使うAKIBA PC Hotline!の相場調査は「秋葉原の複数ショップを調べた中の最安値」で、採り方が違うため同じ時期でも数千円の差が出ます。表中の9商品は2026年10月21日に確認しました(本記事の価格タグのうち最も古い確認日は2026年10月16日)。表中の「–」は当サイトが現在価格を追えていない容量帯という意味で、未発売ではありません。
10月21日までの動き:IronWolf 6TBが-4.6%、8TB帯とWD 4TBが-1〜2%、WD 12TBは+3.8%
前回スナップショット(2026年9月10日)から今回までに、どの銘柄がどれだけ動いたかを並べます。左右の列はどちらも同じ採り方(当サイトが在庫を確認した代表値)です。
| 製品 | 2026年9月10日 | 2026年10月21日 | 動き |
|---|---|---|---|
| WD Red Plus 4TB(WD40EFZZ) | 32,500円(9月8日) | 31,980円 | -1.6%(10月1日→7日に下げ) |
| WD Red Plus 6TB(WD60EFPX) | 42,980円 | 42,980円 | 据え置き(9月6日に上げた値のまま) |
| WD Red Plus 8TB(WD80EFPX) | 50,800円 | 49,800円 | -2.0% |
| WD Red Plus 12TB(WD120EFGX) | 79,950円 | 82,980円 | +3.8%(10月13日に上げ・21日に1,000円下げ) |
| IronWolf 4TB(ST4000VN006) | 32,000円 | 31,980円 | ほぼ据え置き(-20円) |
| IronWolf 6TB(ST6000VN006) | 43,500円 | 41,480円 | -4.6%(10月7日・13日の2段階で下げ) |
| IronWolf 8TB(ST8000VN002) | 52,880円 | 52,280円 | -1.1% |
| 東芝N300 4TB(箱入り) | 39,980円 | 39,980円 | 据え置き |
| Synology HAT3300 4TB | 42,700円 | 42,700円 | ほぼ据え置き(在庫のある店は42,600〜42,700円) |
下げたのはIronWolf 6TB(-4.6%)と8TB帯・WD Red Plus 4TB(-1〜2%)、上げたのはWD Red Plus 12TB(+3.8%)で、ほかは据え置きです。WD Red Plus 8TBは価格.comの掲載店のうち5店が在庫ありで49,800円に並び、12TBは82,980円で在庫ありが4店です(10月21日)。秋葉原ショップ最安(9月後半号)ではWD Red Plus 8TBが前回比+1,090円と逆に上げており、採り方を変えると向きが変わる程度の動きです。「HDD全体が下がり始めた」と読める幅ではありません。
外付けHDDは8月に+33〜43%、10月は4TBが下げ・6TBと8TBは上昇
バッファローの据え置き型外付けHDD(HD-SGDA U3シリーズ)は、8月の1か月で+33〜43%上がりました(8月5日→9月1日・当サイト調べ。容量別の値と出典は下記リンク先)。同シリーズはバッファローの8月3日・10月1日の希望小売価格改定の対象外で、店頭の実勢価格の上昇です。10月13〜16日の確認では、9月10日と比べて4TB(25,740円)が下げ、6TB(33,980円)と8TB(46,980円)は上げています。
容量あたり単価では内蔵のNAS用HDDよりまだ安く(8TBで5,872円/TB)、データの一時退避先にはなります。ただし分解して中身をNASに入れる使い方は勧めません(理由はやってはいけない節約)。容量別の値動きの表は外付けHDDの値上がりと、いま買うなら何TBかにまとめています。
ハードディスクの価格推移:1月から9月でどれだけ上がり、いつ止まったか
冒頭のグラフの元データです。秋葉原のショップ最安値を追っている AKIBA PC Hotline!「HDD価格の月次動向レポート」から、WD Red Plusの推移を並べます(過去の日付つきの数値なので、記録として固定しています)。
グラフに使ったそのほかの号(いずれも AKIBA PC Hotline! 相場調査):1月後半/2月前半/2月後半/3月前半/3月後半/4月前半/4月後半/5月前半/6月前半/7月前半。残りの号の出典は、すぐ下の表と8月以降の表に記載しています。
| 調査日 | 2TB | 4TB | 6TB | 8TB | 12TB |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年1月10日 | – | – | 24,200円 | 31,350円 | 54,780円 |
| 2026年4月4日 | – | 23,980円 | 31,980円 | 38,000円 | 54,980円 |
| 2026年5月23日 | – | 23,980円 | 33,980円 | 38,000円 | 59,500円 |
| 2026年6月20日 | – | – | 33,480円 | 43,980円 | 66,980円 |
| 2026年7月18日 | 22,580円 | 29,980円 | 41,800円 | 47,690円 | 69,000円 |
8月以降は、同じ調査の4号分をIronWolf 8TBと東芝N300 4TBも加えて並べます(4〜12TBはWD Red Plus・秋葉原ショップ最安)。
| 調査日 | 4TB | 6TB | 8TB | 12TB | IronWolf 8TB | 東芝N300 4TB |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年8月1日 | 32,800円 | 45,280円 | 47,690円 | 72,980円 | 49,800円 | 29,800円 |
| 2026年8月22日 | 29,980円 | 39,980円 | 47,606円 | 72,980円 | 53,480円 | 34,800円 |
| 2026年9月5日 | 31,080円 | 41,980円 | 47,690円 | 72,980円 | 53,980円 | 36,800円 |
| 2026年9月19日 | 31,080円 | 41,980円 | 48,780円 | 72,980円 | 52,280円 | 43,800円 |
出典:AKIBA PC Hotline! 8月前半号(調査期間 7月25日〜8月1日)/同 8月後半号(8月8日〜22日)/同 9月前半号(8月29日〜9月5日)/同 9月後半号(9月12日〜19日)。調査日は各号の調査期間の最終日です。
7月18日→9月19日でWD Red Plus 6TBは41,800円→41,980円、8TBは47,690円→48,780円。4月から7月までの「月に数千円ずつ上がる」動きは、8月以降は±数千円の上下に変わりました。12TBは4号続けて72,980円です。一方で東芝N300 4TBは29,800円→43,800円と3号続けて上がっています。
1月から7月18日までの上昇率にすると、こうなります。
| 容量 | 起点 | 2026年7月18日 | 上昇率 |
|---|---|---|---|
| 6TB(WD60EFPX) | 24,200円(1月10日) | 41,800円 | +72.7% |
| 8TB(WD80EFPX) | 31,350円(1月10日) | 47,690円 | +52.1% |
| 12TB(WD120EFGX) | 54,780円(1月10日) | 69,000円 | +26.0% |
| 4TB(WD40EFZZ) | 25,980円(1月24日) | 29,980円 | +15.4%(2〜3月は20,980円まで下げてから上昇) |
出典:AKIBA PC Hotline! 相場調査 2026年1月14日公開/同 5月27日公開/同 6月24日公開/同 7月22日公開(調査期間 7月11日〜18日)。4TBは1月前半号に掲載がないため、1月後半号(1月24日・出典は上記)を起点としています。
他社も同じ方向です。Seagate IronWolf 8TB(ST8000VN002)は33,779円(1月10日)から48,736円(7月18日)へ+44.3%。ただしこちらは月ごとに±8,000〜9,000円の上下動を繰り返しており、「毎月じわじわ」ではなく在庫が切れると跳ね、入荷すると戻るという動き方をしています。
東芝N300はさらに急で、18TBが79,800円(7月4日調査)→94,800円(7月18日調査)と2週間で+18.8%。同レポートの7月8日公開号は「一層の品薄化」と表現しており、この号では24TBが品切れでした。
出典:AKIBA PC Hotline! 2026年7月8日公開号(調査期間 6月27日〜7月4日)
「値札が上がった」のではなく「安い店から在庫が消えた」
体感に近いのは、この言い方だと思います。8月2日に4TBクラスの掲載店数と在庫を1件ずつ確認したところ、同じ「WD Red Plus 4TB」でも、買える型番が入れ替わっていました。
| 型番(いずれも4TB) | 2026年8月2日に確認した状況 |
|---|---|
| WD40EFPX(Red Plus・キャッシュ256MB) | 価格.comの掲載が0店。当サイトが確認した範囲(価格.com掲載店・ツクモ・ドスパラ)では在庫が見つからず、主要通販では実質的に入手困難です。ツクモ38,500円・ドスパラ20,080円の表示は残っていますが、どちらも在庫なしのまま据え置かれた値です |
| WD40EFZZ(Red Plus・キャッシュ128MB・CMR・5400rpm) | 掲載20店超で在庫あり。最安の1店が29,300円、複数店で32,500円前後。いま「WD Red Plus 4TB」として買えるのはこちら |
| ST4000VN006(IronWolf) | 掲載13店・うち3店が在庫あり、最安26,980円。4TBでは最も安く手に入ります |
| HDWG740UZSVC(東芝N300・バルク) | パソコン工房29,980円が当日出荷の在庫あり |
| N300A04-HDWG740UZSVC(東芝N300・箱入り) | 掲載が3店まで減り、7月22日29,800円 → 7月28日以降41,800円(+40%) |
価格.comの掲載店数・在庫表示と、各ショップの通販ページを当サイトが2026年8月2日に1件ずつ確認した結果です。在庫は時間単位で動くため、購入時はご自身でもご確認ください。
同じ「WD Red Plus 4TB」でも、型番によって在庫はまったく違います。8月2日時点で価格.comの掲載が0店だったのはWD40EFPX(キャッシュ256MB)で、その型番は8月2日時点で品切れでした(9月10日は再確認していません)。ただしこれは「Red Plusの4TBはもう買えない」という意味ではありません。同じRed Plusシリーズのキャッシュ128MB版・WD40EFZZが20店超で在庫を持っており、買える型番に置き換わっただけです。IronWolf 4TBも、8月2日時点では3店が在庫を持っています。
WD Red PlusはシリーズとしてCMRなので、EFPXとEFZZのどちらでもNAS用途で困ることはありません。ただし型番まで見ないと「同じ商品の価格が乱高下している」ように見えます。20,080円(買えない)と38,500円(買えない)と32,500円(買える)が同じ「WD Red Plus 4TB」として並んでいるのが、いまの検索結果です。
東芝N300 4TBの二極化も同じ現象です。バルク品は29,980円で在庫があるのに、価格.comに登録された箱入りのN300A04は掲載が3店まで減り、41,800円まで上がりました。安い在庫から順に消え、残った在庫の値札だけが見えている——これが「HDDが高い」の中身の一部です。
そして9月10日の再確認でも、その安いほうの在庫は戻っていません。東芝N300 4TBのバルク品(HDWG740UZSVC)はパソコン工房で29,980円と表示されたまま在庫切れが続き、買えるのは箱入りのN300A04(39,980〜42,680円・7店掲載)だけです。二極化していた4TBは、安いほうが落ちたまま1本に戻っています。WD Red Plus 4TBは9月8日時点でWD40EFZZが17店掲載で、在庫のある店の下限は32,480円(ドスパラ)〜32,500円(NTT-X・TSUKUMO)です。IronWolf 4TB(ST4000VN006)は最安31,980円で、OCN・ドスパラが在庫を持っています(TSUKUMOの32,200円は在庫なしの表示です)。掲載0店だったWD40EFPXについては、9月10日も再確認していません。
つまり「最安値」として表示されている数字が、もう買えない店の売り切れ表示であるケースが増えています。価格.comの最安値だけを見て予算を組むと、実際にカートに入れられる価格との差でつまずきかねません。購入前に、その店舗ページで型番と在庫表示まで確認するのが2026年の必須動作です。型番ごとの回転数・保証・実売価格を1つの表にまとめたものはNAS用HDDのおすすめ比較(定番9モデルの早見表)にあります。
なぜ上がっているのか(SSDの高騰とは原因が違う)
ここが記事の核心です。「AIのせい」で終わらせず、何がどう動いたのかを順番に見ます。急ぐ方向けに、先に3行でまとめます。
- AIデータセンターの需要で、ニアラインHDDの納期が52週超まで延びた
- メーカーは工場を増やしておらず、台数ベースの生産能力を増やしていない
- HDD全体の出荷台数は横ばいのまま、配分だけがデータセンター向けへ動いた
なお、SSD(NANDフラッシュ)の高騰とHDDの高騰は、原因も供給構造も別物です。今回の調査ではNAND価格がHDD価格を押し上げたという一次情報は確認できませんでした。SSD側の事情はNAS用HDDとSSDの比較で別途扱っています。
AI向け「ニアラインHDD」の待ち時間が52週超になった
引き金はデータセンターです。調査会社TrendForceは2025年9月15日の発表で、データセンター向けニアラインHDDのリードタイム(納期の待ち時間)について「数週間から52週超に膨れ上がった」と説明しました。あわせて「HDDメーカーはここ数年、生産能力を拡大していない」とも指摘しています。
出典:TrendForce プレスリリース(2025年9月15日)。同リリースにHDDの価格数値は含まれていません(掲載されている価格予測はエンタープライズSSDのものです)。
AIの学習・推論で生まれた大量のデータを安く保存する先として、HDDの需要が跳ね上がった——というのが出発点です。
メーカーは「台数」を増やしていない
重要なのは、メーカーが減産したわけではないという点です。実態は「増やしていない」です。
Western Digitalのアービング・タンCEOは2025年10月31日の四半期決算説明で「we are not adding any unit capacity to our portfolio right now(現時点でポートフォリオに台数ベースの生産能力を追加していない)」と述べたと報じられています。同四半期の出荷容量は204EB(1EB=100万TB)で、前年同期比+23%でした。
出典:Blocks & Files(2025年10月31日)。発言は決算説明会でのもので、当サイトが確認できたのは専門メディア経由の引用です(原典のトランスクリプトは未確認)。
新しい工場を建てるのではなく、1台あたりの容量を上げて需要に応える——というのが業界の基本戦略です。その結果、台数は増えないまま、限られた枠の取り合いになります。
総量は横ばいなのに、配分だけがデータセンターへ動いた
この記事でいちばんお伝えしたい数字です。PC Watchの連載「福田昭のセミコン業界最前線」(2026年4月28日公開)が、テクノ・システム・リサーチと日本HDD協会の資料をもとに次のデータを紹介しています。
| 指標 | 2024年(実績) | 2025年(実績) |
|---|---|---|
| HDD全体の出荷台数 | 1億2,390万台 | 1億2,375万台(ほぼ横ばい) |
| ニアライン(データセンター向け) | 5,846万台 | 6,762万台(+916万台) |
| 3.5型ATA(コンシューマ系) | 3,573万台 | 3,094万台(-479万台) |
| 出荷金額に占めるニアライン比率 | 79.8% | 85.6% |
出典:PC Watch「福田昭のセミコン業界最前線」(2026年4月28日公開)。出典元はテクノ・システム・リサーチ/日本HDD協会の2026年4月セミナー資料。なお、NAS用HDDがこの統計分類のどこに含まれるかは資料からは特定できないため、断定は避けています。
パイ全体は増えていません。増えたのはデータセンター向けの取り分だけで、その分コンシューマ系が減っています。「AIがHDDを食べている」のではなく、「同じ量のHDDの配り先が変わった」というのが数字で見える形です。
では、NAS用HDDはこの配分変化の外側にいられるのか。 WD Red Plus・IronWolf・東芝N300は、ニアラインHDDと同じメーカーの同じ3.5型の製造ラインで、同じプラッタとヘッドを分け合って作られる製品です。だからこそ、前節のWD CEOの「台数ベースの生産能力は追加していない」という発言が効いてきます。統計上どの分類に計上されるかは特定できませんが、枠を奪い合う相手が同じであることは、メーカー自身の説明から言えます。家庭用NASの棚に並ぶHDDが減り、値札が上がるのは、この配分変化の下流で起きている出来事だと考えられます。
生産枠は長期契約で先まで押さえられている
Seagateは2026年1月時点で「ニアラインの生産能力は2026年分がすべて割り当て済みで、2027年上半期分の受注が今後数か月で始まる」と説明しています。大手クラウド事業者との長期契約により2027年までの需要見通しを確保しており、2028年の増加計画についても複数顧客と協議中、としています。
生産枠の説明はTrendForce(2026年1月28日)、売上高は各社の公式リリースによります。出典:TrendForce(2026年1月28日)/Seagate FY26 Q3 決算リリース(2026年4月28日発表)/Western Digital FY26 Q3 決算リリース(2026年4月30日発表)
両社とも2026年4月発表の四半期決算(FY26 Q3)で、売上が前年同期比40%超の増加でした。作れば売れる状態で、なおかつ売り先が先まで決まっている——この状況で、家庭向けの安いモデルに枠が回る理由はありません。
AIだけが理由ではない
「全部AIのせい」と片づけると見落とします。日本経済新聞は2026年6月12日、HDDの大口取引価格が4〜6月期に前四半期比で10%高くなったと報じ、その背景として「中国のPC向けの需要が好調」であることと、「HDDメーカーがデータセンター向けの生産を優先し汎用的な製品が品薄になっている」ことを挙げています。
出典:日本経済新聞(2026年6月12日)(会員限定記事のため、当サイトが確認できたのはリード部分のみです)
加えて、HDDはドル建てで調達される輸入品です。2026年7月下旬の円相場は1ドル160円台で推移しており、円建て価格には逆風になります。ただし「円安が何%押し上げた」と定量的に言える根拠は持っていないため、要因のひとつとして挙げるにとどめます。
で、いつ買えばいいのか
ここからは見通しの話になります。確定していることとあくまで予測であることを分けて読んでください。
確定していること:一本調子の上昇は7月下旬で止まった(値下がりに転じた確証はまだない)
この記事に多く届く検索が「HDDの高騰はいつまで続くのか」です。2026年10月21日時点の当サイトの答えは、次のとおりです。
一本調子の高騰は7月下旬で止まりました。ただし値下がりトレンドに入ったという確証はありません。
- 止まった側の事実:WD Red Plus 6TBはピーク(7月23日・48,620円)比で-11.6%の42,980円。9月10日以降に下げたのはIronWolf 6TBの-4.6%、8TB帯の-1〜2%、WD Red Plus 4TBの-1.6%(いずれも10月21日確認)で、7月中旬までのような毎週の値上がりには戻っていません(ただしWD Red Plus 12TBは9月10日比+3.8%です)
- 止まっていない側の事実:WD Red Plusは9月6日に一斉に上げた値(6TB 42,980円)から戻っていません。秋葉原ショップ最安でも9月後半号は6TB・4TBが前回比±0、8TBは+1,090円。外付けHDDの8TBは量販店の在庫が戻ると同時に+7.3%上げました
- したがって「HDDが値下がりし始めた」と一般化はできません。すぐ下の値下がりの判定基準(3つ)も満たしておらず、「底」と判断できる材料は当サイトにはありません
価格の最終確認:2026年10月21日(本記事の価格タグのうち最も古い確認日は2026年10月16日)。秋葉原ショップ最安はAKIBA PC Hotline! 9月後半号(調査期間9月12日〜19日)。相場の動きが速いので、購入前にご自身で最新価格をご確認ください
前章で見た供給の構造は、7月から何も変わっていません。にもかかわらず上げた銘柄と下げた銘柄が並ぶのは、構造ではなく在庫の巡りで説明できる範囲の動きだからです。7月中旬は「安い店から在庫が消えて最安値が跳ねた」局面、7月下旬は「在庫が戻って最安値が落ち着いた」局面で、8月のIronWolfと東芝N300 4TB、9月のWD Red Plus 12TB(掲載11店→9店と同時に+9.8%)は前者がもう一度起きた形——そう読むのが、当サイトが確認できたデータに最も近い解釈です。だとすれば、次に在庫が薄くなった銘柄からまた跳ねます。
当サイトが「下がった」と判定する基準(予測ではなく、判定の物差しです)
次回以降の月次更新で、当サイトは以下の3つが同時に満たされたときに「値下がりに転じた」と書きます。ご自身で価格.comを見るときの目安にもお使いください。
- WD Red Plus 6TBが40,980円を下回り、それが2週間以上続く(1日だけの最安表示は在庫の巡りで戻ります)
- その価格で在庫を持つ店が3店以上ある(1店だけの安値は、本記事で繰り返し書いたとおり売り切れ表示のことがあります)
- 同じ期間に、IronWolfか東芝N300のどちらかも下げている(1銘柄だけの下げは在庫の巡りで説明できてしまいます)
2026年10月21日時点でも、1つ目が未達です(9月7日以降42,980円のままで、40,980円を上回っています)。そのため当サイトは、この記事で「値下がりに転じた」とは書いていません。
HDDは値下がりし始めた?——3つの判定基準で見ると「まだ」
すぐ上の箱(当サイトが「下がった」と判定する基準)の3つに、10月の数字を当てはめます。
- WD Red Plus 6TBが40,980円を下回って2週間以上:未達です。10月21日も42,980円で、基準より2,000円高い位置にいます
- その価格で在庫を持つ店が3店以上:1つ目が未達なので、判定の対象がありません
- IronWolfか東芝N300も下げている:価格.comの代表値では、IronWolf 6TBが43,500円→41,480円(-4.6%)、8TBが52,880円→52,280円(-1.1%)と下げ、東芝N300 4TBは39,980円で据え置き、WD Red Plus 12TBは逆に+3.8%上げています(秋葉原ショップ最安の9月後半号では、IronWolf 8TBが前回比-1,700円の52,280円、N300 4TBは+7,000円の43,800円)。3つ目にあたる動きは出始めましたが、1つ目の期間がまだ始まっていません
3つの判定基準が同時にそろった状態ではないため、「値下がりに転じた」とは書けません。
9月後半には「Seagateの8TB HDDが12週ぶりに3万円割れ」という報道もありました。これはデスクトップ向けのBarraCuda(ST8000DM004・SMR)が29,990円(前回比-8,510円)になった話です。同じ号のNAS向け8TBはIronWolf 52,280円・WD Red Plus 48,780円で、価格帯が違います。BarraCudaをNASに入れない理由はやってはいけない節約にまとめています。
出典:AKIBA PC Hotline! 9月後半号(調査期間 9月12日〜19日)「Seagateの8TB HDDが12週ぶりに3万円割れ、24TB HDDは複数ショップで79,800円に」
確定していること:メーカー希望小売価格の改定は続いている(9月3日・UGREENのNAS本体で実施)
バッファローは2026年7月23日、105型番の希望小売価格を改定すると発表しました。対象は外付HDD・ポータブルHDD・内蔵/交換用HDD・NAS・Wi-Fiルーターなど。改定日は2026年8月3日、改定率は5.8%〜42.5%です。同社は10月1日にもNASを含む299型番を改定しています。
出典:バッファロー 価格改定のお知らせ(2026年7月23日発表)/同(2026年9月16日発表・10月1日実施)。改定率は同社の公式表記に合わせています。なお同社は改定理由を明記していません。
NAS本体側でも次の日付が出ています。UGREENは公式サイトで、2ベイNAS「NASync DXP2800」の定価を2026年9月3日に65,880円へ改定しました。実売は改定後も二極化しており、10月21日時点で価格.comの在庫ありの価格帯は47,900円前後(9月8日は53,000円、8月31日は50,930円)、一方でUGREEN公式ストアの通常価格は改定後と同じ65,880円です(9月3日確認)。改定後の定価より約1.8万円安い47,900円で在庫を持つ店が、10月21日の確認で4店ありました(この機種の中身はUGREEN NASync DXP2800のレビューにまとめています)。
出典:UGREEN 公式製品ページ(NASync DXP2800)/UGREEN公式 価格改定のお知らせ。改定の告知は2026年8月31日に、改定後の価格(UGREEN公式ストアの通常価格65,880円)は2026年9月3日に、価格.comの在庫あり下限と掲載店数は2026年10月21日に当サイトが確認したものです。
I-O DATAも2026年1月14日付で165型番(改定率2.8%〜54.8%)、7月1日付で98型番の価格を改定しました。1月の改定について同社は「原材料価格、エネルギー、物流などの関連費用の高騰が長期に継続している」ことを理由に挙げ、現価格の維持が困難になったと説明しています。
出典:I-O DATA 価格改定のお知らせ(2025年12月10日発表・2026年1月14日実施)/同社2026年の価格改定一覧
まず、改定が効くのは「そのメーカーの製品を買う人」だけです
バッファローの改定対象は同社の105型番、UGREENの告知は同社のNAS本体です。この記事で扱っているWD・Seagate・東芝の内蔵HDD単体の店頭価格が、これらの日付に連動して動くわけではありません(内蔵HDDは為替と流通在庫で日々動きます)。LinkStation・TeraStationや外付HDD、UGREENのNASを検討中の方にだけ効く日付として扱ってください。
そのうえで、希望小売価格・定価の改定=実売価格が必ず同じだけ上がる、でもありません
改定されるのはメーカー希望小売価格や定価です。店頭の実売価格は在庫や競合状況で決まるため、当日に一斉に上がるとは限りません。「締切があるから今すぐ買え」ではなく、すでに買うと決めている人にとっては、日付が判明している数少ない材料として扱うのが妥当です。
予測であること:不足は2027〜2028年まで続くという見立て
米モルガン・スタンレーは2026年6月15日付のレポートで、HDDの需給逼迫が「少なくとも2028年まで」続くと予測しています。報道によれば、需要が年40〜50%のペース(台数ではなく容量ベース)で伸びるのに対し供給の伸びは30〜35%にとどまり、この差が不足の要因だとしています。供給不足の規模(エクサバイト数)は報道によって数値が食い違うため、当サイトでは採用しません。
この予測の読み違いに注意
これは証券会社が投資家向けに出した、データセンター向けHDDの需給見通しです。家庭用NAS向けHDDの店頭価格が2028年まで下がらない、という予測ではありません。当サイトも「2028年まで高いままです」とは書けません。
出典:報道経由(Yahoo Finance / Investing.com 2026年6月16日)。原レポートは非公開で、当サイトは直接確認していません。
供給側の増強も動いてはいます。TrendForceが2026年7月22日に報じた内容は、次の3点です。
- レゾナック:磁気記録メディアの年産を1.6億枚から2.1億枚へ増強中
- HOYA:ベトナムに約500億円を投じてガラス基板の新工場を建設予定(2028年稼働予定)
- TDK:HDDヘッドの生産能力の拡大を表明
出典:TrendForce(2026年7月22日)。各社の一次リリースは未確認です。
読み方はシンプルです。部材の増強は始まっているが、効いてくるのは数年先。2026年内に供給が緩む材料にはなりません。
結論:状況で答えが変わります
| あなたの状況 | 判断の目安 | 次にやること |
|---|---|---|
| 今すぐ容量が必要(空き容量が逼迫・NAS導入予定が決まっている) | 待つ根拠が弱いので、買うなら容量帯を間違えないことに集中する | 下の買うなら、いまは8TBが合理的で容量帯を決め、型番はNAS用HDDのおすすめ比較で確認 |
| 既存NASが問題なく動いていて、増設は「そろそろ」程度 | 急ぐ必要はない。まず棚卸しと空きベイの確認で時間を稼ぐ | 買わずに時間を稼ぐ3つの手を実行し、この記事をブックマークして次の相場更新(月1回)で再判断。セール待ちなら、過去の値下げ幅はブラックフライデー・年末セールの記事へ |
| 故障したHDDの交換 | 選択の余地なし。RAIDが縮退している(1本壊れて予備がない)状態は放置しない | 同容量帯・CMRの1本を最短で確保。在庫のある型番はNAS用HDDのおすすめ比較、記録方式の確認はCMRとSMRの違いへ |
型番・CMR・保証・実売価格の一覧は型番別のおすすめ比較にあります。
RAIDが縮退したまま運用を続けると、リビルド(再構築)前にもう1本が壊れた時点でデータを失います。値上がりを理由に交換を先延ばしにする判断だけは、金額に見合いません。
「今が底です」とも「まだ天井ではありません」とも、当サイトは言えません。9月上旬にWD Red Plus 12TBが+9.8%上がったのも事実、同じ9日間にIronWolf 8TBが-5.2%下げたのも事実で、どちらか一方だけを取り出せば都合のよい結論はいくらでも作れてしまいます。相場を当てにいくより、上の分岐で「自分がどの状況か」を決めるほうが確実です。
買うなら、いまは8TBが合理的
値上がりを前提にすると、「どの容量を買うか」の答えが変わります。
容量あたり単価で見ると、4TBは割高で8TBより上はほぼ安くならない(7月18日と10月で比べる)
2026年7月18日時点の秋葉原最安値から、当サイトで容量あたり単価(円/TB)を算出しました(1円未満四捨五入)。
| 容量 | WD Red Plus | Seagate IronWolf | 東芝N300 |
|---|---|---|---|
| 2TB | 11,290円/TB | – | – |
| 4TB | 7,495円/TB | 6,745円/TB | – |
| 6TB | 6,967円/TB | 6,467円/TB | – |
| 8TB | 5,961円/TB | 6,092円/TB | 5,475円/TB |
| 12TB | 5,750円/TB | – | 5,415円/TB |
| 18TB | – | – | 5,267円/TB |
上表はAKIBA PC Hotline! 2026年7月22日公開号(調査期間 7月11日〜18日)の最安値をもとに当サイトが計算した値で、出典記事に掲載されている数値ではありません。銘柄どうしの単価の優劣は調査時点で入れ替わります(前掲の実勢表とは調査日も出所も違います)。ここで判断していただきたいのは銘柄ではなく容量帯です。
読み取れることは3つです。
1. 2TB・4TBが極端に割高になった(7月18日時点)。 2TBは8TBの約1.9倍の単価です。この「4TBは割高」という関係は、10月の実勢でも成立しています(すぐ下の再計算をご覧ください)。
2. 7月18日時点では、8TB以上でおおむね5,000〜6,000円台/TBのプラトーに入っていた。 8TB→12TB→18TBの単価改善はゆるやかです。つまり8TBまで上げれば、そこから先の「もっと大きく買う」お得感は薄いといえます。
3. 6TBが中途半端な位置に落ちた。 かつては4TBとの価格差が小さくお買い得でしたが、7月18日時点では6TB(6,967円/TB)と8TB(5,961円/TB)の差が開いています。予算が届くなら8TBです。
参考までに、2026年1月10日のWD Red Plus 8TBは31,350円=3,919円/TBでした。半年で単価が5割増しです。「HDDの容量単価は毎年下がる」という前提は、少なくとも今は成り立っていません。
10月の実勢で計算し直すと、WD Red Plusでは単価の底は8TBです(12TBは8TBより高いまま)
上の表は7月18日の秋葉原最安値がもとです。その後に相場が動いたので、前掲の10月の実勢価格(複数店で買える代表値)でも計算し直しました。いずれも10月21日の値です。
| 容量 | WD Red Plus | Seagate IronWolf | 東芝N300 | Synology HAT3300 |
|---|---|---|---|---|
| 4TB | 7,995円/TB | 7,995円/TB | 9,995円/TB | 10,675円/TB |
| 6TB | 7,163円/TB | 6,913円/TB | – | – |
| 8TB | 6,225円/TB | 6,535円/TB | – | – |
| 12TB | 6,915円/TB | – | – | – |
前掲の実勢表の代表値を容量で割った、当サイトの計算値です(1円未満四捨五入)。最安値ベースの上表とは前提が違うため、数値もずれます。確認日は前掲の実勢表と同じです。
この表の範囲で単価がいちばん安いのは8TBです(WD Red Plusで6,225円/TB)。9月10日の計算から順位は変わっていません。表に入れていないSeagate IronWolf 12TBも6,500円/TBでこれより高く、容量別の1TB単価の一覧はHDDは1TBあたり何円?にまとめています。
WD Red Plus 12TBは6,915円/TB=8TBより690円/TB高く、9月10日の313円/TB差から開きました。8TBが1本1,000円下げたうえ、12TBが10月13日に上がったためです。WD Red Plusで単価だけを理由に12TB(1本82,980円)まで上げる根拠はありません。7月18日の最安値ベースで見えていた「8TB以上でプラトー」は、10月の実勢では成立しません。
8TBの銘柄差は、WD Red Plus(6,225円/TB)とIronWolf(6,535円/TB)で310円/TB=1本2,480円です。9月10日の260円/TB(1本2,080円)からわずかに開きました。8TBで単価を優先するならWD Red Plusが安い側ですが、その差はIronWolfに付くRescueデータ復旧サービスをどう評価するかで判断が分かれる幅です。
4TBが割高という関係は10月も変わりません。4TBのWDとIronWolfは同額なのに対し、WD Red Plusで見ると4TB→6TBの単価改善は832円/TB、6TB→8TBは938円/TBあります。6TBはIronWolfが250円/TB安いものの、効くのは銘柄を選ぶことより、容量を上げるほうです。
お店で見つけた価格で比べたいときは、HDD 1TB単価計算機に容量と価格を入れると1TBあたりの値段がその場で出ます。
それでも当サイトが8TBを勧める理由は単価だけではありません。次に説明する「増設までの年数」がもう半分の理由です。型番ごとの比較は8TB HDDのおすすめ比較へ。
在庫の動きが速い時期です。価格を見るときは、最安表示だけでなくその店舗の在庫表示までご確認ください(前述のとおり、最安表示が売り切れというケースが増えています)。
▼ 8TB帯のもう一方:Seagate IronWolf 8TB(ST8000VN002・CMR)— 2026年10月21日時点も52,280円で、WD Red Plus 8TB(49,800円)より2,480円高い側です(9月10日は2,080円差)。Rescueデータ復旧サービスの有無まで含めて比べたい方向けの1本として、リンク先の価格・在庫をご確認ください
8TBを選ぶと何が変わるか
8TBを選ぶ実利は、次の増設までの年数を稼げることです。
家族の写真・動画を貯める用途なら、年間の増加ペースは数百GB〜1TB程度が一般的です。今1TB使っている2ベイNAS(RAID1)で試算すると、こうなります。
| 構成 | 実効容量 | 空き | 年+500GBなら | 年+1TBなら |
|---|---|---|---|---|
| 4TB×2(RAID1) | 約4TB | 約3TB | 約6年 | 約3年 |
| 8TB×2(RAID1) | 約8TB | 約7TB | 約14年 | 約7年 |
現在の使用量1TB・RAID1・実効容量から単純計算した当サイトの試算です。実際はスナップショットやゴミ箱、空き容量の余裕(8割で運用するのが安全)で前後します。
差額35,640円(WD Red Plusで比較)で、次にHDDを買う日を4年前後うしろにずらせます。この差額は9月10日時点の36,600円から960円縮みました。8TBが1本1,000円下げ(10月1日まで・2本で-2,000円)、4TBも520円下げた(10月7日・2本で+1,040円の戻し)差し引きです。4TBで組むと2〜3年後に足りなくなり、その時点の相場で買い直しになります。今の相場が続いた場合、その買い直しは今回より高くつく可能性があります。
一方で、8TB×2本は初期費用が99,600円前後になります。これから本体ごと新調するなら、2ベイのエントリー機(Synology DS225+で64,600円前後)と合わせて約16.4万円が目安になります。容量の見積もり方はNASのHDD容量の選び方にまとめてあります。使用量と年数から、必要な実効容量・構成・HDD代の目安をNAS容量計算機で出せます。
なお、東芝N300は7月18日調査の8TB以上では容量あたり単価が最も良い一方、同じ調査で最も値動きが激しかった銘柄でもあります(18TB・22TBはいずれも2週間で+15,000円)。4TBは安いバルク品が在庫切れのまま(9月10日確認)で、箱入りが9,995円/TB=サードパーティ製の4TBではいちばん高い位置が続いています(純正のHAT3300 4TBは10,675円/TBでさらに上です)。単価の良さと値動きの大きさはセットで考えてください。
予算優先なら4TB×2という選択も残る
「8TBは予算的に無理」という場合、4TB×2という構成は今も現実的です。円/TBでは割高ですが、初期費用の絶対額は8TB×2より約35,640円低くなります。現在の使用量が1TB前後で、増え方が年0.5TB程度なら、上の試算どおり約6年もつ計算です。4TBで組んで次の値動きを見るのも合理的な判断です。型番ごとの比較は4TB HDDのおすすめ比較へ。
ただし、銘柄を選んで浮く金額はほとんど残っていません。4TBはIronWolf(31,980円)とWD Red Plus(31,980円)が10月21日の確認でも同額で、差は2本でも0円です。8月2日は同じ比較で11,000円ありました。IronWolfが8月に+18.5%上がり、WDも10月に520円下げた結果、4TBは価格でなく在庫と型番で選ぶ容量帯になりました(IronWolfの3.5型は、Seagate公式の一覧に載る容量がすべてCMRと記載されており、NAS用途の条件は満たしています)。
4TBは型番によって在庫の有無が分かれる容量帯でもあります。前述のとおり、WD Red Plus 4TBはWD40EFPX(キャッシュ256MB)が8月2日時点で価格.comの掲載0店=実質品切れで、9月8日に17店の掲載を確認できたのはWD40EFZZ(キャッシュ128MB)のほうです。在庫表示のある店の価格を、型番まで見てご判断ください。
容量帯が決まったら、次は型番です。同じ「8TB」でも記録方式(CMR/SMR)・保証年数・想定ワークロードが違い、NAS常用に向かない型番が混ざっています。買う型番がCMRかどうかは型番ごとのCMR一覧で公式資料の記載を確認できます。選び方と条件ごとの比較はNAS用HDDのおすすめ比較にまとめています。この記事では「いくらで、どの容量帯を」に絞りました。
やってはいけない節約
高いときほど、危ない近道が魅力的に見えます。3つだけ止めておきます。
安いBarraCudaは、NASに入れてはいけない
2026年7月8日公開のアキバ相場調査では、Seagate BarraCuda 8TBが25,980円で特売されていました(6月27日の値。7月4日は特価終了で33,980円)。同じ号のWD Red Plus 8TBは43,980円(7月4日)ですから、約4割安です。
出典:AKIBA PC Hotline! 2026年7月8日公開号(調査期間 6月27日〜7月4日)
しかしSeagate公式のCMR/SMR一覧によれば、BarraCudaの4TBと8TBはSMRです(12TB以上はCMR)。SMRはデータを瓦のように重ねて書き込む方式で、大量書き込みやRAIDの再構築時に速度が大きく落ちることがあります。
出典:Seagate 公式「CMR/SMR一覧」。同一覧のIronWolfの行は、CMR欄に2/4/6/8/10/12/16TBが並びSMR欄はN/Aです(3TB・18TBは同一覧に記載がありません)。
RAIDのリビルド中に想定外の時間がかかると、その間にもう1本が壊れるリスクに晒され続けます。1本あたり約1.8万円の節約と引き換えにするには割に合いません。詳しくはCMRとSMRの違いとBarraCudaとIronWolfの違いへ。
中古・リファービッシュ品は「別の商品」だと理解して買う
Seagateは公式にリファービッシュ品(Recertified Drives)を扱っています。ただし公式ページには次のように書かれています。
- 保証は6か月(NAS用HDDの新品は3年保証が一般的)
- 製品は「used, reconditioned, or repurposed(使用済み・再調整・再利用)」されたもの
- 新品向けの仕様書と保証はリファービッシュ品には適用されない
出典:Seagate 公式 Recertified Drives(米国サイト)。日本国内で正規流通しているかは当サイトでは確認できていません。
メーカー認定品でこの条件です。フリマやオークションの個人出品品は、通電時間も使用環境も分かりません。RAIDを組むためにまとめ買いした中古が同時期に壊れるという事態は、バックアップ設計ごと崩します。
参考値として、Backblazeの2026年第1四半期のドライブ統計(2026年7月9日公開・対象341,263台)を挙げます。四半期の年換算故障率は1.24%、生涯故障率は1.39%と報告されています。これは新品を含むデータセンター運用の数値で、中古の故障率を示すものではありません。
出典:Backblaze Drive Stats for Q1 2026(2026年7月9日公開)
外付けHDDの分解(殻割り)は当サイトでは推奨しません
外付けHDDを分解して中身のHDDを取り出す方法がネットで紹介されていますが、当サイトでは勧めません。メーカー保証を失いますし、中身の型番・記録方式が保証されないためです。加えて外付け製品に入るドライブは、NASのような24時間連続稼働を前提にした仕様とは限りません。高騰時ほど「安く見える外付け」に手が伸びますが、NASの中身は数年動き続ける部品ですから、ここは節約しどころではありません。その外付けHDD自体も8月に+33〜43%上がっており、分解のリスクを負って浮く金額は8月上旬より小さくなりました。
現実的に効く節約と、買わずに時間を稼ぐ方法
止める話ばかりでは片手落ちなので、実際に効く手を挙げます。
Synologyの2025年モデルは、サードパーティHDDが使えるようになった
Synologyは2025年、Plusシリーズに厳しいドライブ互換性ポリシーを導入しましたが、2025年10月8日公開のDSM 7.3で方針を変更しました。公式のニュースには次のように記載されています。
"25 model year DiskStation Plus, Value, and J series running DSM 7.3 will support the installation and storage pool creation of non-validated third-party drives."
(2025年モデルの DiskStation Plus・Value・J シリーズは、DSM 7.3上で未検証のサードパーティ製ドライブの取り付けとストレージプール作成をサポートする)
対象は限定されています。DSM 7.3を導入した「2025年モデル」の DiskStation Plus / Value / J シリーズ(DS925+・DS725+・DS425+ など)が対象で、2024年以前のモデルや他シリーズ、DSM 7.2以前のままの機種は含まれません。また記載は「インストールとストレージプールの作成ができる」という内容であり、Synologyが個々のサードパーティ製ドライブの動作を検証・保証したという意味ではありません。
出典:Synology 公式ニュース「DSM 7.3」(2025年10月8日公開)。同ページの脚注には「Creation of M.2 based storage pool and cache still requires drives on the HCL.」とあり、M.2 SSDについては引き続き互換性リスト掲載品が必要です。導入前に、お使いの機種の対応状況を公式の互換性情報でご確認ください。
金額のインパクトはあります。10月21日時点でSynology純正 HAT3300 4TBが42,700円前後なのに対し、WD Red Plus 4TB(WD40EFZZ)は31,980円前後です。1本あたり約10,720円、2ベイなら約21,440円の差になります。
この差は、いったん縮んでから8月に再び開きました。当サイトの確認では1本あたり7月25日 約12,000円 → 8月2日 8,500円 → 9月1日 10,636円 → 9月10日 10,200円 → 10月1日 10,100円 → 10月7日 10,620円 → 10月21日 10,720円という動きです。8月2日にいったん詰まったのは純正のHAT3300が下げたため(価格.com最安で47,200円→39,980円)でしたが、そのHAT3300が8月に反転して42,700円へ戻り、10月1日の確認でも在庫のある店は42,500〜42,700円でした(9月1日に採った43,136円は価格.com掲載店以外の1店の値で、価格.com掲載店の42,700円は8月11日から9月10日まで同値でした)。WD Red Plus 4TB側は10月7日に31,980円へ520円下げました。純正を選べばSynologyの検証済みドライブとして扱われ、トラブル時の窓口が一本化されるという利点があります。2ベイで21,440円の差をどう見るかは、その安心をどう評価するか次第です。
一方、WD Red Plusと同額の4TBのIronWolf(31,980円)と比べても、差は1本あたり10,720円です。8月2日は「銘柄しだいで8,500円にも14,000円にもなる」状態でしたが、10月はWDでもIronWolfでも10,720円で同じです。サードパーティ側の銘柄選びより、純正を選ぶかどうかのほうが金額を左右します。
買わずに時間を稼ぐ3つの手
既存NASが動いていて、増設が「そろそろ」程度なら、次の手で数か月〜1年は稼げることがあります。
- 容量の棚卸し:重複した写真・見返さない動画・古いISOを整理する。数百GB単位で戻ることが珍しくありません
- 空きベイを先に使う:4ベイ機で2本しか使っていないなら、増設は1本で足ります。全交換より費用を抑えられます
- 一時的にクラウドへ退避:ただし月額が発生し続けます。仮に月1,000円なら年1万2,000円で、数年続けばHDD 1本ぶんに届きます。総コストの比較はNASとクラウドの比較を参考にしてください
棚卸しをどう進めるかは別記事にまとめました。Synology公式ツールでの洗い出し・外付けへの一時退避・予兆監視で買う日を自分で決める方法まで、HDDが高くて買えないときの選択肢で手順にしています。
RAID構成の組み替え(RAID1→RAID5など)は、データを預けたまま構成を変える操作になるため、節約目的で安易に手を出さないでください。実行する場合は、必ず事前に別媒体へバックアップを取り、自己責任で行ってください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
- 今の水準は約半年前の約3割高です。秋葉原最安でWD Red Plus 6TBは4月4日の31,980円→9月19日の41,980円(+31%)、4TB・8TBも約3割高い位置です。一本調子の高騰は7月下旬で止まり、その後は上下しながら横ばいです
- 値下がりに転じた確証はありません。10月21日の代表値で6TBは42,980円(ピーク比-11.6%)、9月10日以降に動いたのはIronWolf 6TBの-4.6%、8TB帯の-1〜2%、WD Red Plus 4TBの-1.6%、WD Red Plus 12TBの+3.8%で、当サイトの値下がりの判定基準(3つ。6TBが40,980円を2週間以上下回る、など)は1つ目から未達です(基準と10月の当てはめ)。原因はSSDの高騰とは別で、データセンター向けへの生産配分の移動です
- WD Red Plusで買うなら8TBが容量あたり単価の底です(8TBで6,225円/TB・12TBは6,915円/TB)。予算優先なら4TB×2も選択肢です。安いBarraCuda 4TB/8TBはSMRなので、約4割安でもNASには入れません
- 外付けHDD(バッファロー据え置き型)も8月の1か月で+33〜43%上がりました。内蔵を避けて外付けへ、という逃げ道も8月上旬より高いままです(容量別の表)
次の一手
- 買うと決めた方:NAS用HDDのおすすめ比較で型番・CMR・保証を確認し、NASのHDD容量の選び方で必要本数を確定してください
- まだ待てる方:今日は「容量の棚卸し」と「空きベイの確認」だけで十分です。数か月〜1年は稼げます
- 故障交換の方:CMRとSMRの違いだけ先に確認して、同容量帯のCMR機を手配してください
価格・在庫はいずれも執筆時点(2026年10月21日・外付けHDD 4TBは10月16日)に確認したものです。相場の動きが速いため、購入前に必ずご自身で最新価格と在庫をご確認ください。この記事の価格スナップショット節は、月1回を目安に見直します。
更新履歴
- 2026年9月10日:バッファローの外付けHDD 8TB(HD-SGDA8U3-B)について、当サイトが9月1日に引用した「在庫を限定しております」の表記は、9月10日の再確認では見つけられませんでした。同日に製品ページで確認できた「この商品は特定販売店向けです」の記載へ差し替えています。
- 2026年8月2日:WD Red Plus 4TBとIronWolf 4TBの在庫について、7月25日の記述を訂正しました。前回は「WD Red Plus 4TBは価格.comの掲載が2店のみで、どちらも在庫なし」「IronWolf 4TBは在庫切れ」と書きましたが、掲載2店・在庫なしはWD40EFPX(キャッシュ256MB)についての話で(7月25日時点。8月2日は掲載0店)、同じRed Plusシリーズのキャッシュ128MB版・WD40EFZZは20店超が在庫を持っていました。IronWolf 4TBも8月2日時点で3店が在庫を持っています。
▼ 予算優先なら4TB×2:WD Red Plus 4TB(WD40EFZZ・CMR・WDがNAS用途を明記)— 2026年10月21日時点で31,980円(同日の確認で価格.comの掲載は24店、うち在庫のある3店が同額)。本文のとおりIronWolf 4TBと同額なので、在庫のある型番を選んでください。最安表示が売り切れ店のことがあるため、リンク先で在庫表示までご確認ください