本記事の比較・おすすめは、広告報酬の多寡ではなく、公表スペックと技術的根拠にもとづいて選んでいます。当サイトはTeraStationをはじめとする法人向けNASを保有していないため、この記事の機種情報はすべてメーカー公式ページ・データシートの記載です。
スタッフ6〜10人の事務所で、総務と兼任でITを任されている。共有フォルダをNASにまとめたいが、稟議には「何を・いくらで・どこまで守れるか」を書かなければならない。この記事は、そのまま稟議の下書きに使えるように構成表・ランサムウェア対策の層・保証とサポートの項目を公式仕様で並べます。
この記事の結論
- 1〜2人で、故障で半日止まっても待てるなら家庭用で足ります。3人以上で平日の日中に止められないなら、保証3年・ホットスワップ(電源を入れたままHDDを交換できる)対応のPlusクラスが最低線です。DS225+はファイル同期(Synology Drive)が10ユーザーまでで、10人ちょうどだと余裕がありません。増える見込みがあるならDS925+(Drive 80ユーザー・4ベイ)です
- 総額の目安(NAS+HDD+バックアップ用外付けHDD)は、最小構成211,180円、推奨構成455,060円です(UPSは別。構成表)
- NASを1台買ってもランサムウェア対策は終わりません。スナップショット・外部へのバックアップ・ネットから外したコピー・アカウント管理の4層で備えます(4つの層)
▼ 6〜8人で共有データが8TBに収まるなら、最小構成の本体:Synology DS225+(2ベイ・保証3年・ホットスワップ対応・2.5GbE×1+1GbE×1)。RAID 1で1台が壊れても仕事を止めずにHDDを差し替えられます— 価格と在庫はリンク先でご確認ください
6〜10人の事務所の構成案——最小・推奨・ランサム重視の3パターン
稟議で問われるのは「本体だけでいくらか」ではなく「止まらず・戻せる一式でいくらか」です。共有データが8TBまで(バックアップ用の外付けHDD 1台に収まる量)の前提で、3つの構成を並べます。
| 項目 | 最小(6〜8人) | 推奨(〜10人・増える見込み) | ランサム重視 |
|---|---|---|---|
| NAS本体 | DS225+(2ベイ)64,600円 | DS925+(4ベイ)161,900円 | 推奨構成+別拠点にDS225+ |
| 予算優先の小さな事務所なら | - | DS925neo+(4ベイ)118,600円(合計411,760円) | - |
| HDDとRAID | WD Red Plus 8TB×2・RAID 1(使える容量 約8TB) | WD Red Plus 8TB×4・RAID 6(約16TB・2台の故障まで耐える) | 推奨構成+8TB×2(別拠点・RAID 1) |
| Synology Driveの上限 | 10ユーザー | 80ユーザー | 80ユーザー |
| バックアップ先 | 外付けHDD 8TB×1(Hyper Backup) | 外付けHDD 8TB×2を交互に使い、1台はネットから外して保管 | 推奨構成の2台+別拠点のNAS |
| UPS | 400VA/240WクラスのUPS×1 | UPS×1(容量はNAS+スイッチ類の消費電力から決める) | 拠点ごとにUPS×1 |
| 保証 | 本体3年(EW201で5年)・HDD 3年 | 本体3年(EW201で5年)・HDD 3年 | 同左 |
| 合計(UPSを除く) | 211,180円 | 455,060円 | 619,260円 |
HDDはWD Red Plus 8TB 49,800円、外付けHDDはバッファロー 8TB 46,980円で計算した税込の実売目安です(執筆時点・最も古い確認日は2026年10月13日)。Synology Driveの上限・RAIDの種類・保証はDS225+・DS925+の公式データシート、HDDの保証はNAS用HDDのおすすめの表と同じ値です。
表でいちばん効くのはSynology Driveの上限です。Driveは各PCのフォルダとNASを自動で同期するアプリで(外出先のノートPCにも最新版が残る)、全員で使うと10人目で上限に届きます。共有フォルダ(SMB)として開くだけならDriveは不要で、DS225+もローカルユーザーを512まで作れます。
推奨構成の外付けHDD 2台は、1台を常につないで毎日バックアップし、もう1台はNASから外して保管し、週1回入れ替えます。つないだままの1台はNASと一緒に暗号化されうるので、攻撃を受けても戻せるのは外してある側=最大で入れ替え間隔ぶん前の状態です。この差は稟議の「残るリスク」に書きます。
4ベイには標準メモリをnon-ECCにしたDS925neo+もあり、公式仕様の主な違いは標準メモリがECC(メモリ上の1ビットの誤りを自動で訂正する仕組み)かどうかで(ほかに対応オプションメモリと、Hyper-Vの対応OSがWindows Server 2025のみという記載差)、本体は43,300円安くなります。24時間動かす共有フォルダに業務データを置く前提のため、この記事の推奨構成はECC標準のDS925+です。neo+は、予算を優先する小さな事務所向けの選択肢として表に並べています。neo+の後からのECC化はメモリの入れ替えになります(neo+と従来Plusの違い)。
DS925+の代わりに2ベイのDS725+を選ぶ手もありますが、本体価格の差は10,900円で、DS725+はRAID 5/6に拡張ユニットが要ります。QNAPならTS-264(84,800円・保証3年・2.5GbE×2)が最小構成の位置に入ります(2社の比較はSynologyとQNAPの比較)。
▼ 10人前後で人数が増える見込みがある事務所の推奨機:Synology DS925+(4ベイ・RAID 5/6・保証3年・Synology Drive 80ユーザー・本体のみでHDDは別に4本)。RAID 6なら2台目の故障まで耐え、ホットスワップで共有フォルダを止めずに交換できます— 価格と在庫はリンク先でご確認ください
LinkStationとTeraStationの違い——家庭用と法人向けを分ける7項目
メーカーは「何人まで」という形では線を引いていません。公式仕様表で差が付くのは次の7項目です。
| 境目になる項目 | 家庭用ライン | 法人向け・上位ライン |
|---|---|---|
| 保証年数 | LinkStation LS720D:1年/Synology DS223j:2年/QNAP TS-233:2年 | TeraStation TS3230DN・TS3430DN:3年間(本体およびハードディスク)/Synology DS225+・DS725+:3年(EW201で5年に延長可)/QNAP TS-264:3年 |
| ホットスワップ | LS720D:公式に「電源を入れたままドライブ交換ができるホットスワップには対応しておりません」と明記/DS223j:非対応 | TS3230DN・TS3430DN:○(電源ON時のHDD交換が可能)/DS225+・DS725+:対応 |
| RAID 5/6 | LinkStationは現行5シリーズすべて最大2ベイで、RAID 1/0のみ/DS223j・DS225+はSHR・Basic・JBOD・RAID 0/1(5/6なし) | TS3430DN(4ベイ):6/5/10/1/0(出荷時RAID 6)/Synology DS925+:5/6/10対応 |
| Active Directory連携 | LS720D:仕様表に項目なし(FAQ 15533では○) | LinkStation for SOHO LS720DN:○/TS3230DN:○/TS3430DN:○ |
| UPS連携 | LS720Dは「UPS接続時はUSB端子を使用」の記載のみ | TS3230DN・TS3430DN:○(複数のNASを1台のUPSで安全にシャットダウン可能) |
| 同時に使う人数の目安 | DS223j:ローカルユーザー256・Synology Drive 5ユーザー | DS225+:ローカルユーザー512・Synology Drive 10ユーザー/TS3430DN:24時間連続テストで45台のPCが同時に安定稼働と公表 |
| 保守・データ復旧サービス | 家庭向けLinkStationはバッファローの法人向け延長保守パックの対象に入っていない | 延長保守パックの対象=TS3230DN・TS3430DNを含むTeraStation主要シリーズ(データ復旧付きはOP-TSDL-1YD等)・LinkStation for SOHO(専用パックOP-LSEN-2YD等) |
出典(すべて2026年9月20日確認):LS720D0802/LS720DN0402B/TS3230DN0402/TS3430DN3204/LinkStation個人向けカテゴリ/法人向けNAS用 延長保守パック/Synology DS223j・DS225+・DS925+/QNAP TS-233・TS-264。「仕様表に項目なし」は、公式の仕様表に掲載がない事実のみを指します。
保証年数とホットスワップが、いちばん実務に響く
LinkStationの1年とTeraStationの3年は、2年目・3年目の故障が自費修理になるかどうかの差です(TeraStationは「本体およびハードディスク」が対象)。
ホットスワップに対応しない機種では、HDD交換のたびに電源を落とし、その間は全員の共有フォルダが見えません。当サイトがDS223jを分解したときも、着脱式トレイはなく、HDDを基板のSATAコネクタへ直結する構造でした(DS223jのHDD交換手順に実機写真があります)。6〜10人が平日の日中に使う事務所では、止める判断そのものがしにくくなります。
TeraStationへ上げる条件
バッファロー製品で次のどれかに当てはまるなら、家庭向けのLinkStationでは要件を満たせません。入口はTS3230DN(2ベイ)・TS3430DN(4ベイ)です。
- Windows ADのドメイン参加を、仕様表に明記のある機種で行いたい(家庭向けもFAQ 15533の機能比較表では○)
- 複数台のNASを1台のUPSでまとめてシャットダウンさせたい
- データ復旧 年1回無償が付く延長保守パック(例: デリバリー保守のOP-TSDL-1YD)を付けたい。センドバック2年延長のパック(OP-TSEN-2YD)は購入から60日以内の加入が必要で、公式ページには「データの復旧を保証するものではありません」と注記があります
当サイトはTeraStationを保有しておらず、実売価格も調べていないため、この記事では価格と購入リンクを掲載していません。現行の型番と保守メニューはバッファロー公式の法人向けNASページでご確認ください。RAIDレベルの選び方はRAIDレベルの比較へ。
出典:バッファロー「TeraStationのセキュリティー機能を強化」(2024年9月25日)/TS3030シリーズ発売(2024年8月29日)/FAQ 15533(2026年9月20日確認)。
ランサムウェア対策は4つの層で——それぞれ防げないこと
どれか1つで完結する対策はありません。層ごとに「何から守れて、何は守れないか」を表にすると、稟議の「残るリスク」がそのまま書けます。
| 層 | 守れること | 守れないこと |
|---|---|---|
| ① スナップショット | 暗号化・誤削除されたファイルを、前の時点の版へ戻す。イミュータブル(変更不可)にすると、保護期間中はスナップショットを削除できない | NAS本体の故障・盗難・火災(同じ筐体の中にあるため) |
| ② 外部へのバックアップ(Hyper Backup・複数の版を残す) | NAS本体が壊れても、外付けHDDや別のNASから戻せる | つなぎっぱなしのバックアップ先は、NASと一緒に暗号化されうる |
| ③ ネットから外したコピー・別拠点のコピー | ネット経由の攻撃・事務所の火災や水害 | 入れ替え間隔より新しい変更は戻らない |
| ④ アカウント管理 | 侵入そのものを減らす(2段階認証・日常用と管理者の分離・退職者アカウントの無効化・NASをインターネットへ直接公開しない) | 正規のアカウントでの誤操作・削除(①〜③で戻す) |
DS225+・DS725+・DS925+は公式製品ページに「イミュータブルスナップショットによる改ざん防止保護」と明記され、DS223jのページにはこの記載がありません。TeraStationの不変スナップショットは、発表時(2025年3月)の対象がTS5020シリーズなど上位機で、入口のTS3030シリーズは対象に挙がっていません。
出典:Synology「WriteOnceとイミュータブルスナップショットの対応モデル」・Snapshot Replicationの仕様/バッファロー「TeraStationに不変スナップショット機能」(2025年3月12日)(2026年10月16日確認)。
各層の設定手順は、②③が3-2-1ルールのバックアップとHyper Backupの設定、④がNASのセキュリティ設定にあります。共有フォルダごとの権限の付け方は共有フォルダの設定へ。バックアップは「戻せること」を年に1回は試して、復元にかかった時間を記録しておくと、次の稟議で「何時間で再開できるか」を数字で書けます。
稟議に書く項目(参考の項目例)
社内の書式に合わせて、次の項目を埋めます。法令・社内規程上の要件は、顧問の専門家にご確認ください。
- 目的: 共有フォルダの一元化/PC故障時のデータ保全/ランサムウェアからの復旧
- 構成: 型番・台数・RAIDの種類・使える容量・バックアップ先(上の構成表の1列)
- 初期費用の内訳: 本体・HDD・バックアップ先・UPSを分けて書く。HDDは本体の保証とは別に3年保証(Red Plus・IronWolf)で、5年保証のPro系にするかが次の分岐
- ランニング費用: 24時間動かす電気代(計算方法はNASの電気代)・HDDの保証が切れる3年目以降の交換費・延長保証を付ける場合はその費用
- 保証と延長の期限: Synology Plus系は3年。延長保証EW201は新しく購入するデバイスと一緒に買い、購入から30日以内に登録(後から足せません)。QNAPは購入後9か月以内の加入で最大5年。バッファローのセンドバック2年延長パック(OP-TSEN-2YD)は購入から60日以内
- サポート窓口: Synologyは公式サイトのサポートチケットとチャット(日本向けの電話番号は公式で見つかりませんでした)。QNAPの窓口はオンラインのサポートフォーム(日本オフィスの電話は平日9:30〜18:30受付)。SynologyとQNAPの保証は、正規の販売店で買い、最初に購入した国で使うことが条件です
- サポート期間(EOL): Synologyはモデルごとのサポート状況を公式の製品サポート状況ページで公開していますが、「何年まで」という年数は公表していません。目安として、2016年発売のDS216jにも2026年8月時点でDSM 7.4.1が配布されていました
- 残るリスク: 外してあるコピーの入れ替え間隔ぶんのデータは戻らない/担当者が1人だと休暇中に対応できない
- 担当者と手順: 管理者アカウントを持つ人(2人以上)・退職者アカウントを止める手順・復元テストの頻度
- 代替案: クラウドストレージとの比較(費用の損益分岐はNASとクラウドの比較)
窓口・保証条件はSynology・QNAPの公式サイト(Synology保証規定/QNAP製品保証/QNAPお問い合わせ)で2026年10月13日に確認した内容です。受付時間は変わることがあります。DS216jのDSM配布はSynologyのアーカイブで2026年8月12日に確認しました。
法令まわりは「機種」ではなく「運用」の話
- 電子帳簿保存法: 施行規則第4条第1項は電子取引データの保存の場所・期間と真実性の措置(受領前後のタイムスタンプ・訂正削除の履歴が残るシステム・事務処理規程の4つのいずれか)を定めていますが、保存媒体がNASかPCかクラウドかの指定はありません。NASを買っただけでは、タイムスタンプも訂正削除の履歴も備わりません
- 個人情報の安全管理措置: 個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)の物理的安全管理措置(設置場所と施錠)・技術的安全管理措置(アカウント・権限・不正アクセス防止)が、NASの設定に対応します。導入すれば措置が完了するわけではありません
- 自社の運用が要件を満たすかは、顧問税理士・所轄税務署などの専門家にご確認ください
出典:電子帳簿保存法施行規則(e-Gov法令検索)/国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」/個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」(2026年9月20日確認)。法令は改正されます。
家庭用のままで足りるのは1〜2人まで
1〜2人で、故障で半日止まっても待てるならDS223j(約33,460円・保証2年・ホットスワップ非対応・Synology Drive 5ユーザーまで)などの家庭用ラインで足ります。機種の絞り込みは家庭用NASおすすめランキング、各社の特徴はNASメーカー比較へ。
よくある質問(FAQ)
まとめ
- 6〜10人の事務所は、保証3年・ホットスワップ対応のPlusクラスが最低線。DS225+はSynology Driveが10ユーザーまでなので、人数が増える見込みがあるならDS925+(80ユーザー・4ベイ)
- 総額の目安(UPSを除く)は、最小構成211,180円・推奨構成455,060円・ランサム重視619,260円
- ランサムウェアには、スナップショット・外部へのバックアップ・ネットから外したコピー・アカウント管理の4層で備え、各層の「守れないこと」を稟議の残るリスクに書く。保守契約とデータ復旧サービスが要件なら、TeraStation(TS3230DN/TS3430DN)を見る段階です
▼ どの構成を選んでも共通で要るのがUPSです。本体の稟議が通る前でも先に決められます:APC BR400S-JP(400VA/240W・正弦波)。停電の瞬間にNASを安全にシャットダウンさせ、書き込み中のファイルやRAIDが壊れるリスクを減らせます。容量が足りるかはNASとUPSの選び方の計算方法でご確認ください。価格と在庫はリンク先でご確認ください