更新日:2026年8月12日|カテゴリ:運用・トラブル・節電
本記事は公開情報を確認してまとめた「手順の調査記事」です。運営者は2ベイNASを3世代(Synology DS216j/DS223j/UGREEN NASync DXP2800)保有していますが、過去に機種を替えたときどの方法でデータを移したかの記録は残っておらず、移行作業そのものの体験談は書けません。実測した内容と公開情報から確認した内容は、そのつど区別して書きます。
結論:買い替えでつまずくのは本体選びではなく「データの渡し方」です
NASの買い替えは、本体を選ぶところより中のデータをどう渡すかでつまずきます。
- 現実的な移し方は3つ——①HDDをそのまま載せ替える ②Hyper Backupで新NASに復元する ③ネットワーク越しにファイルをコピーする
- 「載せ替えれば設定もアプリもそのまま」ではありません。Synology公式は、世代(パッケージ アーキテクチャ)が違う組み合わせを「そのまま安全」とは扱っていません。渡せるのは主にボリューム上のデータです
- Synologyの「ワンクリック移行」ツールは、エントリー機では選べないことがあります。Migration Assistantは移行先に入れて使いますが、公式が配布するパッケージにDS223j世代(
armv8)向けがありません - どの方法でも鉄則は「先にバックアップ」。とくに載せ替えは旧NASが空になり、失敗したときの戻り先がありません
移行後の旧NASはバックアップ先に回すか、データを消してから手放すかの二択。消さずに売る・捨てるのがいちばん危険です。
当日の手順だけ見たい方は、後半の段取り表へ。
まず切り分け:「ディスクを替える」と「機種を替える」は別の作業です
ディスクを替えるのは同じNASの中でHDDを1本ずつ交換してRAIDを修復する作業で、データはNASの中に残ったままです(DS223jのHDD交換手順)。いっぽう機種を替えると、旧NASから新NASへデータを渡す作業が必要になります。この記事は後者だけを扱い、買い替えるべきかどうかの判断は蒸し返しません(まだ迷っている段階ならDS216jは10年目でどうなったかを先にどうぞ)。
移行の全体像:公式の方式は3つ。でも1つは機種によって消えます
Synologyは公式サイトで、買い替え時の移行方法を3つ案内しています。
- HDDマイグレーション:ドライブを新しいNASに載せ替える。移るのはドライブ上のデータ(設定の引き継ぎは条件つき)
- Migration Assistant:ネットワーク経由で丸ごと移す専用パッケージ。データ+システム設定+パッケージ+ユーザー/権限まで移る
- Hyper Backup:旧NASでバックアップを取り、新NASで復元する。システム構成・パッケージも対象
出典:Synology「Synology NAS の移行」(2026年8月12日確認)。公式は、ファイルシステムを変えたい場合の方法としてHyper Backupを案内しています。
楽に見えるのは真ん中のMigration Assistantです。ところがこの選択肢は、移行先の機種によっては最初から存在しません。
Migration Assistantは「移行先に入れる」ツールです
先に結論だけ:新しいNASのパッケージセンターで「Migration」と検索してください。出てくれば使える/出てこなければ②か③。以下は「なぜエントリー機では出ないと考えられるか」の根拠なので、急ぐ方は読み飛ばして構いません。
Migration Assistantは、移行元ではなく移行先のNASにインストールして使うパッケージです。つまり新しく買ったNASのパッケージセンターに出てこなければ、その時点で選択肢から消えます。
そして公式ダウンロードアーカイブを見ると、配布ファイルは最新の1.1.0-1512(2025年11月18日付)も旧版の1.0.13-1211も、armv7 と x86_64 の2種類だけです。比較のために書いておくと、Hyper Backup Vault 4.2.2-4262はarmv8を含む5種類が配布されています。
いっぽう公式デベロッパーガイドのプラットフォーム対応表には、DS223jのCPUであるRTD1619B(rtd1619b)は armv8 と明記されています。
出典:Synology Download Archive(Migration Assistant 1.1.0-1512)/同 1.0.13-1211/同(Hyper Backup Vault 4.2.2-4262)/Synology Developer Guide(Platform/Arch対応表)/Synology DS223j 製品ページ(いずれも2026年8月12日確認)。
つまり、armv8向けのMigration Assistantが配布されていない以上、DS223j世代のエントリー機にはこのパッケージを入れられません。Hyper Backup Vaultにはarmv8版があるので「作れない」わけではなく、このパッケージには用意されていない、という事実です。
書き方を正確にしておきます。 これは「Synologyが『DS223jは非対応です』と宣言している」話ではありません。当サイトが確認できたのは公式が配布しているパッケージに、この世代向けのファイルが存在しないという事実までで、パッケージセンターで実際に検索して確かめたわけではありません。移行先の機種で「Migration」と検索し、出てこなければ②か③を選ぶことになります。
結果として、エントリー機の買い替えは実質3択になります
公式の3方式からMigration Assistantが抜け、代わりに公式の一覧には無い汎用手段=ネットワーク越しのファイルコピーが入ります。差し引きで、やはり3つです。
| ①HDD載せ替え | ②Hyper Backupで復元 | ③ネットワーク越しにコピー | |
|---|---|---|---|
| データ本体 | 移動する(ディスクごと) | 戻す | 手動で全部運ぶ |
| ユーザー・権限・アプリ設定 | 世代が違うと期待できない | バックアップ対象に含まれる(明細は要確認) | 引き継がれない |
| ファイルシステムの変更 | できない(ext4はext4のまま) | できる(公式が推奨する方法) | できる |
| 旧NASのデータ | 空になる | 残る(=失敗しても戻れる) | 残る |
| かかる時間・費用 | 短い(公式は「数分」)・追加費用なし | 容量しだい・保存先の空き容量が必要 | 容量しだい・追加費用なし |
「旧NASのデータが残るかどうか」の行を、いちばん重く見てください。①だけは、失敗したときに戻る場所がありません。
移行を始める前にやる3つの準備
ここを飛ばすと、途中で止まったときに逃げ道がなくなります。
準備1:先にバックアップを取る(これだけは省略しない)
移行は、普段は動かさないデータをまとめて動かす作業です。移行中は、停電・LANケーブルの抜け・操作ミスの代償がいちばん大きくなります。とくに①のHDD載せ替えは、ディスクを抜いた時点で旧NASが空になります。「元に戻す」ボタンはありません。
- 外付けHDDでもクラウドでも構わないので、失いたくないフォルダだけは事前に別の場所へ複製する(NASのバックアップ 3-2-1ルール)
- DSMの File Station で使用容量を確認する。移行時間はほぼデータ量とネットワーク速度の割り算で決まります
準備2:新しいNASに入れるHDDをどうするか決める
- 今のHDDをそのまま新NASへ移す(=①)。追加費用はかかりませんが、HDDの年齢はリセットされません。10年もののディスクは新しい本体に挿しても10年ものです
- 新しいHDDを買って、データだけ移す(=②か③)。費用はかかりますが本体もディスクも新しくなります
- 一時的に外付けHDDへ退避してから書き戻す。NASを2台同時に置けない場合の現実解。容量の目安は今の使用容量と同等以上(NASで1.5TB使っているなら2TB以上、余裕を見るなら4TB前後)。選び方は外付けHDD/SSDの選び方へ
迷ったら「新しいHDDを買う」で構いません。本体だけ新しくしても、最も壊れやすい部品が10年もののまま残るからです。2ベイなら同容量2本が基本で、定番のWD Red Plus 4TBは1本あたり32,500円前後(容量ごとの選び方)。移行が終わった日から「本体もディスクも新品」で使い始められます。
準備3:そもそも移せないデータが無いか確認する
落とし穴です。テレビの録画番組(DTCP-IPで保護された録画データ)は、通常のファイルコピーでは移せません。著作権保護の仕組みが別だからです。NASに録画番組を貯めている方には、nasneの録画番組の引っ越しで扱った制約(コピー回数の消費など)が同じくのしかかります。
このほか、Migration Assistantが使える環境でも移行されないものがあります。公式スペックが挙げているのはライセンス/Synologyアカウントの設定/ネットワーク設定/プッシュ通知/デスクトップのウィジェット/Virtual Machine Managerの設定です。方式によらず「アカウントまわりとネットワーク設定は手で入れ直す」前提でどうぞ。
出典:Synology Migration Assistant テクニカルスペック(2026年8月12日確認)。同ページには、移行元はDSM 6.0以上・移行先はDSM 7.0以上が必要であること、ext4からBtrfsへの変更はできないことも記載されています。
手段①:HDDをそのまま載せ替える
速くて追加費用もかかりません。ただし条件が多く、「そのまま全部引き継げる」と考えると裏切られます。
公式が示している条件
公式KBには、ドライブを載せ替えて移行する際の条件として次の記載があります。
- 移行元のドライブが移行先NASの互換性リストに載っていること(載っていない場合は、互換ドライブを入れて②か③で移行する方法が案内されています)
- ドライブは元と同じスロット順で挿すこと
- 新しいモデルから古いモデル・終売モデルへ移す方向は非推奨
参考:Synology「Synology NAS 間で HDD マイグレーション(DSM 6.0 以降)によってデータを移行するには?」。⚠️ このKBは動的に描画されるため、当サイトは本文を直接取得できておらず、検索結果に表示される記載で確認した範囲です。実行前に必ずご自身でページを開いてください。
世代が違うと「そのまま安全」ではありません
ここが最重要です。Synologyは、移行元と移行先のパッケージ アーキテクチャ(CPUの系統によるグループ分け)が同じなら問題ないとしています。違う場合は、「安全」「パッケージ設定の再構成が必要」「非推奨」の3段階に分けて扱っています。そしてDS216jのarmada38xとDS223jのrtd1619bは別のグループとされています。「同じアーキテクチャだから無条件でOK」のケースには当てはまりません。
当サイトで確認できていないこと:この組み合わせが公式の表で「再構成が必要」なのか「非推奨」なのかは確認できていません(検索結果に出る要約が回によって食い違うため、断定を避けます)。区分を表す記号も原典を確認できていないため、この記事では文字で書いています。
どちらであっても言えることは同じです。設定・アプリの引き継ぎは期待できず、少なくとも再設定が必要になります。「非推奨」の区分ならDSMの構成とパッケージ設定は失われ、ボリューム上のユーザーデータだけが残ることになります。載せ替えを選ぶなら、実行前に必ずKBの互換表を見てください。
ext4のボリュームは、載せ替えてもBtrfsになりません
買い替えの目的そのものを台無しにしかねない点です。古いエントリー機(DS216jなど)の内蔵ボリュームはext4のみで、Btrfsが使えません。Btrfsのスナップショット(うっかり消したファイルを過去の時点に戻せる機能)が目当てで買い替えるなら、ディスクを載せ替えてはいけません。ext4のボリュームがそのまま新しい本体に引っ越すだけで、ファイルシステムは変わらないからです。
Btrfsにしたいなら、新しいNASでボリュームを作り直し、データを②か③で運び込む必要があります(ext4とBtrfsの違い)。
根拠:公式は「ファイルシステムを変更したいユーザー」向けの方法としてHyper Backupを案内しており(Synology「Synology NAS の移行」・2026年8月12日確認)、Migration Assistantもext4からBtrfsへの変更に非対応と明記されています。
①が向く人:早く復旧させたい/ext4のままでよい/ディスクは今のものを使い続ける。逆にBtrfsにしたい・ディスクも新しくしたい・失敗しても戻れる状態がほしいなら①は選ばないでください。
手段②:Hyper Backupで復元する
遠回りに見えて、いちばんやり直しが利く方法です。途中で失敗しても旧NASはそのまま残ります。
バックアップできるもの・復元の条件
公式スペックによると、対象はシステム全体・フォルダ・ファイル・LUNに加えてパッケージとシステム構成も含まれます。保存先はローカルの共有フォルダ・外付けドライブ・別のSynology NAS・クラウドなど。ただし、復元には次の条件がつきます。
| 条件(システム全体を復元する場合) | 内容 |
|---|---|
| モデル | 復元先は、移行元と同じか、より新しいモデルであること |
| ドライブ本数・容量 | 復元先のドライブ本数と利用できるストレージ容量が、移行元と同等以上であること |
| ドライブの構成 | ドライブの種類(SSDかHDDかの別)と挿すスロット位置が移行元と揃っていること。容量の一致は求められません |
| その他 | 暗号化ボリュームはバックアップ中にロック解除が必要 |
出典:Synology Hyper Backup テクニカルスペック(2026年8月12日確認)。上の3条件は、制限事項に「システム全体を復元するには」満たすべき条件として示されているものです。
買い替えではモデルの条件は自然に満たされます。誤解されやすいのは本数と容量で、公式の表現は「一致」ではなく同等以上です。増やす・大きくする方向は条件内で、引っかかるのは減らす方向(4ベイ→2ベイ、8TB×2→4TB×2など)。ディスクを新調して容量を増やすという買い替えの王道は、この条件から外れません。
しかもこれは「丸ごと元の姿に戻す」復元モードの条件です。同じ公式ページの機能欄には、システム全体のバックアップデータから特定のフォルダや個別のファイルを復元できるとも書かれています。
⚠️ どの復元モードにどこまで条件が付くかの明細と、実際の画面の流れは、当サイトでは公式スペックの記載までしか確認できていません。ディスク構成を大きく変える予定なら、バックアップを取る前に復元手順のヘルプを一読してください。それでも行動は変わりません——取ったバックアップは消さずに残しておく。それだけで、読み違えてもやり直せます。
「全部そのまま戻る」とは書けません
Hyper Backupはパッケージとシステム構成も対象に含みます。ただし復元後にユーザー・権限・共有フォルダのACL・写真アプリのインデックスがどこまで元どおりになるかの明細は、当サイトでは確認できていません。現実的な構えは「ファイルは戻る。設定は戻るものと戻らないものがある」。復元後に権限とアプリ設定を見直す時間を確保しておいてください(NASの初期設定ガイド)。
Hyper Backupの画面の入り方とタスクの作り方はNASのバックアップ 3-2-1ルールにまとめてあります。移行の前半(旧NASでバックアップを取る)は、この手順とまったく同じ作業です。
②が向く人:ext4からBtrfsに変えたい/ディスクも新品にしたい/失敗しても旧NASを残したい。弱点は、バックアップを置く場所(外付けHDDや別NAS)の空き容量が要り、時間も「バックアップ+復元」の2回ぶんかかることです。
つまり②を選ぶなら、バックアップの保存先は「あると安心」ではなく必須です。別NASやクラウドでも成立しますが、買い替えの場面でいちばん手軽なのは外付けHDDを1台。準備1で確認した使用容量より大きいものを選びます。移行が終わったあとは3-2-1ルールの「2つ目のメディア」として使い回せるので、移行のためだけの出費にはなりません。
手段③:ネットワーク越しにファイルをコピーする
原始的で理解しやすい方法です。旧NASと新NASを同じLANにつなぎ、ファイルをコピーする——それだけ。やり方は主に2通りです。
- PCを経由する:両方の共有フォルダをPCにマウントしてコピーする。データがPCを2回通るので遅くなります
- NAS同士で直接:DSMには「共有フォルダ同期」があり、Synology NAS間でデータを同期できます(公式KB)。権限がどこまで同期されるか・一方向か双方向かといった仕様は当サイトで確認できていません
引き継げるのは「ファイルの中身」だけです
渡るのはフォルダとファイルの中身だけで、共有フォルダの権限設定・ユーザーアカウント・アプリ設定・写真アプリのアルバムやタグは引き継がれません。裏を返せばこの方法だけは移行元・移行先のメーカーや世代を問いません(後述の他社乗り換えの現実解でもあります)。
所要時間の目安:1TBあたり約2.5〜3.7時間(データ量÷転送速度)
データ量 ÷ 転送速度で概算できます。当サイトが持っている数字は2つ。
| 前提 | 速度 | 出どころ |
|---|---|---|
| 有線1GbEの実効目安 | 約110MB/s | DASとNASの比較で採用している一般的な実効値 |
| 当サイトの実測(DS223j・SMB) | 読み72.03MB/s・書き76.04MB/s | CrystalDiskMark 8.0.6(1GiB×5回)・Btrfs・RAID 1。Wi-Fi 6経由の測定で、有線ならより速くなる余地あり |
割り算すると次のとおりです。
| データ量 | 110MB/s なら | 76MB/s なら |
|---|---|---|
| 500GB | 約1.3時間 | 約1.8時間 |
| 1TB | 約2.5時間 | 約3.7時間 |
| 2TB | 約5.1時間 | 約7.3時間 |
| 4TB | 約10.1時間 | 約14.6時間 |
目安は「1TBあたり2.5〜3.7時間」。3時間前後を見込んでおけば、大きくは外れません。
この表は純粋な割り算です。実際にはもっとかかることのほうが多いと考えてください。
- 小さいファイルが大量にあると大幅に遅くなります。家族写真や音楽ライブラリのように1ファイル数MB以下が数万件あるフォルダは、シーケンシャル速度どおりには進みません
- PCを経由するとデータが2回ネットワークを通るため、実質半分の速度になることがあります
- 当サイトはHDD載せ替えやHyper Backup復元の実所要時間を計測していません。上の表は「ネットワーク越しにコピーした場合」の目安です
速度が出ないときの切り分けはNASが遅いときの改善へ。
コピーで気をつけること
Windowsのエクスプローラーによるコピーは、長いパス・特殊な文字を含むファイル名・タイムスタンプの扱いでつまずくことがあります。フォルダ単位で小分けにして、終わったら件数と容量を見比べる——地味ですが確実です。旧NAS側のデータを消す前に、新NAS側で中身が開けるかを必ず確認してください。
③が向く人:他社NASへ乗り換える/ディスク構成を大きく変える/外付けHDDなどのバックアップ先を用意できない。弱点はユーザー・権限・アプリ設定がまったく引き継がれないことと、容量ぶんの時間が丸ごとかかること。旧NASのデータは残るので、失敗しても振り出しに戻れるのは②と同じです。
移行先を選ぶときは「移行のしやすさ」も見ておく
どの機種に買い替えるかで、使える移行手段が変わります。
- 同じアーキテクチャ世代へ → 載せ替えの条件が最も素直
- x86系(Intel搭載)へ → Migration Assistantが配布されているアーキテクチャ(移行元側の条件もあるため公式の対応モデル一覧をご確認ください)
- 現行のエントリー機(DS223jなど
armv8世代)へ → Migration Assistantは選べない前提で②か③を計画。ほかの機種を検討中なら、CPUのarch値が配布アーキテクチャ(armv7/x86_64)に含まれるかを公式の対応表でご確認ください
ここは「費用」と「手数」のトレードオフです。
段取りを自分の手間で引き受けられるなら、エントリー機で十分です。2ベイの素直な買い替えなら、Synologyの現行機はDS223j。本体のみの実勢価格は36,000円前後(HDD別)で、HDDを載せ替えるなら本体代だけで買い替えが成立します。使った実感と弱点はDS223jの実機レビューにまとめてあります。無印DS223との差はDS223とDS223jの違いへ(この記事では機種の比較表は持ちません)。
逆に「移行の段取りに時間を使いたくない」「NASを止められる時間が短い」なら、先に検討すべきはx86系(Plusシリーズ)です。上位機は価格が上がるぶん、Migration Assistantという選択肢が残ります。armv8機との具体的な差はDS224+とDS223jの違いで7観点に整理しています(DS224+は終売のため、新規に買うなら後継のDS225+が基本です)。
価格の確認日:2026年7月28日時点。価格は変動しますので、購入前に販売ページで最新価格をご確認ください。
他社NASへ乗り換える場合(Synology → UGREEN など)
「せっかくだからメーカーも替えたい」という場合、話はシンプルです。選択肢が③しかありません。
メーカーをまたいで「まるごと移行」できるツールは、当サイトが調べた範囲では見つかりませんでした。SynologyのボリュームはSynology独自の構成でディスクに書かれており、他社製NASの管理画面がそれを読める前提は立たないためです。ネットワーク越しにファイルをコピーする(SMBやrsync)のが現実解になります。
UGREENの公式ブログも、移行方法としてネットワーク転送(同じLANにつないでコピー/rsync等)・ドライブの物理的な移動・クラウド経由の3つを挙げています。ただし他社NASからの具体的な手順は書かれていません。
出典:UGREEN「How to Migrate Data to a New NAS Storage System」(2026年8月12日確認)。
⚠️ 「UGREENには移行機能が無い」とは書けません。当サイトはUGOS Proのヘルプ本文を確認できておらず、他社NASからの取り込み機能やリモートマウント機能の有無を確かめていません。購入前に、移行先メーカーのヘルプで「バックアップ」「同期」「リモートマウント」系の機能を確認してください。
確実に言えるのはユーザー・権限・アプリの設定は作り直しになることです。共有フォルダの構成をメモしてから移ってください。
UGREEN NASync DXP2800の実感はDXP2800のレビューへ(運営者の保有機)。ただしSynologyから/への移行を実行した経験はありません。
移行当日の段取り(チェックリスト)
手段②か③を選んだ場合の流れです。
| # | やること | つまずきポイント |
|---|---|---|
| 1 | 失いたくないフォルダを別の場所へバックアップ | ここを省略すると以降が綱渡り |
| 2 | 旧NASの共有フォルダ構成・ユーザー・権限をメモ(スクショで十分) | 再設定するときの唯一の手がかり |
| 3 | 新NASを組み立て、DSMをインストールしてボリュームを作成 | Btrfsにするならここで選ぶ(初期設定ガイド) |
| 4 | 旧NASと新NASを同じLANへ(できれば有線・同じスイッチ)、データをコピー/復元 | 無線だと時間が読めない。フォルダ単位に小分けする |
| 5 | 新NASでファイルが開けるか確認(件数・容量・実際に数ファイル開く) | ここを飛ばして旧NASを消すのが最悪 |
| 6 | ユーザー・権限・共有設定・アプリを再設定し、スマホやPCの接続先を新NASへ | 写真の自動バックアップの付け替えを忘れがち |
| 7 | 1週間ほど旧NASのデータを残したまま様子を見てから、再利用か消去へ | 「あのフォルダが無い」は後から気づく |
最後の7番を強くおすすめします。移行の失敗は当日ではなく1週間後に気づきます。「あの年の写真フォルダだけコピーされていなかった」と分かったとき、旧NASにデータが残っていればただの取りこぼしですが、消していたら事故です。旧NASを空にするのは、新しいNASで日常の使い方を一通り試したあとで十分間に合います。
旧NASの第二の人生:使い続けるか、消してから手放すか
データを移し終えると、旧NASが1台余ります。ここからが意外と放置されがちなパートです。
選択肢A:新しいNASのバックアップ先にする
無駄がない使い道です。Hyper Backupは保存先として別のSynology NASを指定でき、受け側に入れるのがHyper Backup Vault。DS216jのプラットフォーム(armada38x)向けにも現行版が配布されています。
出典:Synology Download Archive(Hyper Backup Vault 4.2.2-4262)(2026年8月12日確認)。当サイトは旧機での動作を検証していません。「公式が現行版パッケージを配布している」までが確認できた事実です。
これが意味を持つのはバックアップ先を「別の筐体」に分けられるからです。1台のNASにRAID 1で入れているだけでは、本体の故障・誤削除・ランサムウェアに対応できません(3-2-1ルール)。
旧NASの中のHDDも、同じだけ古いという前提を忘れないでください。バックアップ先が先に飛んだのでは意味がありません。受け側として本気で使うなら、ディスクは新しいものに替えるべきです(NAS用HDDのおすすめ)。ただしバックアップ先は本番と同じ容量を積む必要がありません。守りたいデータが収まる範囲で、いちばん安い容量帯で十分です。
⚠️ そして長く電源を落としていた機体に久しぶりに通電すると、中のHDDがそのまま起動しないことがあります。通電を再開する瞬間がいちばん危ないと考えてください。取り出したいデータが残っているなら、使い始める前に救出を優先してください(NASのデータ復旧)。
選択肢B:売る・譲る・捨てる → その前に必ずデータを消す
こちらを選ぶならデータ消去が最優先です。取り返しがつかないのは、機械ではなく中身が流出することです。
「リセット」と「データ消去」は別物です
DSMにはコントロールパネル →「更新と復元」→「システムのリセット」があり、リセットには複数の段階があります。段階によっては、ネットワーク設定や管理者パスワードだけが初期化されてボリューム上のデータは残ります。「初期化したから大丈夫」と思って手放すのが、いちばん危険なパターンです。
⚠️ 各段階の正確な画面文言と挙動は、当サイトでは公式ヘルプ本文を確認できていません。実行前に、ご自分のDSMの画面で「データも消えるのか」を必ず読んでから押してください。押してからでは戻せず、操作の結果は自己責任になります。取り出したいデータが1つでも残っていないかを確かめてから実行してください。
DSMにはSecure Eraseがあります
公式KBには、廃棄・返送の前にドライブのデータを安全に消す方法としてSecure Eraseが案内されています。実行はストレージマネージャの「HDD/SSD」から。開始後は一時停止もキャンセルもできないとされています。
参考:Synology「How do I securely erase data on a drive?」/Synology DSMヘルプ(ストレージマネージャ HDD/SSD)。⚠️ これらのKBページも当サイトでは本文を直接取得できておらず、検索結果に表示される記載で確認した範囲です。実行前にご自身でページを開いてください。
「Secure Eraseすれば復元不可能」とは書きません。当サイトは消去方式や実行条件(プールに組み込まれたままでも実行できるのか等)を確認できておらず、実行した経験もありません。公式が「廃棄・返送前の手段として案内している」ところまでが確認できた事実です。
いちばん確実なのは、ディスクを抜いて手元に残すこと。本体だけを手放し、HDDは自分で保管する(あるいは物理的に破壊する)。中古で売るときも「HDDなし・本体のみ」のほうが手間もリスクも小さくなります。
捨てる場合:NASもHDDも小型家電リサイクルの対象です
小型家電リサイクル法の対象品目は政令で28品目と定められており、その中に「パーソナルコンピュータ」と「磁気ディスク装置、光ディスク装置その他の記憶装置」が含まれます。NAS本体もHDDも、ど真ん中で対象です。
出典:環境省 中部地方環境事務所「小型家電リサイクル法」(2026年8月12日確認)/制度の概要は環境省「小型電子機器等リサイクル制度」。
回収はお住まいの市区町村か、国(環境大臣)の認定を受けた事業者が窓口です。自治体によって出せる品目・出し方が違うため、この記事では「◯◯市ではこう」とは書きません。なおデータ消去は自分でやってから出すのが実務上の鉄則です。回収する側が消してくれる前提で考えないでください。
よくある質問(FAQ)
armv7とx86_64の2種類だけ。DS223jのCPU(RTD1619B)は公式の対応表でarmv8とされ、この世代には入れられません。まとめ
- つまずくのは本体選びではなくデータの渡し方。手段は「①HDD載せ替え」「②Hyper Backupで復元」「③ネットワーク越しにコピー」の3つ
- Migration Assistantは移行先に入れるツール。配布は
armv7とx86_64のみで、DS223j世代(armv8)には入れられません - 載せ替えは「設定もアプリもそのまま」ではありません。世代が違う組み合わせは再設定が必要か非推奨のどちらか(どちらかは当サイト未確認)。ext4は載せ替えてもBtrfsになりません
- ②の復元条件は丸ごと戻す場合のもの。本数と容量は「同等以上」=ディスクを増やす・大きくする方向は条件内
- 迷ったら旧NASのデータが残るかどうかで選ぶ。①だけは戻り先がありません
- 所要時間は「データ量 ÷ 転送速度」。実測76.04MB/s(Wi-Fi 6経由)と有線1GbEの目安110MB/sで1TBあたり約2.5〜3.7時間。小さいファイルが多いとさらに延びます
- 旧NASはバックアップ先に回すか消してから手放すかの二択。リセットの種類によってはデータが残ります。NASもHDDも小型家電リサイクル法の対象品目
- ⚠️ 長く止めていた機体の再通電はいちばん危ない瞬間。取り出したいデータがあるなら救出を最優先に
最後に正直なところを書いておきます。運営者宅には2ベイNASが3世代並んでいますが、過去に機種を替えたときどの方法でデータを移したのか、記録が残っていません。
そして、その「記録が残っていない」こと自体がいちばんの教訓かもしれません。移行当日にやるべきことは、コピーを走らせること以上に旧NASの構成をメモに残し、終わったことを自分の目で確かめることです。今のNASの共有フォルダ一覧をスクリーンショットで撮り、退避先の外付けHDDを1台用意しておく——買い替えを考え始めた今日にできるのは、この2つです。容量は準備1で確認した使用容量より大きいものを1台。移行後はそのままバックアップ用に回せます。①でも②でも③でも、この2つは必ず効きます。