SynologyのNASでDockerを使う入門ガイド【できることと始め方】
「NASでDockerが動く」と聞いても、初心者にはピンとこないかもしれません。でも一度使い始めると、NASが単なるファイルサーバーから「自宅のミニサーバー」に変わります。
結論から言うと、SynologyのNAS(DS224+以上のIntel CPU搭載モデル)があれば、Container Managerアプリを使って簡単にDockerコンテナを動かすことができます。専門知識がなくてもGUIで操作できるので、初心者でも始めやすいです。
この記事でわかること
- NASでDockerを使うと何ができるか
- Docker対応NASモデルの選び方
- Container Managerの導入手順
- 初心者におすすめのDockerコンテナ3選
NASでDockerを使うとできること
| 用途 | Dockerコンテナ例 | できること |
|---|---|---|
| 広告ブロック | Pi-hole | 自宅ネットワーク全体の広告・トラッキングをブロック |
| スマートホーム | Homebridge | Siri非対応のスマート家電をApple HomeKitで操作 |
| メディアサーバー | Jellyfin | 動画・音楽を自宅サーバーからストリーミング再生 |
| パスワード管理 | Vaultwarden | 自宅サーバーで動くBitwardenサーバー |
| RSSリーダー | FreshRSS | 自前のRSSリーダーを立てる |
| VPNサーバー | WireGuard | 外出先から自宅LAN全体に安全にアクセス |
これらはほんの一例です。Docker Hub(世界最大のコンテナリポジトリ)には数十万のコンテナイメージがあり、アイデア次第でNASをさまざまな用途に使えます。
Docker対応NASモデルの確認
重要:すべてのSynology NASでDockerが動くわけではありません。Docker(Container Manager)はx86(Intel/AMD)CPU搭載モデルのみ対応です。
| モデル | CPU | Docker対応 |
|---|---|---|
| DS224+ | Intel Celeron J4125 | ◎ 対応 |
| DS423+ | Intel Celeron J4125 | ◎ 対応 |
| DS223J | Realtek RTD1619B(ARM) | × 非対応 |
| DS923+ | AMD Ryzen R1600 | ◎ 対応 |
モデル名に「+」が付くSynologyモデルはIntel CPUを搭載しておりDocker対応です。「J」がつくエントリーモデルはARM CPUのため非対応です。
Container Managerの導入手順
- DSM管理画面にログイン
- 「パッケージセンター」を開く
- 検索欄に「Container Manager」と入力
- 「インストール」をクリック
- インストール完了後、メインメニューに「Container Manager」が表示される
Container ManagerはDSM 7.2以降でDockerと仮想マシン管理を統合したSynology公式アプリです。以前の「Docker」アプリから改名されています。
初心者におすすめのDockerコンテナ3選
① Pi-hole(広告ブロッカー)
自宅ネットワーク全体のDNSサーバーとして動作し、広告・トラッキングドメインをブロックします。スマホ・TV・PCすべての広告を一括でブロックできるため、家族全員が恩恵を受けられます。
起動コマンド例(Container ManagerのSSH/コンソール):
docker run -d --name pihole \
-e TZ=Asia/Tokyo \
-p 53:53/tcp -p 53:53/udp -p 8080:80 \
-v /volume1/docker/pihole/etc:/etc/pihole \
--restart=unless-stopped \
pihole/pihole:latest
② Homebridge(スマートホーム連携)
Apple HomeKit非対応のスマート家電(SwitchBot・Meross等)をSiri・ホームアプリから操作できるようにするブリッジです。「ねえSiri、リビングの照明をつけて」が実現できます。
Container Managerの「レジストリ」で「homebridge」を検索し、「homebridge/homebridge」を選択してデプロイするだけで起動できます。
③ Vaultwarden(パスワードマネージャー)
クラウドに預けたくないパスワードを自宅NASで管理できます。Bitwarden互換のサーバーで、iPhoneやWindowsのBitwardenアプリからそのまま接続できます。
Dockerを使う際の注意点
- RAM・CPU消費に注意:複数のコンテナを同時に動かすとNASのリソースを消費し、ファイル転送速度が落ちることがあります
- ポート競合に注意:コンテナが使うポート番号が既存サービスと競合しないよう確認が必要です
- データはボリュームに保存:コンテナを削除するとデータが消えます。重要なデータは必ずNASのボリューム(例:/volume1/docker/)にマウントしてください
- ARM非対応イメージがある:DS223J等のARM機でも一部のDockerイメージは動きません(amd64専用)
FAQ(よくある質問)
Q1. DockerとContainer Managerは何が違う?
Container ManagerはSynologyがDocker Engine上に作ったGUI管理ツールです。内部ではDockerが動いており、Docker Hubのイメージをそのまま使えます。DSM 7.2からDocker(旧アプリ名)がContainer Managerに統合されました。
Q2. DS224+のRAMは2GBで足りる?
軽量コンテナ1〜3本程度なら問題ありません。Pi-hole + Homebridge程度であれば2GBで快適に動作します。多数のコンテナを同時に動かす場合は4〜6GBへの増設を検討してください。
Q3. Docker ComposeはSynologyで使える?
Container Manager 2.0(DSM 7.2以降)からYAML形式のDocker Compose設定ファイルをGUIから直接読み込めます。コマンドラインを使わずにCompose環境を構築できます。
Q4. Dockerのコンテナが起動しない場合は?
Container Managerのログ画面でエラーメッセージを確認してください。ポート競合・パス指定ミス・メモリ不足が主な原因です。エラーメッセージをそのまま検索すると解決策が見つかることが多いです。
Q5. QNAPでもDockerは使える?
使えます。QNAPには「Container Station」というDocker管理アプリがあり、機能的にはSynologyのContainer Managerと同等です。TS-233(ARM)でも一部のARMネイティブイメージは動作します。
SynologyでDockerを動かすための前提条件
Container Manager(旧Docker)は、すべてのSynology NASで使えるわけではありません。一般的にプラスシリーズ(DS224+、DS923+など)以上のx86 CPU搭載モデルが対応モデルとして案内されています。エントリーモデル(DS223j、DS223Jなど)は対応外です。最新の対応モデル一覧はSynology公式サイトでご確認ください。
必要なシステム要件の目安
- x86_64アーキテクチャのCPU(プラスシリーズ以上)
- メモリ2GB以上、複数コンテナ運用なら4GB以上を推奨
- DSM 7.2以降(Container Managerはこのバージョンで提供)
- BTRFSフォーマットの共有フォルダ(スナップショット等の機能を活用する場合)
コンテナ(Docker)とは何か?
Dockerは、アプリケーションとその実行に必要なライブラリ・設定をまとめて「コンテナ」として動かす仕組みです。仮想マシンに比べてオーバーヘッドが小さく、起動が高速で、リソースを節約しながら多数のアプリを並行運用できます。
NAS上でDockerを使うメリットは、メーカー純正のパッケージにないアプリを自由に追加できる点です。例えば、メディアサーバーの「Plex」「Jellyfin」、広告ブロックの「Pi-hole」、パスワード管理の「Vaultwarden」などをコンテナとして稼働できます。
Container Managerでよく使われる定番コンテナ
| コンテナ | 用途 | メモリ目安 |
|---|---|---|
| Plex / Jellyfin | メディアサーバー | 1〜2GB |
| Pi-hole | ネットワーク広告ブロック | 256MB |
| Vaultwarden | セルフホストパスワード管理 | 512MB |
| Nextcloud | セルフホストクラウドストレージ | 1〜2GB |
| Home Assistant | スマートホーム統合 | 1GB |
| WordPress | セルフホストブログ | 512MB〜1GB |
| Portainer | コンテナGUI管理 | 256MB |
表の値は一般的な公式ドキュメントでの推奨値の目安です。実利用時の負荷や機能の有効化状況によって必要メモリは変動します。
Container Manager導入の基本ステップ
手順1:パッケージセンターからインストール
DSMのパッケージセンターを開き、「Container Manager」を検索してインストールします。対応モデルでなければ検索結果に表示されません。
手順2:共有フォルダを準備
「docker」という名前の共有フォルダ(または任意のフォルダ)を作成し、各コンテナの設定・データ永続化用ボリュームとして使用します。フォルダ階層は「/docker/コンテナ名/config」「/docker/コンテナ名/data」のように整理するのが一般的です。
手順3:コンテナを起動
Container Manager上で「レジストリ」からイメージをダウンロードし、コンテナを作成・起動します。ポート、ボリューム、環境変数を設定する画面が用意されているため、GUIだけで構築可能です。より高度な設定が必要な場合は「プロジェクト」機能でDocker Compose(YAML定義)を読み込むこともできます。
Docker Composeを使うメリット
複数コンテナを連携させる場合、YAMLファイルで定義する「Docker Compose」が便利です。Container Managerの「プロジェクト」機能を使うと、docker-compose.ymlを読み込んでまとめて起動できます。設定がコードとして残るため、バックアップ・再構築・別NASへの移行が容易になる点も大きな利点です。
運用時の注意点とトラブル対処
1. ポート競合に注意
DSM管理画面(5000/5001)、Webサーバーパッケージ(80/443)など、Synologyが既に使っているポートと、コンテナのポートが重複することがあります。コンテナ側の公開ポートをずらして対応しましょう。
2. 自動更新は慎重に
Watchtowerなどでイメージ自動更新を設定すると、思わぬバージョンアップで設定が崩れることがあります。重要なコンテナは手動更新+スナップショットでの保護を推奨します。
3. データの永続化を必ず設定
ボリューム指定をせずにコンテナを作ると、再作成時にデータが消失します。必ずホスト側の共有フォルダにマウントし、Hyper Backup等で定期バックアップを取りましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. DS223jやDS223JでもDockerは使える?
残念ながらARM CPU搭載のJシリーズ(DS223j、DS223Jなど)はContainer Manager非対応です。Docker活用を前提とするなら、DS224+などのプラスシリーズ以上を選びましょう。
Q2. メモリは増設したほうがいい?
3つ以上のコンテナを常時稼働させるなら、4GB以上のメモリ環境が無難です。プラスシリーズはメモリ増設に対応しているモデルが多いため、後から拡張可能です。対応メモリは公式互換リストで確認しましょう。
Q3. コマンドライン操作は必須?
Container Managerはほぼすべての操作をGUIで完結できます。ただし、複雑な設定や障害解析を行う場合はSSHでの操作が便利です。
Q4. コンテナのバックアップ方法は?
コンテナの実体は「設定ファイル+ボリュームデータ」です。共有フォルダ「docker」をHyper Backupでまるごと外部メディアにバックアップしておけば復旧可能です。
Q5. アップデートで動かなくなった時は?
BTRFSのスナップショット機能、もしくはイメージのバージョン指定(latestではなく:1.2.3など固定)で対応します。
まとめ:Docker活用でNASの可能性が広がる
SynologyのContainer Managerを使えば、純正アプリでは満たせないニーズを多彩なコンテナで埋められます。最初はPi-holeやJellyfinなど、シンプルなコンテナから始めて慣れていくのがおすすめです。本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。最新の仕様・対応モデルはSynology公式サイトでご確認ください。
※本記事はアフィリエイト広告を含みます。
