更新日:2026年8月12日|カテゴリ:選び方・おすすめランキング

「RAWと4K動画をNASに置きたい。でも何TB買えば足りるのか、どの機種なら困らないのかが分からない」——カメラのデータは1枚・1分の単位が大きいぶん、スマホ写真の感覚で容量を決めると数年で行き詰まります。

この記事は、カメラメーカーが公式に出しているファイルサイズと、NASメーカーが公式に書いている機能制限だけを材料に、「自分の撮影量から必要容量を逆算して、買う構成を決める」手順をまとめたものです。

この記事のスタンス:筆者はプロの写真家ではありません。家族の写真を10年ぶん守ってきた運営者として、Adobe・Canon・Sony・Synologyの公式仕様と、そこから計算できる数値だけで組み立てています。実機はSynology DS223jとUGREEN NASync DXP2800を保有・運用していますが、RAW現像を業務で回した経験はないため、RAW現像や動画編集まわりの体感・印象は書きません(実機で運用している範囲のことは、そう分かるように書きます)。

結論:先に決めるのは機種ではなく「年間に増える量」

  • NASは編集する場所ではなく、原本を置いて守る場所。Lightroom Classicのカタログは公式にネットワーク非対応(写真本体は置ける)
  • RAW+JPEGで月500枚+4K30pを月30分なら年約516GB。4TB×2のRAID 1(実効約3.6TB)で満杯まで約7年(空き2割を残す運用なら約5.6年)
  • 写真用だからM.2 SSDキャッシュ、は根拠が弱い。Synology公式は「シーケンシャル アクセス パターンを含むシナリオではパフォーマンスを向上させません」と明記=RAWや動画の転送には効かない
  • DS223jなどのJシリーズは顔認識のみで物体(被写体)認識に非対応。DS225+/DS425+は対応群だがメモリ2GB標準で、公式は4GB以上への増設を案内している
  • 急ぐ方へ:年間に増える量がもう分かっているなら、後半の「撮る量から選ぶ、機種の分岐」の表がそのまま答えになります(年100〜200GBなら2ベイ+4TB×2、年1TB超なら4ベイ)

NASは「編集する場所」ではなく「原本を置いて守る場所」

機種選びの前に、NASが写真ワークフローのどこを担当するのかをはっきりさせます。ここを間違えると、高い機種を買っても期待した使い方ができません。

Lightroom Classicのカタログはネットワークに置けない

AdobeはLightroom Classicのカタログに関する公式FAQで、次のように明言しています。

No, you can't store catalogs on a network but you can store or share your photos on a network.

要旨は「カタログはネットワーク上に保存できないが、写真そのものはネットワーク上に置いて共有できる」。つまりNASにRAWの原本を置くこと自体は公式に想定された使い方で、禁じられているのはカタログファイルの置き場所だけです。

出典:Adobe「Lightroom Classic カタログに関するFAQ」(2026年8月12日確認)

同じFAQはスマートプレビューについても、「ネットワークから切断されていても、写真のあるドライブから切断されていても編集できる」と説明しています。原本はNAS、カタログとスマートプレビューはPCのローカル——これがAdobeが用意している逃げ道であり、NAS運用の基本形になります。

Premiere ProとCapture Oneは、結論が同じではない

「Adobeが言っているのだから全部同じ」とまとめると事実誤認になるので、ソフトごとに分けておきます。

ソフト ネットワーク上のデータの扱い 当サイトの確認度
Lightroom Classic カタログはネットワークに保存不可/写真本体は保存・共有可 公式FAQの原文を確認
Premiere Pro 等の映像製品 Adobeはローカルディスク上での使用をサポート範囲として案内。ネットワークやリムーバブルメディア経由では問題が起きやすく、その場合はローカルへ転送してから開くことを推奨 公式ページの要旨(原文の直接取得はできていません)
Capture One カタログをネットワークドライブに保存はできる。ただし公式は「性能を上げるにはカタログをローカル(PC側)に保存することを推奨」としている 公式サポート記事2本の原文を確認

参考:Adobe「Networks, removable media, and Digital Video」Capture One「Creating and saving a Catalog on a network drive」Capture One「Importing and storing images on a network drive」(2026年8月12日確認)

3つに共通するのは「作業ファイルはローカル、素材の置き場はネットワークでもよい」という線引きです。だから写真・動画用のNASに求められる性能は、編集マシンの速さではなく「大量の原本を安全に置き続ける容量と冗長性」に寄ります。

予算配分に置き換えると、こうなります。本体のグレードを1つ上げるより、同じ金額をHDDの容量と2つ目のコピー(バックアップ先)に回すほうが、「原本を失わない」という目的には直結します。

「クラウドではだめなのか」という疑問は、先に片付けておきます。写真だけならクラウドで足りる人はいます。ただし本記事が前提にしている「RAWの原本+4K動画」を丸ごと預ける使い方になると、容量に応じた月額と、撮影のたびに数十GBを上げ続ける手間が効いてきます。NASは月額が不要な代わりに初期費用と管理の手間が要る——という損得の整理はNASとクラウドストレージの違いにまとめました。この記事は「NASを使うと決めた人が、何TB買うかを決める」ための記事です。

RAW1枚・4K1分は何MBか(メーカー公式値)

逆算の材料になる数字を、メーカー公式の値だけで並べます。

静止画:24MPで1枚26.1MB、33MPなら約46MB

Canon EOS R6 Mark II(2420万画素)の公式FAQは、記録形式ごとのファイルサイズを公開しています。

記録形式 1枚あたり(Canon公式)
RAW 26.1MB
C-RAW(コンパクトRAW) 13.2MB
JPEG ファイン・ラージ 8.2MB
HEIF ファイン・ラージ 8.3MB
RAW+JPEGファインL 34.3MB

出典:キヤノン「EOS R6 Mark II 記録可能枚数・ファイルサイズ」(32GBカード使用時の測定値。被写体・ISO感度・ピクチャースタイル等の撮影条件で変動します)

より高画素のSony α7 IV(3300万画素)は、公式ヘルプガイドが記録可能枚数の形で公開しています。1枚あたりのMBはメーカーが公表していないため、以下は当サイトが64GB=64,000MBから逆算した参考値です。

記録形式 64GBでの記録可能枚数(Sony公式) 1枚あたり(当サイト逆算)
圧縮RAW 1,400枚 45.7MB
ロスレス圧縮RAW(L) 1,200枚 約 53.3MB
非圧縮RAW 760枚 84.2MB
JPEG エクストラファイン 2,300枚 約 27.8MB

出典:ソニー「静止画の記録可能枚数(ILCE-7M4)」(画像サイズL:33M・アスペクト比3:2。枚数のみが公式値で、右列は当サイトの逆算です)

同じ「RAWで撮る」でも、圧縮方式と画素数で1枚あたり13MB〜84MB、6倍以上の開きがあります。自分のカメラの実際の1枚あたりMBは、SDカードのプロパティで実ファイルを1枚見れば確定します。

動画:4K30pは1分860MB、4K60pなら1分1,647MB

同じCanon公式FAQは、動画のビットレートとMB/分まで公開しています。1時間あたりは当サイトの計算です。

記録サイズ フレームレート ビットレート 1分あたり(Canon公式) 1時間あたり(当サイト計算)
4K UHD 59.94/50.00p 230Mbps 1,647MB 98.8GB
4K UHD 29.97/23.98/25.00p 120Mbps 860MB 51.6GB
4K UHD(軽量) 29.97/23.98/25.00p 60Mbps 431MB 約 25.9GB
フルHD 59.94/50.00p 60Mbps 431MB 約 25.9GB
フルHD 29.97/23.98/25.00p 30Mbps 216MB 約 13.0GB

Canon Log/HDR PQをONにすると4K 29.97pは170Mbps=1分1,218MB(約73.1GB/時)に増えます。Log撮影に切り替えるだけで、同じ尺の容量が約1.4倍になる計算です。編集の自由度と保存コストはトレードオフだと分かっていれば、あとから「思ったより早く埋まった」と慌てずに済みます。

Sony α7 IVのXAVC S 4Kは60pで150Mbps、30p・24pで100Mbpsまたは60Mbps(公式仕様)。100Mbpsは1分750MB=1時間45GBに相当します(当サイト計算)。

出典:ソニー「α7 IV 主な仕様」

年間に増える量を逆算する

ここまでの公式値を、撮り方のパターンに当てはめます。この表の1行が、あなたの機種選びの入口です。

撮り方 計算の前提(公式値) 1か月 1年
24MPクラスをRAWのみ・月300枚 26.1MB×300 約7.8GB 94GB
24MPクラスをRAW+JPEG・月500枚 34.3MB×500 約17.2GB 206GB
33MPクラスを圧縮RAW・月500枚 45.7MB×500 約22.9GB 274GB
33MPクラスを非圧縮RAW・月500枚 84.2MB×500 約42.1GB 505GB
4K 30p(120Mbps)を月30分 860MB×30 約25.8GB 310GB
4K 60p(230Mbps)を月30分 1,647MB×30 約49.4GB 593GB
写真も動画も撮る人(RAW+JPEG月500枚+4K30p月30分) 上2つの合算 約43GB 516GB

逆算の式はこれだけ

必要な実効容量 = 1年に増える量 × 使いたい年数 ÷ 0.8

÷0.8は「空き容量を2割は残す」ぶん。空きが尽きたNASは書き込みも整理も苦しくなるので、買う容量は満杯前提で決めません。次章の年数表は「満杯まで何年か」という上限値なので、実運用の目安はそこから0.8倍して見てください。

例)年516GB × 10年 ÷ 0.8 = 約6.5TB の実効容量が必要

なお、動画の尺は「月30分」のような単位で見積もると現実的です。1回の運動会で4K30pを20分回せば、それだけで約17GB。RAW 約660枚ぶんに相当します。

逆に「4TBで何枚・何時間ぶん」なのか

同じ公式値を、容量の側から見た形に置き換えます(いずれも当サイト計算・満杯までの目安)。

実効容量 24MP RAW(26.1MB) 33MP圧縮RAW(45.7MB) 4K30p(860MB/分) 4K60p(1,647MB/分)
500GB 約1.9万枚 約1.1万枚 約9.7時間 約5.1時間
4TB×2・RAID 1(約3.6TB) 13.8万枚 約7.9万枚 70時間 約36時間
8TB×2・RAID 1(約7.3TB) 約28.0万枚 約16.0万枚 約141時間 約74時間

1TB=1,000,000MBとして割った満杯までの目安です。空き2割を残す運用なら0.8倍で見てください。

写真・動画に限らない一般的な容量の決め方(PCバックアップやTime Machineを含めた合算)は、NASのHDD容量はどれくらい必要?用途別おすすめ容量ガイドで扱っています。本記事はRAWと4K動画に絞った逆算に特化しているので、写真以外のデータも同じNASにまとめる予定があるなら、そちらも合わせてご覧ください(同記事は公称容量表記で「4TB×2=実効4TB」、本記事はOS表示の約3.6TBで数えています)。

何TBを何本で組むか(RAID 1・バックアップ込み)

逆算した実効容量を、HDDの構成に翻訳します。ここで効いてくるのが公称容量と実効容量のズレです(Lightroomの「カタログ」とは無関係の、HDDの表示容量の話です)。

  • 公称4TBのHDDは、OS表示では約3.6TB(メーカーは1TB=1兆バイトの10進、PCやNASは1,024進で数えるため。システム領域もわずかに引かれます)
  • RAID 1(ミラーリング)は2本で1本ぶんしか使えない。4TB×2本=実効約3.6TB
  • 4ベイでSHRやRAID 5を組むと、4TB×4本=実効約10.9TB(1本ぶんが冗長に使われる)

RAIDの仕組みそのものはRAIDとSynology SHRの違いで解説しています。ここでは容量の話だけに絞ります。

1年に増える量 4TB×2・RAID 1(約3.6TB) 8TB×2・RAID 1(約7.3TB) 4TB×4・SHR/RAID 5(約10.9TB)
約206GB(RAW+JPEG中心) 約17年 約35年 約53年
約516GB(写真+4K30p) 7年 14年 約21年
約1,098GB(非圧縮RAW+4K60p) 約3年 約7年 約10年

満杯までの年数です。増加量は10進(1GB=1,000MB)、実効容量はOS表示(1,024進)で計算しているため、年数は保守側に出ます。空き2割を残す運用なら、上の年数を0.8倍して見てください(例:年516GBで4TB×2なら約5.6年)。

17年・53年という数字は「容量が尽きるまで」の計算です。HDDそのものは、容量より先に寿命が来ます。空きが余っていても、数年おきにHDDを入れ替える前提で予算を見てください(前兆の見分け方はHDD故障の予兆とS.M.A.R.T値の見方、交換の手順はNASのHDD交換手順へ)。電気代は24時間つけっぱなしでも家計を左右する額にはなりませんが、金額の目安はNASの電気代にまとめています。

寿命と並んで、容量を決めるときに必ずセットで考えることがもう1つあります。

RAIDは冗長化であってバックアップではありません。RAID 1はHDD1本の故障に耐えるだけで、誤削除・ランサムウェア・水没・盗難・NAS本体の故障には無力です。写真は撮り直しがきかないデータなので、NASの容量を決めたら同じ容量のバックアップ先も同時に予算に入れてください(つまり費用はおおむね2倍で見積もることになります)。具体的な組み方はNASのバックアップ方法(3-2-1ルール完全解説)へ。

ここまでで分かるのは、RAW中心で動画をあまり撮らない人は、4TB×2で10年以上もつという事実です。高い機種や大容量HDDを勧めたほうが当サイトの収益にはなりますが、年200GBペースの人に12TBを買わせる理由は計算上ありません。容量を積むべきなのは、4K動画を常用する人と非圧縮RAWを選ぶ人です。

HDDの型番選び(CMR/SMRの違い・NAS用モデルの見分け方)はNAS用HDDのおすすめ比較にまとめています。24時間動き続ける前提のNASでは、記録方式がCMRのNAS用ドライブを選んでください。定番のWD Red Plus 4TB(WD40EFZZ)は1本約32,500円(2026年8月12日時点の当サイト調べ)。Synology機なら1本(Basic)で始めて、あとから2本目を足してRAID 1/SHRへ変換する道もあります(DSMのストレージマネージャの機能。機種・プール構成によっては選択できず、データ消失の可能性がある操作なので、変換前にバックアップを取り自己責任で実行してください)。ただし1本だけの間はミラーリングが効かないので、2本目は「余裕ができたら」ではなく期限を決めて足してください。

1GbEで足りるか:転送時間を作業の単位に置き換える

容量の次に迷うのがネットワーク速度です。「RAWは重いから2.5GbEが必要では」という疑問に、当サイトの実測値と算術で答えます。

指標 内訳
1GbE 理論値 125MB/秒 1Gbps÷8
1GbE 実効の目安 約110MB/秒 一般的な実効値として当サイトが採用
2.5GbE 理論値 最大312.5MB/秒 UGREEN公式がDXP2800の仕様として記載
当サイト実測(DS223j・SMB) 読み72.03MB/秒・書き76.04MB/秒 CrystalDiskMark 8.0.6(1GiB×5回)・Btrfs・RAID 1。Wi-Fi 6経由の測定で、有線ならより速くなる余地があります

出典:UGREEN NASync DXP2800 製品ページ(2.5GbEの記載・理論値)

実測の詳細と測定画面はext4とBtrfsの違いに掲載しています。この数字を写真の作業単位に置き換えると、次のようになります(いずれも当サイトの計算)。

作業 実測76.04MB/秒の場合 有線1GbEの目安110MB/秒の場合
1回の撮影ぶん32GB(24MP RAW約1,200枚相当)をNASへ 7分 5分
1年ぶん500GBを初回移行 約1.8時間 約1.3時間
蓄積5TBを丸ごと移行 約18時間 約12.6時間

サムネイルやXMPなど小さいファイルが大量に混じると、上記より大幅に延びます。RAWは1枚が大きいため比較的シーケンシャル寄りですが、フォルダ構成によって差が出ます。

撮影1回ぶんの取り込みが5〜7分なら、1GbEでも実務上は困りにくいというのが計算上の結論です。困るのは初回移行と、毎回数百GBを動かす動画中心の運用。ここに当てはまる人だけ2.5GbE以上を検討すれば十分です。

⚠️ 当サイトの実測はWi-Fi 6経由のもので、DS223jを有線接続したときの実測値と、2.5GbE機の実測値は計測できていません。上の2.5GbEは理論値であり、当サイトが確認した実効値ではありません。

「写真用だからM.2 SSDキャッシュ」は公式の説明と食い違う

M.2スロットを備えたNASは増えており、「写真・動画用ならSSDキャッシュを積むべき」という説明もよく見かけます。ところがSynologyの公式ドキュメントは、SSDキャッシュが効く場面と効かない場面をはっきり分けています

SSDキャッシュ 公式の記載
効くケース 入出力がランダムに配置された小さなデータブロックへ頻繁にアクセスする場合(ファイルサーバー・データベース・仮想マシン)。※公式は同じファイルサーバーでも主にシーケンシャルアクセスなら効かない側に分類しています
効かないケース 「シーケンシャルアクセスパターンを含むシナリオではパフォーマンスを向上させません」。例として大容量ファイルのアップロード/ダウンロード・ビデオストリーミングが挙げられている
メモリ要件 DSM 7.0以降でSSDキャッシュ1GBあたり400KBのシステムメモリを消費。上限は内蔵メモリの4分の1

出典:Synology「SSDキャッシュを作成する際の重要な考慮事項」(2026年8月12日確認)

RAWの取り込みや動画の書き戻しは、大きなファイルを連続して読み書きするシーケンシャル転送そのものです。公式の分類に当てはめれば、ここにSSDキャッシュを足しても転送は速くなりません。速度の上限を決めているのはLANの帯域とHDDの連続転送性能であって、キャッシュではないからです。

ただし「SSDキャッシュは無意味」と言い切るのも正確ではありません。Synology Photosで数万枚のサムネイルを次々に表示するような操作は、小さなファイルへのランダムアクセス寄りなので、効く余地はあります。切り分けるとこうなります。

  • 原本の転送を速くしたい → LANの帯域(1GbE→2.5GbE)とHDDの選択が効く。SSDキャッシュは対象外
  • 大量サムネイルの閲覧を軽くしたい → SSDキャッシュに余地あり。ただしメモリを消費する

M.2の有無で機種を1ランク上げる前に、自分が遅いと感じているのはどちらなのかを切り分けてください。NASが遅いときの原因の切り分け全般はNASが遅いときの改善方法にまとめています。

買ってから気づく機能差:Jシリーズは物体認識に非対応

写真用途で最も見落とされやすいのが、エントリー機(Jシリーズ)とPlusシリーズのソフトウェア機能差です。Synologyの公式KBは、対応モデルを「顔と物体の認識」と「顔認識のみ」の2群に分けています。

分類 該当モデル(本記事に関係する範囲)
顔と物体の認識 DS225+/DS425+/DS925+/DS725+/DS224+/DS923+/DS423+ ほかPlus系
顔認識のみ(=物体認識に非対応) DS223j/DS223/DS124/DS423/DS220j/DS420j ほか

出典:Synology「Synology Photos の顔認識機能をサポートするモデル」(2026年8月12日確認)

「海」「花」「料理」といった被写体(物体)でアルバムを自動生成する機能は、DS223jでは使えません。人物の顔で分類する機能は動きます。当サイトはDS223jを実機で運用していますが、用途が「家族写真の保管と共有」なら顔認識だけでも実用になるというのが1年以上運用してきた実感です(Synology DS223jのレビュー)。

一方で、注意が必要なのは上位機のほうです。Synologyの同じKBには、メモリ2GB標準のモデルについて「メモリ容量を最低4GBにアップグレードして、オブジェクト認識機能を取得してください」という注記があります。そしてDS225+とDS425+はどちらもメモリ2GB標準(公式スペック)。

つまりDS225+やDS425+を買っただけでは、物体認識が動かない可能性があります。物体認識を目的に上位機を選ぶなら、メモリ増設のぶんも予算に入れてください。この注記(脚注2)は、DS225+・DS425+のほかDS224+・DS723+・DS423+・DS720+・DS420+などメモリ2GB標準のPlus系モデルに付与されています(2026年8月12日に公式KB本文で確認)。購入前に、上記KBのメモリ注記をご自身でも1度ご確認ください。

逆に、物体認識を最初から使わないと決めるなら、この分岐は消えます。「原本の保管庫」に徹する前提でDS223jを選ぶ場合の使い勝手や、1年以上使って分かった弱点はSynology DS223jを1年使ったレビューにまとめています。

RAWのサムネイル表示そのものは、機種を問わずSynology Photosが対応しています。公式のテクニカルスペックには、cr2・cr3(Canon)/nef(Nikon)/arw(Sony)/raf(Fujifilm)/orf(Olympus)/rw2(Panasonic)/dng など主要メーカーのRAWが対応形式として挙げられています。「NASに入れたRAWがサムネイル表示されるのか」という不安には、公式で答えが出ているわけです。ただしHEIC/HEIF/HEVCは、追加プレビューや圧縮ビデオの生成に「Synology Image Assistant」のインストールが必要とされています。

出典:Synology Photos テクニカルスペック

なお、大量のRAWを取り込んだときの初回インデックスにどれくらい時間がかかるかは、メーカー非公表で当サイトも計測していません。「サクサク動く」といった体感は書けないので、そこは未確認としておきます。写真管理アプリの機能比較そのものは子ども・ペットの写真を自動整理する家庭用NAS活用術で扱っています。

撮る量から選ぶ、機種の分岐

ここまでの逆算を1つの表にまとめます。縦軸は「年間に増える量」だけ。スペック表の総合比較ではなく、容量から必要なベイ数を決めて、その条件を満たす機種を挙げる順序です。

年間に増える量 5年後の総量 必要な実効容量(空き2割込み) 構成の目安 本体の候補(執筆時点の実勢)
年100〜200GB(RAW中心・月300〜500枚) 0.5〜1TB 約1.3TB 2ベイ+4TB×2 Synology DS223j 約36,000円
年300〜600GB(RAW+JPEG+4Kをときどき) 1.5〜3TB 約3.8TB 2ベイ+8TB×2 Synology DS225+ 約64,000円/UGREEN DXP2800 約51,000円
年1TB超(非圧縮RAW・4K60p常用) 5TB超 約6.3TB 4ベイ+4TB×4(SHR/RAID 5) Synology DS425+ 約107,000円

価格は当サイト調べの実勢価格(2026年7月25日時点)。変動が大きいため、購入前にリンク先で最新価格をご確認ください。

HDDを含めた総額は次のとおりです(WD Red Plus 4TBが約32,500円、8TBが約48,000円として計算)。

構成 本体+HDDの総額
DS223j+4TB×2(実効約3.6TB) 約101,000円
DS225++8TB×2(実効約7.3TB) 約160,000円
DS425++4TB×4(実効約10.9TB) 約237,000円

この総額にバックアップ先の費用は含んでいません。3-2-1ルールに沿うなら、同容量ぶんの2つ目のコピー(外付けHDDまたは2台目のNAS)を足して見積もってください。選び方は写真・動画を守る外付けHDD/SSDの選び方へ。

HDD代のほうが本体代より大きくなる構成が多いのが、いまの相場です。本体のグレードを1つ上げる予算があるなら、先に容量とバックアップ先に回すほうが、写真を守るという目的には合います(HDD相場の動きはHDD値上がりはいつまで?へ)。

どれを選ぶかの判断材料

  • DS223j:物体認識は使えず、メモリ1GBで増設不可、LANは1GbE、M.2なし。割り切って「原本の保管庫」に徹するなら、年200GBペースの人には10年以上もつ構成が組めます
  • DS225+:2.5GbEポートを備え、物体認識にも対応する群。ただしメモリ2GB標準で、物体認識には増設が必要という公式注記あり
  • UGREEN DXP2800:2.5GbE・メモリ8GB・M.2×2。当サイトも実機を運用しています(DXP2800レビュー)。UGOS ProのAI画像認識は搭載されていますが、対応RAW形式や顔認識の対応条件を示す公式技術資料を当サイトでは確認できていません
  • DS425+:4ベイでSHR/RAID 5が組め、容量効率が上がります。4ベイの考え方は4ベイNASのおすすめと選び方

上の表で「年300〜600GB」の行に当てはまった方は、DS225+(約64,000円)が第一候補です。2.5GbEと物体認識の対応群という2点が、DS223jとの実質的な差になります。前章で書いたメモリの注記は「増設すれば解決する」という話なので、増設ぶんの予算を最初から見込めるなら、この機種は選択肢から外れません。

この記事で書かなかったこと

信頼できる比較のために、確認できていないことは確認できていないと書きます。逆に言えば、上の逆算に使った数値(RAW1枚26.1MB・4K30p 1分860MB・SSDキャッシュの適用範囲・Jシリーズの機能差)は、すべてメーカー公式の記載で裏を取ったものです。以下は当サイトの守備範囲の外側で、ここを重視する方は実機検証記事も併せてご覧ください。

項目 状況
NAS上でのLightroom/Premiereの動作検証 未実施。カタログの置き場所はAdobe公式の記載に基づいて書いており、当サイトで検証した結果ではありません
DS223jを有線接続したときの転送実測 未計測。掲載値はWi-Fi 6経由のものです
2.5GbE機の実効転送速度 未計測。312.5MB/秒は理論値です
大量RAWの初回インデックス所要時間 未計測・メーカー非公表
DS225+/DS425+のハードウェアトランスコード対応 公式スペックに記載を見つけられず、未確認。4K動画の再生の軽さについては書きません
UGOS Proの写真AIの対応RAW形式・対応条件 公式技術資料を確認できていません

よくある質問(FAQ)

Q1. LightroomのカタログはNASに置けますか?
A. Lightroom Classicのカタログは、Adobe公式FAQが「ネットワーク上には保存できない」と明記しています。一方で写真本体はネットワーク上に保存・共有できるとされています。運用としては、原本をNAS、カタログとスマートプレビューをPCのローカルに置く形になります。
Q2. RAW 1枚は何MBですか?
A. Canon EOS R6 Mark II(2420万画素)の公式値でRAW 26.1MB、C-RAW 13.2MB、RAW+JPEGファインLで34.3MB。Sony α7 IV(3300万画素)は公式の記録可能枚数から当サイトが逆算すると圧縮RAWで約45.7MB、非圧縮RAWで約84.2MBです。撮影条件で変動します。
Q3. 4K動画は1時間で何GBになりますか?
A. Canon公式値の4K 29.97p(120Mbps)で1分860MB=約51.6GB/時、4K 59.94p(230Mbps)で1分1,647MB=約98.8GB/時(1時間の値は当サイト計算)。Canon Log/HDR PQをONにすると4K 29.97pは約73.1GB/時に増えます。
Q4. 写真用のNASにM.2 SSDキャッシュは必要ですか?
A. RAWや動画の転送に対しては効果が期待しにくい機能です。Synology公式は「シーケンシャルアクセスパターンを含むシナリオではパフォーマンスを向上させません」と明記し、大容量ファイルのアップロード/ダウンロードを例に挙げています。大量サムネイルの閲覧などランダムアクセス寄りの操作には効く余地があります。
Q5. DS223jで顔認識や物体認識は使えますか?
A. Synology公式KBの分類では、DS223jは「顔認識のみ」の群で、物体(被写体)認識には対応していません。物体認識を使いたい場合はPlusシリーズが対象ですが、DS225+・DS425+はメモリ2GB標準で、公式は物体認識に4GB以上への増設を案内しています。
Q6. 4TB×2のRAID 1で何年もちますか?
A. 実効容量は約3.6TB。RAW+JPEGで月500枚(年約206GB)なら約17年、写真+4K30p月30分(年約516GB)なら約7年、非圧縮RAW+4K60p(年約1,098GB)なら約3年の計算です。空き2割を残す運用ならそれぞれ0.8倍で見てください。
Q7. NASに置いたRAWは、そのまま現像作業に使えますか?
A. 原本をNASに置いたまま参照する運用自体は可能ですが、Adobeはカタログをローカルに置くことを前提としており、Capture Oneも性能面からカタログをローカルに保存することを推奨しています。当サイトではNAS上での現像作業を検証していないため、速度や安定性についての評価は書けません。

まとめ

RAWと4K動画のNAS選びは、機種の比較から入ると迷います。先に決めるのは年間に増える量で、そこから必要な実効容量・ベイ数・機種の順に一本道でつながります。

  • NASは原本を置いて守る場所。Lightroom Classicのカタログはネットワークに置けない(Adobe公式)ため、編集はローカル+スマートプレビューが公式の形
  • 公式値はRAW 26.1MB(24MP)・4K30pは1分860MB。33MPクラスの圧縮RAWは公式の記録可能枚数から当サイトが逆算して約45.7MB。写真+4K30pを撮る人で年約516GB
  • 必要な実効容量=年間の増加量×使いたい年数÷0.8。年516GBなら4TB×2で満杯まで約7年(空き2割運用なら約5.6年)、8TB×2で約14年
  • RAID 1はバックアップではないので、同容量のバックアップ先も同時に予算化する
  • SSDキャッシュはシーケンシャル転送に効かない(Synology公式)。速度が欲しいならLAN帯域とHDDを見る
  • DS223jは物体認識に非対応/DS225+・DS425+はメモリ2GB標準で、物体認識には増設が必要という公式注記がある

年200GBペースなら4TB×2で10年以上。多くの人は、思っているより小さい構成で足ります。浮いた予算は本体のグレードではなく、バックアップ先に回してください。撮り直しのきかないデータを守るのは、速いNASではなく2つ目のコピーです。NAS側もバックアップ側も、ドライブは同じCMRのNAS用モデルでそろえておくと構成に迷いません。