更新日:2026年7月7日|カテゴリ:初期設定・使い方
「NASでDockerが動く」と聞いても、初心者にはピンとこないかもしれません。でも一度使い始めると、NASが単なるファイルサーバーから「自宅のミニサーバー」に変わります。
結論から言うと、SynologyのNAS(DS224+などのPlusシリーズ=x86 CPU搭載モデル)があれば、Container Managerアプリを使って簡単にDockerコンテナを動かすことができます。専門知識がなくてもGUIで操作できるので、初心者でも始めやすいです。
SynologyではDockerを「Container Manager」というアプリ名で提供しています。以降、アプリ名としては「Container Manager」、技術・機能としては「Docker」と表記します。
この記事でわかること
- NASでDockerを使うと何ができるか
- Docker対応NASモデルの選び方
- Container Managerの導入手順
- 初心者におすすめのDockerコンテナ3選
NASでDockerを使うとできること
| 用途 | Dockerコンテナ例 | できること |
|---|---|---|
| 広告ブロック | Pi-hole | 自宅ネットワーク全体の広告・トラッキングをブロック |
| スマートホーム | Homebridge | Siri非対応のスマート家電をApple HomeKitで操作 |
| メディアサーバー | Jellyfin | 動画・音楽を自宅サーバーからストリーミング再生 |
| パスワード管理 | Vaultwarden | 自宅サーバーで動くBitwardenサーバー |
| RSSリーダー | FreshRSS | 自前のRSSリーダーを立てる |
| VPNサーバー | WireGuard | 外出先から自宅LAN全体に安全にアクセス |
これらはほんの一例です。Docker Hub(世界最大のコンテナリポジトリ)には数十万のコンテナイメージがあり、アイデア次第でNASをさまざまな用途に使えます。(外部アクセスをポート開放なしで実現したい方はTailscale×Dockerの解説記事もご覧ください)
Docker対応NASモデルの確認
重要:すべてのSynology NASでDockerが動くわけではありません。Docker(Container Manager)はx86(Intel/AMD)CPU搭載モデルのみ対応です。
| モデル | CPU | Docker対応 |
|---|---|---|
| DS224+ | Intel Celeron J4125 | ◎ 対応 |
| DS225+ | Intel Celeron J4125 | ◎ 対応 |
| DS423+ | Intel Celeron J4125 | ◎ 対応 |
| DS223j | Realtek RTD1619B(ARM64) | ○ 対応(DSM 7.2〜・メモリ1GBで軽量用途向き) |
| DS923+ | AMD Ryzen R1600 | ◎ 対応 |
なお、DS224+の後継として2025年発売のDS225+(Intel Celeron J4125・2.5GbE対応)も同じくDocker対応です。これから購入するなら後継のDS225+も候補の一つになります。
モデル名に「+」が付くPlusシリーズはx86(Intel/AMD)CPU搭載で、Dockerをフル機能・高負荷でも快適に使えます(例:DS224+はIntel Celeron、DS923+はAMD Ryzen)。一方、「J」がつくエントリーモデル(DS223jレビュー参照)も、DSM 7.2以降はContainer Managerが利用可能になりました。対象はRTD1619B搭載機(DS223j・DS223・DS423)です。ただしメモリ1GB・arm64対応イメージ限定のため軽量コンテナ向きで、複数コンテナの同時運用やamd64専用イメージにはPlusシリーズが安心です。最新の対応状況はSynology公式のContainer Manager対応モデル一覧で確認できます。
なお、NASを買ったばかりでこれから初期設定をする方は、先にNASの初期設定ガイドでDSMのセットアップを済ませておくと、Container Managerの導入がスムーズです。
Container Managerの導入手順
- DSM管理画面にログイン
- 「パッケージセンター」を開く
- 検索欄に「Container Manager」と入力
- 「インストール」をクリック
- インストール完了後、メインメニューに「Container Manager」が表示される
Container ManagerはDSM 7.2以降でDockerと仮想マシン管理を統合したSynology公式アプリです。以前の「Docker」アプリから改名されています。
インストール後:GUIでコンテナを作成する手順
Container Managerをインストールしたら、実際にコンテナを動かすまでの流れは次のとおりです。コマンドを打たなくても、すべてGUIで完結できます。
- イメージの取得:Container Managerを開き、「レジストリ」タブで使いたいイメージ名(例:pihole/pihole)を検索してダウンロードします。タグは通常「latest」のままで問題ありません。
- コンテナの作成:「イメージ」タブでダウンロード済みのイメージを選び、「実行」をクリックするとウィザードが始まります。
- 一般設定:コンテナ名を分かりやすい名前に変更し、「自動再起動を有効にする」にチェックを入れます。NASの再起動後もコンテナが自動で立ち上がります。
- ポート設定:ローカルポートとコンテナポートの対応を指定します。ローカルポートが「自動」のままだと起動のたびに番号が変わるので、固定値(例:8080)に変更するのがおすすめです。
- ボリューム(ストレージ)設定:「フォルダの追加」でNAS上のフォルダ(例:docker/pihole)を作成し、コンテナ内のパスにマッピングします。ここを設定しないと、コンテナを作り直したときに設定やデータが消えてしまいます。
- 環境変数の設定:タイムゾーン(TZ=Asia/Tokyo)や管理パスワードなど、イメージごとに必要な環境変数を入力します。必要な変数はDocker Hubの各イメージページに記載されています。
- 起動と確認:概要画面で設定を確認して「完了」を押すとコンテナが起動します。「コンテナ」タブで状態が「実行中」になっていればOKです。
うまく起動しない場合は、「コンテナ」タブで対象を選んで「ログ」を確認しましょう。環境変数の不足やポートの重複が原因であることがほとんどです。
これからDocker運用を前提にNASを新調するなら、メモリに余裕のあるx86(Intel/AMD)機だと複数コンテナを同時に動かしても余裕があります。Synologyなら後述のDS225+、他メーカーではIntel N100・メモリ8GBを積むUGREEN NASync DXP2800のようなモデルも選択肢になります(いずれもamd64イメージがそのまま動きます)。
初心者におすすめのDockerコンテナ3選
① Pi-hole(広告ブロッカー)
自宅ネットワーク全体のDNSサーバーとして動作し、広告・トラッキングドメインをブロックします。スマホ・TV・PCすべての広告を一括でブロックできるため、家族全員が恩恵を受けられます。
起動コマンド例(NASにSSH接続し、sudoを付けて実行。Container ManagerのGUIでも同等の設定が可能です。詳細はPi-hole公式ドキュメント参照):
docker run -d --name pihole \
-e TZ=Asia/Tokyo \
-p 53:53/tcp -p 53:53/udp -p 8080:80 \
-v /volume1/docker/pihole/etc:/etc/pihole \
--restart=unless-stopped \
pihole/pihole:latest
② Homebridge(スマートホーム連携)
Apple HomeKit非対応のスマート家電(SwitchBot・Meross等)をSiri・ホームアプリから操作できるようにするブリッジです。「ねえSiri、リビングの照明をつけて」が実現できます。
Container Managerの「レジストリ」で「homebridge」を検索し、「homebridge/homebridge」を選択してデプロイするだけで起動できます。
③ Vaultwarden(パスワードマネージャー)
クラウドに預けたくないパスワードを自宅NASで管理できます。Bitwarden互換のサーバーで、iPhoneやWindowsのBitwardenアプリからそのまま接続できます。
Dockerを使う際の注意点
- RAM・CPU消費に注意:複数のコンテナを同時に動かすとNASのリソースを消費し、ファイル転送速度が落ちることがあります
- ポート競合に注意:コンテナが使うポート番号が既存サービスと競合しないよう確認が必要です
- データはボリュームに保存:コンテナを削除するとデータが消えます。重要なデータは必ずNASのボリューム(例:/volume1/docker/)にマウントしてください
- CPUアーキテクチャに注意:ARM機(DS223j等のRTD1619B搭載機)はDSM 7.2以降Container Managerに対応しますが、動かせるのはarm64対応イメージのみで、amd64(x86)専用イメージは動きません。x86のPlus系なら大半のイメージがそのまま動きます(arm64対応か要確認)
- 外部公開時はセキュリティ設定を:VPN(WireGuard)やパスワード管理(Vaultwarden)を外部に公開する場合は、ポート開放や認証設定を自己責任で適切に行ってください。設定不備は情報漏えいのリスクにつながります
FAQ(よくある質問)
Q1. DockerとContainer Managerは何が違う?
Container ManagerはSynologyがDocker Engine上に作ったGUI管理ツールです。内部ではDockerが動いており、Docker Hubのイメージをそのまま使えます。DSM 7.2からDocker(旧アプリ名)がContainer Managerに統合されました。
Q2. DS224+のRAMは2GBで足りる?
軽量コンテナ1〜3本程度なら問題ありません。Pi-hole + Homebridge程度であれば2GBで快適に動作します。多数のコンテナを同時に動かす場合は4〜6GBへの増設を検討してください。
Q3. Docker ComposeはSynologyで使える?
DSM 7.2以降のContainer ManagerではYAML形式のDocker Compose設定ファイルをGUIから直接読み込めます。コマンドラインを使わずにCompose環境を構築できます。
Q4. Dockerのコンテナが起動しない場合は?
Container Managerのログ画面でエラーメッセージを確認してください。ポート競合・パス指定ミス・メモリ不足が主な原因です。エラーメッセージをそのまま検索すると解決策が見つかることが多いです。
Q5. QNAPでもDockerは使える?
使えます。QNAPには「Container Station」というDocker管理アプリがあり、機能的にはSynologyのContainer Managerと同等です。TS-233(ARM)でも一部のARMネイティブイメージは動作します。
Q6. DS223jなどARMのエントリー機でもDockerは使えますか?
はい、使えます。DSM 7.2以降、Realtek RTD1619B搭載機(DS223j・DS223・DS423)はContainer Managerに対応しました(以前は非対応でしたが現在は対応)。ただし動かせるのはarm64対応イメージのみで、amd64(x86)専用イメージは動きません。メモリも1GB(DS223j)と小さいため、Pi-holeなどの軽量コンテナ向きです。複数コンテナの本格運用やamd64イメージを使うなら、x86のPlus系(DS224+/DS225+)を選んでください。
Q7. Dockerを本格的に使うならどのモデルを選べばいい?
複数のコンテナを快適に動かすなら、メモリに余裕のあるx86のPlus系がおすすめです。SynologyならDS225+(2GB・増設可)やDS923+(AMD Ryzen)が定番で、amd64イメージがそのまま動きます。軽量コンテナを1〜2本試すだけならエントリー機でも始められますが、後から使い道が増えることを考えると、最初からPlus系を選んでおくと拡張で困りにくいです。
まとめ
- Container Managerは「+」付きPlus系(x86)が最も快適。DSM 7.2以降はRTD1619B搭載のJ系(DS223j・DS223・DS423)も対応するが、メモリ1GB・arm64イメージ限定で軽量用途向き
- 導入はパッケージセンターからContainer Managerをインストールするだけ。DSM 7.2以降ならCompose(YAML)も使える
- 初心者はPi-hole・Vaultwarden・メディアサーバーなど定番イメージから始めるのがおすすめ
- コンテナのデータはボリュームマウントで永続化し、NAS自体のバックアップも忘れずに
本格的にDockerを使い倒すなら、メモリに余裕があり2.5GbEにも対応するDS225+のようなPlus系が安心です。これからNASを選ぶなら候補の一つとして検討してみてください。