yamakashi
RAIDはNASやサーバーにおける基本技術ですが、「速度」「冗長性」「効率」の3点だけで語ると実際の運用を誤解しがちです。
ここでは I/O性能の特徴・書き込みペナルティ・リビルド時のリスク まで踏み込んで比較します。
RAID 0(ストライピング)
特徴
- 読み書き性能が最大化(理論的にはディスク台数に比例)
- 冗長性ゼロ、1台の故障で全損
I/O性能
- 読み込み:ディスク台数に比例して高速化
- 書き込み:同様に台数に比例して高速化
- メタデータ処理のオーバーヘッドなし
書き込みペナルティ
リビルドリスク
- 1台故障で復旧不能 → リビルドという概念自体が存在しない
RAID 1(ミラーリング)
特徴
- 同じデータを複製 → 高い冗長性
- 容量効率は50%
I/O性能
- 読み込み:複数ディスクから並列読み出し → 負荷分散で高速化する場合あり
- 書き込み:必ず両ディスクへ書き込み → 単体HDDと同等
書き込みペナルティ
リビルドリスク
- 故障時は 正常ディスクをコピー して復旧
- 容量が大きいとリビルドに時間(数時間~数十時間)がかかり、その間I/O遅延や2台目故障リスクが増す
RAID 5(ストライピング+パリティ1)
特徴
- 最低3台必要
- パリティ情報を各ディスクに分散
- 容量効率=(N-1)/N
I/O性能
- 読み込み:ストライピングにより並列読み出し → RAID 0に近い性能
- 書き込み:書き込み時に「読み込み+パリティ計算+書き込み」が発生
書き込みペナルティ
- 4 I/Oペナルティ
- 例:1ブロック書き換え
- 元データ読み出し
- 元パリティ読み出し
- 新データ書き込み
- 新パリティ書き込み
リビルドリスク
- 1台故障 → 残りディスクとパリティから復元
- 大容量HDD時代ではリビルドに数十時間以上かかる
- リビルド中に別ディスクに不良セクタが発生すると「Unrecoverable Read Error (URE)」で全損するリスク
RAID 6(ストライピング+パリティ2)
特徴
- 最低4台必要
- 2台同時故障に耐えられる
- 容量効率=(N-2)/N
I/O性能
- 読み込み:RAID 5同様に高速
- 書き込み:RAID 5よりさらに重い(2つのパリティ計算が必要)
書き込みペナルティ
- 6 I/Oペナルティ
- データ更新時に データ+2つのパリティ を更新する必要あり
リビルドリスク
- 2台まで同時故障に耐えられるため、RAID 5よりは安全
- ただしリビルド時間は長く、負荷も大きい
- エンタープライズ用途では「RAID 6が最低ライン」とされる
SHR(Synology Hybrid RAID)
特徴
- Synology独自のRAID管理層
- 異容量ディスクを組み合わせ可能
- 内部的には RAID 1/5/6 相当の仕組みを柔軟に構築
I/O性能
- ベースはRAID 5/6と同等(SHR-1はRAID 5相当、SHR-2はRAID 6相当)
- 小規模環境では実測でRAIDと大差なし
書き込みペナルティ
- RAID 5/6と同じ(4 I/Oまたは6 I/Oペナルティ)
リビルドリスク
- 異容量を組み合わせても効率よくリビルド可能
- 大容量ドライブを1本だけ交換した場合でも、RAIDより柔軟に容量を拡張できる
RAID方式ごとの技術比較まとめ
RAID方式 | 読み込み性能 | 書き込み性能 | 書き込みペナルティ | リビルドリスク |
---|
RAID 0 | 高速 | 高速 | なし | 1台故障で全損 |
RAID 1 | 高速(負荷分散) | 単体HDD相当 | 2倍書き込み | 比較的低いが容量大で長時間化 |
RAID 5 | 高速 | 中~低速 | 4 I/O | 1台故障に強いがUREで全損リスク |
RAID 6 | 高速 | 低速 | 6 I/O | 2台同時故障に耐えるがリビルド長い |
SHR | RAID 5/6相当 | RAID 5/6相当 | 同上 | 柔軟で実用性高い |
まとめ
- I/O性能だけを追求 → RAID 0(ただし業務用途では非推奨)
- シンプルな冗長性 → RAID 1
- コスト効率と冗長性のバランス → RAID 5(ただし大容量HDD時代ではリスク増大)
- 業務用途の標準 → RAID 6(最低ラインとして採用推奨)
- Synologyユーザーの最適解 → SHR(特に家庭・SOHO用途)
また、RAIDはバックアップではない という点を忘れてはいけません。
リビルド中のリスクやヒューマンエラーを考慮すると、外部バックアップは必須です。
ご質問や感想があれば、コメント欄へどうぞ!
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