「RAWと4K動画をNASに置きたい。でも何TB買えば足りるのかが分からない」——カメラのデータは1枚・1分の単位が大きいぶん、スマホ写真の感覚で容量を決めると数年で行き詰まります。
「自分の撮影量から必要容量を逆算して、買う構成を決める」手順を、カメラとNASのメーカー公式値だけでまとめました。
この記事のスタンス:筆者はプロの写真家ではありません。家族の写真を10年ぶん守ってきた運営者として、Adobe・Canon・Sony・Synologyの公式仕様と計算できる数値で組み立てています。実機はSynology DS223jとUGREEN NASync DXP2800を運用していますが、RAW現像を業務で回した経験はないため、RAW現像や動画編集まわりの体感・印象は書きません。
結論:先に決めるのは機種ではなく「年間に増える量」
- NASは編集する場所ではなく、原本を置いて守る場所。Lightroom Classicのカタログは公式にネットワーク非対応(写真本体は置ける)
- RAW+JPEGで月500枚+4K30pを月30分なら年約516GB。4TB×2のRAID 1(実効約3.6TB)で満杯まで約7年(空き2割を残す運用なら約5.6年)
- 写真用だからM.2 SSDキャッシュ、は根拠が弱い。Synology公式は「シーケンシャル アクセス パターンを含むシナリオでは…向上させません」と明記=RAWや動画の転送には効かない
- DS223jなどのJシリーズは顔認識のみで物体(被写体)認識に非対応。DS225+/DS425+は対応群だがメモリ2GB標準で、公式は4GB以上への増設を案内している
- 急ぐ方へ:年間に増える量が分かっているなら、後半の「撮る量から選ぶ、機種の分岐」の表が答えです(年100〜200GBなら2ベイ+4TB×2、年1TB超なら4ベイ)
NASは「編集する場所」ではなく「原本を置いて守る場所」
機種選びの前に、NASが写真ワークフローのどこを担当するのかをはっきりさせます。
Lightroom Classicのカタログはネットワークに置けない
Adobeの公式FAQは、次のように明言しています。
No, you can't store catalogs on a network but you can store or share your photos on a network.
要旨は「カタログはネットワークに保存できないが、写真そのものはネットワークに置いて共有できる」。NASにRAWの原本を置くこと自体は公式に想定された使い方で、禁じられているのはカタログの置き場所だけです。
出典:Adobe「Lightroom Classic カタログに関するFAQ」(2026年8月12日確認)
同じFAQはスマートプレビューが「ネットワークから切断されていても編集できる」とも説明しています。原本はNAS、カタログとスマートプレビューはPCのローカル——これが公式の逃げ道です。
Premiere ProとCapture Oneは、結論が同じではない
ソフトごとに結論が違います。Premiere Proなどの映像製品は、Adobeがローカルディスクでの使用をサポート範囲として案内し、ネットワーク経由の素材はローカルへ転送してから開くことを推奨(公式ページの要旨・原文の直接取得はできていません)。Capture Oneはカタログをネットワークドライブに保存できますが、公式は性能面からローカル保存を推奨しています(サポート記事2本の原文を確認)。
参考:Adobe「Networks, removable media, and Digital Video」/Capture One「Catalog on a network drive」/同「Importing and storing images on a network drive」(2026年8月12日確認)
共通するのは「作業ファイルはローカル、素材の置き場はネットワークでもよい」という線引きです。写真・動画用NASに求められるのは、編集マシンの速さではなく「大量の原本を安全に置き続ける容量と冗長性」です。
「クラウドではだめなのか」も先に片付けます。写真だけならクラウドで足りる人もいますが、RAWの原本+4K動画を丸ごと預けるとなると容量課金と毎回数十GBのアップロードが効いてきます(損得の整理はNASとクラウドストレージの違い)。本記事は「NASを使うと決めた人が、何TB買うか」に絞ります。
RAW1枚・4K1分は何MBか(メーカー公式値)
静止画:24MPで1枚26.1MB、33MPなら約46MB
Canon EOS R6 Mark II(2420万画素)の公式FAQは、記録形式ごとのファイルサイズを公開しています(下表)。
| 記録形式 | 1枚あたり(Canon公式) |
|---|---|
| RAW | 26.1MB |
| C-RAW(コンパクトRAW) | 13.2MB |
| JPEG ファイン・ラージ | 8.2MB |
| HEIF ファイン・ラージ | 8.3MB |
| RAW+JPEGファインL | 34.3MB |
出典:キヤノン「EOS R6 Mark II 記録可能枚数・ファイルサイズ」(32GBカード使用時の測定値。撮影条件で変動します)
より高画素のSony α7 IV(3300万画素)は、公式が記録可能枚数しか公開していません。以下の1枚あたりは当サイトが64GB=64,000MBから逆算した参考値です。
| 記録形式 | 64GBでの記録可能枚数(Sony公式) | 1枚あたり(当サイト逆算) |
|---|---|---|
| 圧縮RAW | 1,400枚 | 約 45.7MB |
| ロスレス圧縮RAW(L) | 1,200枚 | 約 53.3MB |
| 非圧縮RAW | 760枚 | 約 84.2MB |
出典:ソニー「静止画の記録可能枚数(ILCE-7M4)」(画像サイズL:33M。枚数のみが公式値で、右列は当サイトの逆算です)
同じ「RAWで撮る」でも、圧縮方式と画素数で1枚あたり13MB〜84MB、6倍以上の開きがあります。自分のカメラの実際の1枚あたりMBは、SDカードのプロパティで実ファイルを1枚見れば確定します。
動画:4K30pは1分860MB、4K60pなら1分1,647MB
同じCanon公式FAQは、動画のビットレートとMB/分も公開しています(1時間あたりは当サイト計算)。
| 記録サイズ | フレームレート | ビットレート | 1分あたり(Canon公式) | 1時間あたり(当サイト計算) |
|---|---|---|---|---|
| 4K UHD | 59.94/50.00p | 230Mbps | 1,647MB | 約 98.8GB |
| 4K UHD | 29.97/23.98/25.00p | 120Mbps | 860MB | 約 51.6GB |
| 4K UHD(軽量) | 29.97/23.98/25.00p | 60Mbps | 431MB | 約 25.9GB |
Canon Log/HDR PQをONにすると4K 29.97pは170Mbps=1分1,218MB(約73.1GB/時)に増えます。Log撮影に切り替えるだけで、同じ尺の容量が約1.4倍になる計算です。
Sony α7 IVのXAVC S 4Kは60pで150Mbps、30p・24pで100Mbpsまたは60Mbps(公式仕様)。100Mbpsは1分750MB=1時間45GBです(当サイト計算)。
年間に増える量を逆算する
公式値を撮り方のパターンに当てはめます。この表の1行が、機種選びの入口です。
| 撮り方 | 計算の前提(公式値) | 1か月 | 1年 |
|---|---|---|---|
| 24MPクラスをRAWのみ・月300枚 | 26.1MB×300 | 約7.8GB | 約 94GB |
| 24MPクラスをRAW+JPEG・月500枚 | 34.3MB×500 | 約17.2GB | 約 206GB |
| 33MPクラスを圧縮RAW・月500枚 | 45.7MB×500 | 約22.9GB | 約 274GB |
| 33MPクラスを非圧縮RAW・月500枚 | 84.2MB×500 | 約42.1GB | 約 505GB |
| 4K 30p(120Mbps)を月30分 | 860MB×30 | 約25.8GB | 約 310GB |
| 4K 60p(230Mbps)を月30分 | 1,647MB×30 | 約49.4GB | 約 593GB |
| 写真も動画も撮る人(RAW+JPEG月500枚+4K30p月30分) | 上2つの合算 | 約43GB | 約 516GB |
逆算の式はこれだけ
必要な実効容量 = 1年に増える量 × 使いたい年数 ÷ 0.8
÷0.8は「空き容量を2割は残す」ぶん。空きが尽きたNASは書き込みも整理も苦しくなります。次章の年数表は「満杯まで何年か」の上限値なので、実運用の目安は0.8倍して見てください。
例)年516GB × 10年 ÷ 0.8 = 約6.5TB の実効容量が必要
動画は「月30分」の単位で見積もると現実的です。1回の運動会で4K30pを20分回せば約17GB=RAW 約660枚ぶんに相当します。
逆に「4TBで何枚・何時間ぶん」なのか
容量の側から見るとこうなります(当サイト計算・満杯までの目安)。
| 実効容量 | 24MP RAW(26.1MB) | 33MP圧縮RAW(45.7MB) | 4K30p(860MB/分) | 4K60p(1,647MB/分) |
|---|---|---|---|---|
| 500GB | 約1.9万枚 | 約1.1万枚 | 約9.7時間 | 約5.1時間 |
| 4TB×2・RAID 1(約3.6TB) | 約 13.8万枚 | 約7.9万枚 | 約 70時間 | 約36時間 |
| 8TB×2・RAID 1(約7.3TB) | 約28.0万枚 | 約16.0万枚 | 約141時間 | 約74時間 |
1TB=1,000,000MBとして割った満杯までの目安です。
写真以外(PCバックアップやTime Machine)も同じNASにまとめるなら、合算での決め方をNASの容量は何TB必要?で扱っています(同記事は公称容量表記で「4TB×2=実効4TB」、本記事はOS表示の約3.6TBで数えています)。
何TBを何本で組むか(RAID 1・バックアップ込み)
この記事はRAID 1と別媒体へのバックアップを前提に組みますが、本数と予算の配分は次の4つの条件で変わります。
答えが変わる4つの条件
- 原本はNASだけか:NASにしか無いデータがあるなら、RAIDより先に「別の場所へのコピー」が要ります
- 故障した日にどれだけ困るか:復旧に数日かかっても困らないなら「1本運用+バックアップ」でも要件は満たせます(バックアップから戻せることが前提)。止めたくない・当日中に戻したいなら2ベイでRAID 1
- 別の媒体へコピーする頻度:週1回でも外付けHDDにコピーしていれば、失う可能性があるのは原則として最後のコピー以降=最長1週間分です(コピーが正常に終わり、復元できることが前提。つなぎっぱなしの外付けHDDはランサムウェアで道連れになるため、コピー後は取り外してください)
- そのうえで予算をどこに使うか:1本運用(本体+HDD 1本)→ RAID 1(HDD 2本)→ 上位機(本体を上げる)の順に高くなります。総額は「本体+HDD」と「バックアップ先込み」に分けて考えてください
逆算した実効容量をHDDの構成に翻訳します。効いてくるのが公称容量と実効容量のズレです。
- 公称4TBのHDDは、OS表示では約3.6TB(メーカーは10進、PCやNASは1,024進で数えるため。システム領域も引かれます)
- RAID 1(ミラーリング)は2本で1本ぶんしか使えない。4TB×2本=実効約3.6TB
- 4ベイでSHRやRAID 5を組むと、4TB×4本=実効約10.9TB(1本ぶんが冗長に使われる)
RAIDの仕組みはRAIDとSynology SHRの違いへ。ここでは容量の話に絞ります。
| 1年に増える量 | 4TB×2・RAID 1(約3.6TB) | 8TB×2・RAID 1(約7.3TB) | 4TB×4・SHR/RAID 5(約10.9TB) |
|---|---|---|---|
| 約206GB(RAW+JPEG中心) | 約17年 | 約35年 | 約53年 |
| 約516GB(写真+4K30p) | 約 7年 | 約 14年 | 約21年 |
| 約1,098GB(非圧縮RAW+4K60p) | 約3年 | 約7年 | 約10年 |
満杯までの年数です。増加量は10進(1GB=1,000MB)、実効容量はOS表示(1,024進)で計算しているため保守側に出ます。空き2割を残す運用なら0.8倍(例:年516GBで4TB×2なら約5.6年)。
17年・53年は「容量が尽きるまで」の計算です。HDDは容量より先に寿命が来ます。空きが余っていても、数年おきの入れ替えを予算に見てください(前兆はHDD故障の予兆とS.M.A.R.T値の見方、手順はNASのHDD交換手順)。24時間稼働の電気代の目安はNASの電気代へ。
RAIDは冗長化であってバックアップではありません。RAID 1はHDD1本の故障に耐えるだけで、誤削除・ランサムウェア・水没・盗難・NAS本体の故障には無力です。撮り直しのきかない写真なら、同じ容量のバックアップ先も同時に予算へ(費用はおおむね2倍)。組み方は3-2-1ルールへ。
RAW中心で動画をあまり撮らない人は、4TB×2で10年以上もちます。年200GBペースで12TBを買う理由は計算上ありません。容量を積むべきなのは、4K動画を常用する人と非圧縮RAWを選ぶ人です。
24時間動き続けるNASでは、記録方式がCMRのNAS用ドライブを選びます(CMR/SMRの違いはNAS用HDDのおすすめ比較)。定番のWD Red Plus 4TB(WD40EFZZ)は1本約32,500円(2026年9月8日時点の当サイト調べ)。Synology機なら1本(Basic)で始め、あとから2本目を足してRAID 1/SHRへ変換する道もあります(DSMの機能。機種・構成によっては選べず、データ消失の可能性があるためバックアップ後に自己責任で)。1本の間はミラーリングが効かないので、2本目は期限を決めて足してください。
1GbEで足りるか:転送時間を作業の単位に置き換える
容量の次に迷うのがネットワーク速度です。「RAWは重いから2.5GbEが必要では」という疑問に、当サイトの実測値で答えます。
| 回線・条件 | 転送速度 | 出どころ |
|---|---|---|
| 1GbE 理論値 | 125MB/秒 | 1Gbps÷8 |
| 1GbE 実測(DXP2800・HDD 2本のRAID 1) | 書込 112.4/読出 108.4MB/秒 | 10GBファイル転送・2026年9月8日 |
| 2.5GbE 実測(同じ機体・2.5GbEハブ経由) | 書込 139.7/読出 148.5MB/秒 | 同上(10GBファイル)。1GbEの1.24〜1.37倍 |
| 2.5GbE 理論値 | 最大312.5MB/秒 | UGREEN公式の仕様値。HDDが壁になり届きません |
| 当サイト実測(DS223j・SMB) | 読み72.03/書き76.04MB/秒 | CrystalDiskMark 8.0.6(1GiB×5回)・Wi-Fi 6経由 |
2.5GbE・1GbEの実測は2026年9月8日、PC─2.5Gハブ─UGREEN NASync DXP2800(HDD 2本・RAID 1)で10GBファイルを3回転送した中央値です。1GbE側は同じPCのNICを1.0Gbpsに固定した対照です。回線側はiperf3で約296MB/s出ており、頭打ちの原因はHDD側でした(全数値はNASの2.5GbE化は何倍速い?)。DS223jの値はWi-Fi 6経由で(測定画面はext4とBtrfsの違い)、有線接続の実測値は計測できていません。理論値の出典はUGREEN NASync DXP2800 製品ページ。
この数字を写真の作業単位に置き換えると、次のようになります(いずれも当サイトの計算)。
| 作業 | DS223j 76.04MB/秒(Wi-Fi 6・ベンチ) | 1GbE実測 112.4MB/秒(有線・実ファイル) | 2.5GbE実測 139.7MB/秒(有線・実ファイル) |
|---|---|---|---|
| 1回の撮影ぶん32GB(24MP RAW約1,200枚相当)をNASへ | 約 7.0分 | 約 4.7分 | 約 3.8分 |
| 1年ぶん500GBを初回移行 | 約1.8時間 | 約1.2時間 | 約1.0時間 |
| 蓄積5TBを丸ごと移行 | 約18.3時間 | 約12.4時間 | 約9.9時間 |
小さいファイルが大量に混じると、上記より大幅に延びます。DS223jの列はWi-Fi 6経由のベンチ値、右2列は有線の実ファイル転送で条件が異なります(機種の優劣ではありません)。
撮影1回ぶんの取り込みは、2.5GbEにしても4.7分→3.8分。差が効くのは蓄積5TBの移行(12.4時間→9.9時間)や、毎回数百GBを動かす動画中心の運用です。
「写真用だからM.2 SSDキャッシュ」は公式の説明と食い違う
「写真・動画用ならSSDキャッシュを積むべき」という説明を見かけますが、Synology公式はSSDキャッシュが効く場面と効かない場面を分けています。
| SSDキャッシュ | 公式の記載 |
|---|---|
| 効くケース | 入出力がランダムに配置された小さなデータブロックへ頻繁にアクセスする場合(データベース・仮想マシン等。同じファイルサーバーでも主にシーケンシャルなら効かない側に分類) |
| 効かないケース | 「シーケンシャルアクセスパターンを含むシナリオではパフォーマンスを向上させません」。例として大容量ファイルのアップロード/ダウンロード・ビデオストリーミングが挙げられている |
| メモリ要件 | DSM 7.0以降でSSDキャッシュ1GBあたり400KBのシステムメモリを消費。上限は内蔵メモリの4分の1 |
出典:Synology「SSDキャッシュを作成する際の重要な考慮事項」(2026年8月12日確認)
RAWの取り込みや動画の書き戻しは、大きなファイルを連続して読み書きするシーケンシャル転送そのものです。公式の分類に当てはめれば、ここにSSDキャッシュを足しても転送は速くなりません。上限を決めているのはLANの帯域とHDDの連続転送性能だからです。一方、Synology Photosで数万枚のサムネイルを表示する操作は小さなファイルへのランダムアクセス寄りで、効く余地はあります。
- 原本の転送を速くしたい → LANの帯域とHDDの選択が効く(SSDキャッシュは対象外)
- 大量サムネイルの閲覧を軽くしたい → SSDキャッシュに余地あり(メモリを消費する)
M.2の有無で機種を1ランク上げる前に、自分が遅いと感じているのはどちらなのかを切り分けてください(原因の切り分け全般はNASが遅いときの改善方法)。
買ってから気づく機能差:Jシリーズは物体認識に非対応
見落とされやすいのが、エントリー機(Jシリーズ)とPlusシリーズのソフトウェア機能差です。Synologyの公式KBは、対応モデルを「顔と物体の認識」と「顔認識のみ」の2群に分けています。
| 分類 | 該当モデル(本記事に関係する範囲) |
|---|---|
| 顔と物体の認識 | DS225+/DS425+/DS925+/DS725+ ほかPlus系 |
| 顔認識のみ(=物体認識に非対応) | DS223j/DS223/DS124/DS220j/DS420j ほか |
出典:Synology「Synology Photos の顔認識機能をサポートするモデル」(2026年8月12日確認)
「海」「花」「料理」といった被写体でアルバムを自動生成する機能は、DS223jでは使えません(顔での分類は動きます)。用途が「家族写真の保管と共有」なら顔認識だけでも実用になるというのが、DS223jを1年以上運用してきた実感です(Synology DS223jのレビュー)。
注意が必要なのは上位機のほうです。同じKBにはメモリ2GB標準のモデルに「メモリ容量を最低4GBにアップグレードして、オブジェクト認識機能を取得してください」という注記があり、DS225+とDS425+はどちらもメモリ2GB標準(公式スペック)です。
つまりDS225+やDS425+を買っただけでは、物体認識が動かない可能性があります。上位機を物体認識目的で選ぶなら、メモリ増設のぶんも予算に入れてください。この注記(脚注2)はDS224+・DS723+・DS423+などメモリ2GB標準のPlus系に共通です(2026年8月12日に公式KB本文で確認)。購入前にご自身でもご確認ください。
逆に、物体認識を最初から使わないと決めるなら、この分岐は消えます。
RAWのサムネイル表示は機種を問わずSynology Photosが対応し、公式のテクニカルスペックにはcr2・cr3・nef・arw・raf・orf・rw2・dngなど主要メーカーのRAWが挙げられています。ただしHEIC/HEIF/HEVCは、追加プレビューや圧縮ビデオの生成に「Synology Image Assistant」のインストールが必要です。
大量のRAWを取り込んだときの初回インデックスの所要時間は、メーカー非公表で当サイトも計測していません。スマホ写真の自動バックアップ手順はスマホの写真をNASに自動バックアップする方法にまとめています。
撮る量から選ぶ、機種の分岐
ここまでの逆算を1つの表にまとめます。縦軸は「年間に増える量」だけです。
| 年間に増える量 | 5年後の総量 | 必要な実効容量(空き2割込み) | 構成の目安 | 本体の候補(執筆時点の実勢) |
|---|---|---|---|---|
| 年100〜200GB(RAW中心・月300〜500枚) | 0.5〜1TB | 約1.3TB | 2ベイ+4TB×2 | Synology DS223j 約36,000円 |
| 年300〜600GB(RAW+JPEG+4Kをときどき) | 1.5〜3TB | 約3.8TB | 2ベイ+8TB×2 | Synology DS225+ 約64,000円/UGREEN DXP2800 約53,000円 |
| 年1TB超(非圧縮RAW・4K60p常用) | 5TB超 | 約6.3TB | 4ベイ+4TB×4(SHR/RAID 5) | Synology DS425+ 約105,000円 |
価格は当サイト調べの実勢価格(2026年8月22日時点)。変動が大きいため、購入前に最新価格をご確認ください。
HDDを含めた総額は次のとおりです(WD Red Plus 4TBが約32,500円、8TBが約50,800円として計算)。
| 構成 | 本体+HDDの総額 |
|---|---|
| DS223j+4TB×2(実効約3.6TB) | 約101,000円 |
| DS225++8TB×2(実効約7.3TB) | 約165,600円 |
| DS425++4TB×4(実効約10.9TB) | 約235,000円 |
この総額にバックアップ先の費用は含みません。3-2-1ルールなら同容量の2つ目のコピー(外付けHDDまたは2台目のNAS)も足して見積もります(外付けHDD/SSDの選び方)。外付けHDD 4TB(28,880円)を足す場合、DS223j+4TB×2はバックアップ先込みで129,880円が目安です。
HDD代のほうが本体代より大きくなる構成が多いのが、いまの相場です。本体のグレードを上げる予算があるなら、先に容量とバックアップ先へ回すほうが目的に合います(HDD相場はHDD値上がりはいつまで?)。
どれを選ぶかの判断材料
- DS223j:物体認識なし、メモリ1GBで増設不可、1GbE、M.2なし。「原本の保管庫」に徹するなら十分(レビュー)
- DS225+:2.5GbEと物体認識の対応群。メモリ2GB標準で、物体認識には増設が必要という公式注記あり
- UGREEN DXP2800:2.5GbE・メモリ8GB・M.2×2。上の2.5GbE実測もこの機体です(レビュー)。UGOS ProのAI画像認識は搭載されていますが、対応RAW形式や顔認識の対応条件を示す公式技術資料を当サイトでは確認できていません
- DS425+:4ベイでSHR/RAID 5が組め、容量効率が上がります(4ベイNASの選び方)
「年300〜600GB」の行に当てはまった方は、DS225+(約64,000円)が第一候補です。2.5GbEと物体認識の対応群という2点が、DS223jとの実質的な差です(メモリ注記は増設ぶんの予算を見込めるなら解決します)。
この記事の裏取りと検証状況
逆算に使った数値(RAW1枚26.1MB・4K30p 1分860MB・SSDキャッシュの適用範囲・Jシリーズの機能差)は、すべてメーカー公式の記載で裏を取ったものです。当サイトの検証状況は以下のとおりです。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| NAS上でのLightroom/Premiereの動作検証 | 未実施。カタログの置き場所はAdobe公式の記載に基づく記述です |
| 2.5GbE機の実効転送速度 | 実測あり(2026年9月8日・DXP2800 HDD 2本のRAID 1・2.5GbEハブ経由): 10GB転送で書込139.7/読出148.5MB/s=1GbE(112.4/108.4)の1.24〜1.37倍。回線の理論値312.5MB/sにはHDDが壁で届きません(実測記事) |
よくある質問(FAQ)
まとめ
先に決めるのは年間に増える量。そこから必要な実効容量・ベイ数・機種の順に一本道でつながります。
- 公式値はRAW 26.1MB(24MP)・4K30pは1分860MB。写真+4K30pを撮る人で年約516GB
- 必要な実効容量=年間の増加量×使いたい年数÷0.8。年516GBなら4TB×2で満杯まで約7年(空き2割運用なら約5.6年)、8TB×2で約14年
- NASは原本を置いて守る場所。Lightroomのカタログはネットワークに置けず、SSDキャッシュもシーケンシャル転送には効かない(Adobe・Synology公式)
- 2.5GbE化の効果は10GB級で1.24〜1.37倍、NASのメモリに収まる1GB級で1本目が2倍超(当サイト実測)。HDD 2本のRAID 1では大きいファイルは回線の理論値に届かない
- RAID 1はバックアップではないので、同容量のバックアップ先も同時に予算化する
年200GBペースなら4TB×2で10年以上。多くの人は、思っているより小さい構成で足ります。浮いた予算は本体のグレードではなく、CMRのNAS用HDDでそろえたバックアップ先に回してください。